1. トップ
  2. エピソード
  3. メッセージを打ったのは俺じゃない。それでも、置きっぱなしの決まりを作ったのは俺です

メッセージを打ったのは俺じゃない。それでも、置きっぱなしの決まりを作ったのは俺です

  • 2026.9.11
ハウコレ

会計を締めようとして手を伸ばした先に、俺のスマホはありませんでした。打ったのは俺ではない。それを伝えても、恋人の問いは終わりませんでした。あの1通より前に何があったのかは、今も半分だけ伏せたままです。

机の真ん中に置く決まりを言い出したのは俺でした

昔からの仲間内で月に1度集まっていて、日どりも店も俺が決めます。メニューの注文をお願いされるたびスマホを渡すのが面倒なので、机の真ん中に置いたままにする。そう言い出したのは俺です。誰かが写真を撮り、誰かが地図を開き、そのまま向こう側へ回っていくこともありました。その日も同じようにしていて、伝票を確かめようと顔を上げたときには、画面が別の手の中にありました。

「返して」の代わりに、俺は手のひらを出した

開いていたのは恋人とのやりとりでした。読み上げる声に合わせて、俺の名前で「彼氏くんのことは私に任せて」と打たれました。卓の端まで腕を伸ばすと、その人は体をひねって「横で本人も笑ってるから平気だよ」と続けました。その笑い声は周りのものです。返してくれと声を張れば、盛り上がりを止めたのは俺になる。そう考えている間に、送信は何度も繰り返されました。訂正するにはもう少し大きい声が要りましたが、俺が出したのは手のひらだけでした。

言い訳すら言えなかった

取り返してやりとりをさかのぼると、恋人の「これ、誰が打ってるの」が残っていました。俺の名前で送られた軽い文も、その下に並んでいます。次の日に俺が送れたのは「昨日のあれ、俺じゃない」だけです。経緯まで書けば弁解になると思って、そこは省きました。返ってきた「じゃあ、どうして止めなかったの」に、「机の真ん中に置く決まりを作ったのは、俺だから」と打ちました。その手前は書いていません。声を上げれば場の空気を止めることになると思い、俺は強く言えなかったのです。

そして...

その次の集まりで、「今日は自分の手に持ってる」と送りました。会計の間だけ画面を見せて、すぐポケットに戻します。置き場所を変えるだけなら、誰にも断らずにできました。恋人が知りたいのは持ち方ではなく、俺があの人に何を言うのかだと分かっています。その返事だけが、まだ打てずにいます。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ