1. トップ
  2. エピソード
  3. 「うちの前なんだから停めていいだろう」車を出すたび近所の家へ声をかけた3年間。市役所で知った事実とは

「うちの前なんだから停めていいだろう」車を出すたび近所の家へ声をかけた3年間。市役所で知った事実とは

  • 2026.9.11
「うちの前なんだから停めていいだろう」車を出すたび近所の家へ声をかけた3年間。市役所で知った事実とは

車を出したい朝に限って、あの車がある

袋小路のいちばん奥が、うちです。

道幅は車が一台通れるくらいで、うちの門の前で行き止まりになります。

困っていたのは、大通り側の家の息子さんが、その細い道に車を停めることでした。

車があると、うちから外へ出られません。

そのたびに私は車を降り、その家のインターホンを押していました。

「すみません、車を出したいので、ちょっと移動してもらえますか」

「あ、はい。今動かします」

頼めばすぐに移動してくれます。嫌な顔をされるわけでもありません。

それなのに、数日するとまた同じ場所に車がありました。

あるとき、さすがに困っていることを伝えました。

「ここに停められると、うちの車が出せないんです。できれば別の場所に停めてもらえませんか」

すると息子さんは、少し不思議そうな顔をしました。

「でも、ここってうちの前ですよね」

「そうですけど…」

「うちの前なんだから、停めていいだろうって思ってました」

そう言われると、私も強く言い返せませんでした。

あの細い道が公道なのか私道なのか、私自身よく知らなかったからです。

妻からも何度か言われました。

「また停まってたよ。毎回呼びに行くの、大変じゃない?」

「大変だよ。でも言っても、『うちの前だから』ってなるんだよ」

「じゃあ、一回ちゃんと調べてみたら?」

もっともな話でした。それでも、すぐには動けませんでした。

親御さんとは顔を合わせれば挨拶をしますし、町内会で会えば普通に話します。

車のことで近所関係を悪くしたくない、という気持ちもありました。

そうして、同じことが3年ほど続きました。

「ここ、市が管理している道路なんですね」

ある晩、また車を移動してもらったあと、ふと思いました。

「そもそも、あの道って本当にあの家のものなのかな」

翌週、市役所の道路を担当する窓口へ行きました。

場所を説明すると、職員の方が資料を確認してくれました。

「この袋小路です。近所の方から『うちの前だから』と言われていて、私も私道なのかなと思っていたんですが…」

「少々お待ちください」

しばらくして、職員の方が道路台帳の図面をこちらに向けました。

「こちらですね。ここは市が管理している道路です」

「えっ、そうなんですか?」

思わず聞き返しました。

「ずっと、あちらのお宅の道だと思っていました」

私は道路台帳の写しを見ながら、もっと早く確認しておけばよかったと思いました。

数日後、また同じ場所に車が停まっていました。

いつものようにインターホンを押すと、息子さんが出てきました。

「すみません。また車を出したくて」

「ああ、すみません。すぐ動かします」

車を移動してもらったあと、私は少し迷ってから声をかけました。

「この前、市役所であの道のことを確認してきたんです」

「道のことですか?」

「はい。俺もずっと私道だと思ってたんですけど、市が管理している道路だったみたいで」

息子さんは少し驚いた顔をしました。

「そうだったんですか。俺も、てっきりうちの前の道だと思ってました」

「俺も知らなかったので。ただ、ここに車があると本当に出られなくて…。これからは停めないでもらえると助かります」

少し間があって、息子さんはうなずきました。

「分かりました。今まで何度もすみませんでした」

「いえ。分かってもらえれば大丈夫です」

それから、道をふさぐように車が停まることはなくなりました。

今では息子さんも一人暮らしを始め、実家へ帰ってくるのは連休のときくらいです。たまに顔を合わせれば、お互い普通に会釈をします。

3年間ずっと言いにくかったことでしたが、相手と揉める前に、まず自分で事実を確認してみる。そのひと手間で話しやすくなることもあるのだと感じた出来事でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ