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「この子、長く待つのが苦手なんです」滑り台の列を抜かそうとした母親。係の人が静かに伝えたこと

  • 2026.9.13
「この子、長く待つのが苦手なんです」滑り台の列を抜かそうとした母親。係の人が静かに伝えたこと

滑り台の列を通り過ぎていった親子

半年ほど前の休日、少し遠い大きな公園まで子どもを連れて行きました。園内で特に人気だったのは、丘の斜面を使った大型の滑り台です。

着いたときには、階段の下に10人ほどの子どもが並んでいました。

うちの子も列の真ん中あたりに入り、自分の番を待っていました。

柵の外にはベンチがあり、親たちはそこから子どもたちを見守っています。私も水筒と上着を膝に置きながら、少しずつ進んでいく列を眺めていました。

そこへ、年長くらいの男の子を連れた母親がやってきました。

母親は最後尾では立ち止まらず、男の子の手を引いたまま列の横を歩いていきます。そのまま先頭近くまで来ると、男の子に声をかけました。

「ほら、ここから行こう」

男の子は階段を見上げましたが、すぐには足を出しませんでした。

すると、列の前のほうに並んでいた女の子を柵の外から見守っていたお父さんが、少しためらいながら声をかけました。

「すみません。みんな、あそこから並んで待ってますよ」

母親は振り返り、困ったような表情を浮かべました。

「ああ……この子、長く待つのが苦手なんです。すぐ終わるので、先に滑らせてもらえませんか?」

「でも、ほかの子たちも待ってますから…」

お父さんがそう返すと、母親は男の子の手を握り直しました。

「並んでるうちに、もう帰るって言い出すことがあるんです。せっかく来たので、一回だけでも滑らせてあげたくて」

そういう事情なら、母親が焦る気持ちも少し分かる気がしました。

それでも、そのためにほかの子の順番を抜かしていいのかと言われれば、やはり違うように思います。

男の子は何も言わず、母親の隣で靴先を見つめていました。

「待つのが大変なんですね」と係の人は言った

ちょうどそのとき、園内を見回っていた係の男性がこちらへ歩いてきました。こちらの様子に気づいたのか、列の前で足を止めます。

「どうかしましたか?」

女の子のお父さんが、「順番のことで…」と短く答えました。

係の男性は列と親子を見比べ、それから母親へ穏やかに声をかけました。

「お子さん、待つのが大変なんですね」

母親は少し表情をゆるめました。

「そうなんです。じっと待ってるのが苦手で…」

「そうでしたか。ただ、この滑り台は皆さん同じ列で順番にお願いしているんです。最後尾は、あちらになります」

男性は少し離れた列の最後を手で示しました。

責めるような言い方ではありませんでした。ただ、順番については曖昧にしませんでした。

母親はしばらく黙っていましたが、やがて男の子の顔をのぞき込みました。

「じゃあ、向こうから並ぼうか。待てそう?」

男の子は少し考えてから、小さくうなずきました。

「うん」

二人が列の最後へ歩いていくと、止まっていた流れもまた少しずつ動き始めました。

しばらくして、うちの子の番が来ました。勢いよく滑り降りてくると、そのまま私のところへ走ってきます。

「ちゃんと待てたよ。もう一回やっていい?」

「いいよ。また後ろから並ぼうね」

そう答えると、子どもはもう一度、列の最後へ走っていきました。

相手には相手なりの事情があります。それを知らずに、すぐ非常識だと決めつける必要はないのかもしれません。

ただ、大勢が同じ遊具を使う以上、みんなで守っている順番もあります。

事情を否定せず、それでも必要なことはきちんと伝えた係の人の対応が、今でも印象に残っています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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