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「お互いさまでしょ」毎日響く金属音に悩んだ私。しかし、苦情を言う前に気づいた昔からの決まりとは

  • 2026.9.17

朝から夕方まで、音が止まらない

実家に戻って三年になる。田畑と古い家が点々と続く土地で、隣の家とは石垣一つを挟んでいるだけだ。窓を開けて過ごせる季節になると、私は隣から聞こえる音が気になっていた。

朝八時ごろから、金属を切るような甲高い音が始まる。昼をまたいで続く日もあり、ときどき何かを強く叩く音まで響いた。

ある日、台所にいた母に話した。

「今日も朝からずっとだよ。さすがにちょっときついよ」

母は困ったように笑った。

「まあ、お互いさまでしょ」

「でも、うちはこんな音出してないじゃない」

「昔からの付き合いもあるし、あんまり角を立てたくないのよ」

数週間後、また朝から音が続いた日にも、母は「お互いさまでしょ」と言った。

三度目は、母自身が窓を閉めながらだった。

「お母さんだって、うるさいと思ってるんでしょ?」

母は少し黙ってから答えた。

「そりゃ、気にはなるよ。でも…お互いさまでしょ」

その言葉を三度聞いて、私はもう母に言っても仕方がないと思った。

回覧板に、紙が一枚挟まっていた

かといって、隣の家へ直接言いに行く勇気もなかった。

実家とはいえ、私は三年前に戻ってきたばかりだ。昔から続く近所付き合いに、自分が口を挟むようで気が引けた。

そんなとき、寄り合いの帰りに自治会の役員をしている人と一緒になった。迷った末、私は声をかけた。

「ちょっと聞いてもいいですか。隣の作業の音なんですけど…朝からずっと続く日があって」

役員の人は足を止めた。

「ああ、金属を切ってる音かな。あれ、一日続くとしんどいよね」

「私が気にしすぎなのかなとも思ったんですけど」

「いや。この辺、音の出る作業は時間を決めてやろうって、前から申し合わせがあるんですよ」

私は初めて聞く話だった。

「そんな決まりがあったんですか?」

「最近はわざわざ確認してなかったから、知らない人もいるかもしれないね。一度、回覧で回しておきますよ」

翌週、回覧板に一枚の紙が挟まっていた。

新しく作られたルールではなく、以前から地域で決めていた内容の確認だった。音の出る作業をする時間帯や、終了の目安が簡単に書かれている。

誰か一軒を名指しする文章ではなく、「今一度ご確認ください」とだけ添えられていた。

その紙が回ったあと、隣から何か言われることはなかった。

ただ、次の週から機械の音は以前より早い時間に止まるようになった。

ある夕方、庭に出ると、道具を片づけていた隣の人と目が合った。相手が軽く頭を下げたので、私も会釈を返した。

家に戻ると、母が例の紙を読み返していた。

「こんなの、昔からあったのねえ」

「お母さんも知らなかったんじゃん」

そう言うと、母は少し照れたように笑った。

「まあね。でも、誰か一人が文句を言った形にならなくてよかったね」

その言葉には、私も素直にうなずいた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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