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尾上松也さんインタビュー|映画『八つ墓村』に主演。恐ろしいのは人の心? “怖さ”の正体を探る

  • 2026.9.9
Setsuo Sugiyama

ミステリー界の巨匠・横溝正史の代表作として、これまでに幾度も映画化・ドラマ化されてきた『八つ墓村』。物語の舞台を現代に移し、460年前の怨念が影を落とす村で繰り広げられる連続殺人事件を描いた、ミステリーとしての魅力を再構築した新作映画で、主演の金田一耕助を演じる尾上松也さんに、映画の根底に流れる“怖さ”についてお話を伺いました。

令和の今ならではの“怖さ”を感じて

©松竹

─舞台は岡山県の山奥に潜む、八つ墓村。大学生の井川辰弥(奥智哉)は奇妙な探偵・金田一耕助(尾上松也)とともに母が死んだ地を訪れます。名家・田治見家の遺産相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように、次々と起こる不可解で不気味な連続殺人事件。封印されたルーツと怨念の記憶が次第に明らかになっていきます。

「原作が発表されたのはまだ戦争の爪痕が残る1950年。小説の舞台は昭和初期ですが、今回の作品は舞台を現代に置き換えて再解釈しています。今は科学や技術が発達して何でも解明されて、闇とか謎がどんどんなくなっている時代。そんな中で清水崇監督がこれまで『八つ墓村』で描かれてきた恐怖をどんな観点で新たな切り口にしていくのか、撮影前から楽しみでした。完成した作品を観て今、新しい『八つ墓村』ができたな、という実感はありますね」

違和感や非現実感が積み重ねられることで感じる不安や恐怖、壮絶な惨殺シーンと景色の美しさの対比も“怖さ”を煽ります。

「これまでの『八つ墓村』の映画やドラマの撮影でも使われてきた高梁市(たかはしし)の広兼邸でロケができたのは光栄なことでした。その後の京都の撮影所でのセット撮影でもロケの時の空気感を思い出しながら演じられる、いい環境でお芝居ができたなと思いますね。八つ墓明神の地下に広がる、という設定の鍾乳洞での撮影は特別な空気感があって、怖くないと言ったら嘘になりますね。僕は一人で行くのはちょっと嫌かな」

今回の作品での金田一耕助は、衣裳もこれまでのよれよれの着物と袴に丸いハットではなく、シャツとパンツに中折れ帽とコートという現代的な姿。率先して謎を解いていくというよりも、辰弥とともに“怖さ”に共感しながら物語を紡いでいくように感じられました。

©松竹

「現代的な変人というかインテリっぽい変人というか……。謎を解決すべき探偵が辰弥と一緒に事件に振り回され、同じように慌てふためいて怖がり驚き散らかすところが今回の金田一の新たな魅力だと思います。辰弥がいなかったらもはや何も解決しないまま帰っちゃったのではないかという。率先して解決していくというより辰弥に寄り添っていく中で、後手後手に回りながらも最終的には何とかたどり着くのが脚本の面白いところですね」

長きにわたり多くの人々を惹きつけてきた『八つ墓村』。“怖いもの”は、なぜこうも面白く、古くから人を惹きつけるのでしょうか。

「誰しもが持っている人間そのものの狂気や怨念、憎悪みたいなものが心に響くのかもしれません。たとえば群衆心理とか家族間のもつれとか人間関係とか組織とか、そういう中で起こり得る、遠いようで遠からぬ現実味のある部分が、独特の恐怖と興味をそそるのではないかという気がします。『八つ墓村』の小説は実際に起きた事件が元ネタになっていて、そんな点も人智を超えた怖さにつながっているように思います」

歌舞伎から映画まで。恐怖のメカニズム

Setsuo Sugiyama

『東海道四谷怪談』や『盟三五大切』など、歌舞伎の世界にも怪談や殺人事件をテーマにした作品は存在します。

「怖いものみたさというニーズに対して恐怖を提供するエンターテインメントが受けるのは、西洋でも日本でも変わらないのだと思います。あえて違いを挙げるなら、僕のイメージでは日本の方がちょっと湿っぽい感じ。西洋の方がアクティブというか攻撃的というか、幽霊と悪魔や異形の怪物の違いなのかな。怖がらせ方の質が違うのは、それぞれが信仰している神様とか仏様によるのではないかという気もしますよね」

ご自身もホラーものはお好きですか?

「好きですよ。洋画が多いですが日本のホラー映画も観ます。突然驚かされるよりも、来るぞ来るぞ……あ、来ないのかな? うわっ、来た!といった、間の取り方に“来るぞ感”があるホラーが僕は楽しいです。若い頃はホラー映画を見た後にお風呂に入ってシャンプーするのが怖い、と思っていた時代もありましたが、大人になった今では人を驚かす方が好きかもしれません(笑)」

特にお好きな映像作品は?

「ゾンビがいっぱい出てくる『REC/レック』は、最初に見た時に衝撃的でした。『キューブ』というトラップが張り巡らされた立方体に閉じ込められる映画も面白いです。あとは人間を凶暴化させるウイルスが蔓延して感染者が人々を襲う『28年後... 』も、怖くておすすめです」

舞台でも映画でも、怖さのメカニズムは変わらないものでしょうか?

「観る側としては、アナログか今回の映画のようにVFXを駆使した見せ方かという違いはあっても、怖さの本質は変わらないと思います。演じる立場で言うと映像作品の場合はストーリーを順番に撮影するわけではないですし、自分が出ていないシーンで滝藤賢一さんや他の出演者の皆さんがどういう絵を撮っているのかはわかりません。完成図はあくまでも監督の頭の中にあるので、それはもう監督を信じるしかないという違いはありますよね。だからこそ、完成した作品を観て“こう繋がるんだ!”と感動できる面白さもあります」

ご自身にとっての“怖いもの”は?

Setsuo Sugiyama

「歌舞伎は稽古期間が短いんです。何とかやっていますが、実は初日は毎回、本当に怖いです」

─今回の『八つ墓村』は金田一耕助が誕生して80周年の節目の作品です。今後も金田一耕助が登場する横溝正史作品はシリーズ化されていくのでしょうか?

「この映画がシリーズ化されるのかはわかりませんが、僕はやりたいですね。横溝正史先生の金田一耕助ものは舞台にも何度もなってますし、それこそ舞台化、歌舞伎化だって全然できると思いますよ。まずはこの『八つ墓村』で、人間の心の闇の“怖さ” を味わっていただければと思います」

尾上松也さん プロフィール

ジャケット167,200円 シャツ77,000円 パンツ121,000円 靴92,400円(すべてヨウジヤマモト プールオム/ヨウジヤマモト プレスルーム Tel.03-5463-1500) Setsuo Sugiyama

1985年生まれ、東京都出身。 1990年5月「伽羅先代萩」の鶴千代役にて二代目尾上松也を名のり初舞台。 古典から新作まで数々の舞台に出演、自ら企画した歌舞伎「刀剣乱舞」では主演・演出にも取り組む。歌舞伎以外でも活躍を広げ、近年の主な出演作に映画『新幹線大爆破』(25/Netflix)、映画『Demon City 鬼ゴロシ』(25/Netflix)、ミュージカル「新宿発8時15分」(26)、声の出演作に『ゴジラ×コング _新たなる帝国』(24)、『モアナと伝説の海2』(24)、『パリに咲くエトワール』(26)など。 _2027年3月〜5月には主演・演出を務めるミュージカル「『RRR』Based On SS Rajamouli’s ‘RRR’」の公演が控えている。

作品情報

映画『八つ墓村』

Ⓒ松竹

空虚な日々を送っていた大学生・井川辰弥のもとに、15年前に自分を捨てた母の訃報が舞い込んだ。母が死んだという八つ墓村を訪れた辰弥は、そこで出会った探偵・金田一耕助とともに自分のルーツに隠された“血の呪い”に巻き込まれる──。

9月18日(金)全国ロードショー

原作:横溝正史「八つ墓村 金田一耕助ファイル1」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
主題歌:「DOOM」TMG(Tak Matsumoto Group)
監督:清水崇
脚本:尾ヶ井慎太郎、清水崇
出演:尾上松也、奥 智哉、堀田真由、佐野岳、小野塚勇人、永瀬莉子、中村莟玉、笹野鈴々音、小籔千豊、中島亜梨沙、川瀬陽太、今野浩喜、渋川清彦、髙嶋政伸、高島礼子、滝藤賢一

映画『八つ墓村』公式サイト

撮影=杉山節夫 ヘア&メイク=岡田泰宜 スタイリング=椎名宣光 取材・文=清水井朋子 編集=本田リサ

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