1. トップ
  2. エピソード
  3. 「ちゃんと謝ってください」走ってきた子どもを避けた私に迫る母親。だが、管理人さんが告げた事実で状況が一変

「ちゃんと謝ってください」走ってきた子どもを避けた私に迫る母親。だが、管理人さんが告げた事実で状況が一変

  • 2026.10.6

買い物袋を提げてエレベーターを待っていたら

夕方、買い物袋を両手に提げて、住んでいるマンションの共用玄関に入った。

正面にはエレベーターがあり、その横に管理人室の小さな窓口がある。

エレベーターは上の階で止まっていた。

私がドアの前で待っていると、後ろで自動ドアが開き、軽い足音が近づいてきた。

振り向くと、7歳くらいの男の子がこちらへ走ってくる。

そのまま勢いよく、私の足もとへ飛びこんできた。

「わっ」

驚いた私は、とっさに横へよけた。

男の子は少しよろけたものの、転ばずに自分で止まった。

手にしていた買い物袋の中では、卵のパックががさりと鳴った。

すると、自動ドアのほうから30代くらいの母親が急いで近づいてきた。男の子を見ると、今度は私に顔を向けた。

「ちょっと、危ないじゃないですか。転ぶところだったでしょう」

思いがけない言葉に、私は戸惑った。

「急に走ってこられたので、びっくりしてよけただけです」

すると母親は、納得できない様子で声を強めた。

「子どもなんだから走ることくらいあるでしょう。大人なら、もう少し気をつけてくださいよ」

「私も両手に荷物を持っていますし、急に来られたら避けるしかないですよ」

大きくなっていく母親の声

私がそう返すと、母親の表情がさらに険しくなった。

男の子の肩を引いて自分の後ろへ立たせると、こちらへ一歩近づいてくる。

「だったら、そんなところに立って子どもの邪魔をしないでください」

「エレベーターを待っていただけです」

声が玄関に響いた。

郵便受けの前にいた年配の住人と、自動ドアから入ってきた会社帰りらしい男性も、思わずこちらを見ていた。

それでも母親は収まらない。

「この子、怖がってるじゃない。ちゃんと謝ってください」

私は言葉に詰まった。自分はただエレベーターを待っていて、走ってきた子を避けただけなのに、なぜ謝ることになっているのだろう。

買い物袋を握る手に、自然と力が入った。

窓口から出てきた管理人さん

そのとき、横にある管理人室の窓口が開いた。

60代くらいの管理人さんが外へ出てくると、私たちのほうを見ながら静かに声をかけた。

「すみません。今のところ、こちらから見えていましたよ」

母親が管理人さんへ顔を向ける。

管理人さんは落ち着いた口調で続けた。

「走ってきたのはお子さんです。この方はぶつかりそうになって、よけただけですよ」

母親は何か言おうとしたものの、すぐには言葉が出てこなかった。

「お子さんが転ばなくてよかったです。ただ、玄関では走らないようにしてもらったほうが安心ですね」

責めるような言い方ではなかった。それでも、さっきまで大きな声を出していた母親は急に黙りこんだ。

郵便受けの前にいた住人も、会社帰りの男性も、その場に立ったままだった。

しばらくして、母親は男の子の手を握り、私に向き直った。

「……すみませんでした」

ちょうどそのとき、エレベーターが到着した。

管理人さんがドアを押さえてくれたので、私は小さく頭を下げて乗り込んだ。

母親と男の子は乗ってこなかった。二人はそのまま階段のほうへ歩いていった。

閉まっていくドアを見ながら、私はようやく肩の力を抜いた。管理人さんが窓口から見ていてくれたことに、心からほっとした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ