1. トップ
  2. エピソード
  3. 「実はもうすぐなんです」上の階のママさんの妊娠。だが、私が素直に喜べなかったワケ

「実はもうすぐなんです」上の階のママさんの妊娠。だが、私が素直に喜べなかったワケ

  • 2026.9.10

十年、上の階の音を気にしたことがなかった

この賃貸マンションには、十年以上住んでいます。

それまで、上の階の音を気にしたことは一度もありませんでした。

ところが、ある時期に上の階へ家族が引っ越してきてから、状況が変わりました。

昼間は、子どもが走っているような足音。

夜になると、何かを床へ落としたような音が響くこともありました。

最初のころは、「まあ、子どもがいたら仕方ないよね」と自分に言い聞かせていました。

家族にも、「上、今日も元気だね」と笑って話せるくらいだったのです。

けれど、それが何日も、何か月も続きました。

夜、ようやく静かになったと思って布団に入ると、ドンドンと足音が響く。

「まだ起きてるんだ…」

思わず時計を見る日も増えていきました。

それでも、管理会社へ連絡するほどではないと思っていました。

「子どもの足音くらいで電話するのもなあ」

そう思うと、受話器を取る気にはなれませんでした。

十年住んで一度も気にならなかった音が、毎日のように天井から聞こえるようになってから、一年近く。いつの間にか私は、音がしても黙って天井を見るだけになっていました。

おめでとう、と言いながら浮かんだこと

そんなある日、マンションの外で上の階の奥さんと偶然会いました。

お腹が大きくなっているのを見て、すぐに分かりました。

「こんにちは」

「あ、こんにちは」

少し迷ってから、私は言いました。

「もしかして…。おめでとうございます」

奥さんは、うれしそうに笑いました。

「ありがとうございます。実はもうすぐなんです」

「そうなんですね。楽しみですね」

そう答えながら、私の頭には別のことが浮かんでいました。

赤ちゃんが生まれたら、この生活はもっと長く続くのかな。

そう考えた瞬間、自分でも嫌な気持ちになりました。

相手にとっては、おめでたい出来事です。それなのに私は、真っ先に自分の睡眠や生活のことを考えてしまった。

部屋へ戻ってからも、そのことが頭から離れませんでした。

「私、何考えてるんだろう…」

ただ、そのとき初めて気づいたのです。

私はもう、「子どもだから仕方ない」と笑って流せるところを、とっくに越えていたのだと思います。

初めて管理会社へ電話した

その日の夜、私は管理会社へ電話しました。

十年以上住んでいて、上の階の生活音について連絡するのは初めてでした。

「すみません。こういうことで電話していいのか分からないんですけど…」

自分でも驚くほど、最初の声は小さくなりました。

「上の階の足音が、かなり響く日が続いていて。子どもさんがいるので、ずっと仕方ないと思っていたんです」

担当の方は話を聞いたあと、こう言いました。

「実は、ほかのお部屋からも生活音についてお話をいただいています」

「…そうだったんですか」

自分だけが神経質なのかもしれないと思っていたので、その言葉には少し驚きました。

「直接お話しに行くのは避けていただいて大丈夫です。こちらからお伝えしますね」

「お願いします。できれば、私からだとは分からない形で…」

「もちろんです」

電話を切ったあと、少しだけ肩の力が抜けました。

しばらくして、上の階の家族は引っ越していきました。

静かになった夜、私は久しぶりに天井を気にせず眠りました。

今になって思うのは、あの日突然、我慢できなくなったわけではなかったということです。

一年近く積み重なっていたものが、「この先も我慢し続けるのかな」と考えた瞬間に、自分でも無視できなくなったのでしょう。

誰かを嫌いになるまで耐えるより、もっと早く相談してもよかったのかもしれません。

今でも静かな夜に天井を見ることがあります。そのたびに、「我慢することだけが、相手への配慮ではないんだな」と思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ