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「もう1回教えてもらえますか」何度も同じ道を聞いた男。駅を離れたあと、後ろを振り返ると

  • 2026.9.6
「もう1回教えてもらえますか」何度も同じ道を聞いた男。駅を離れたあと、後ろを振り返ると

改札を出たところで、道を聞かれた

平日の昼、用事があって、いつもより早い時間に電車を降りた。

改札の外はそれほど混んでいなかった。私は近くの太い柱のそばで立ち止まり、携帯をかばんにしまっていた。

そのとき、知らない男性から声をかけられた。

「すみません、この道はどちらへ行けばいいですか」

聞かれた場所は知っていたので、私は特に気にせず答えた。

「ここをまっすぐ行って、二つ目の角を右です」

「ありがとうございます」

礼を言われ、私はそれで終わったと思った。

けれど、その人は動かなかった。

私が歩き出そうとしても、その場に立ったままこちらを見ている。そして少し間を置いて、また口を開いた。

「すみません。もう1回教えてもらえますか、同じ道の行き方を」

聞き取れなかったのかもしれないと思い、私はもう一度説明した。

「まっすぐ行って、二つ目の角を右です」

ところが、やはりその人は歩き出さない。

「二つ目の角というのは、どのあたりでしょうか」

道について聞かれたのは、これで三度目だった。

声を荒らげるわけでもない。距離を詰めてくるわけでもない。ずっと丁寧な話し方なのに、なぜか会話だけが終わらなかった。

私は近くの建物を目印にして、もう少し詳しく説明した。

それでも、その人の足は動かなかった。

私の説明が分かりにくいだけかもしれない。そう思おうとしたけれど、だんだんその場にいること自体が落ち着かなくなってきた。

「すみません、急いでいるので」

そう言って、私は先に歩き出した。

振り返ると、同じ人がいた

駅を出て、いつもの歩道を歩いた。

信号を渡り、そのまま数分進んだところで、どうしても後ろが気になった。

駅では私が先にその場を離れた。あの人は道を聞いていたのだから、教えた方向へ歩いているはずだと思っていた。

一度だけ、後ろを振り返った。

少し離れたところに、さっきの人がいた。

こちらへ急いで近づいてくるわけではない。ただ歩道の途中に立ち、こちらを向いていた。

その瞬間、駅で何度も道を聞かれたことが、急に別の意味に思えてきた。

偶然、同じ方向だっただけかもしれない。

それでも私は、そのまま家へ向かう気にはなれなかった。

いつもの道から一本外れ、人のいる店に入った。しばらく店内を見て回ってから外へ出て、その後も少し遠回りをして帰った。

結局、何かをされたわけではない。

家に着いてから友人に話すと、「本当に道が分からなかっただけじゃない?」と言われた。

私も、そうなのかもしれないと思った。

あれから何年か経つが、同じ駅でその人を見かけたことは一度もない。

ただ今でも、改札を出るときには、あの柱のあたりを無意識に見てしまう。

あの日、あの人が本当に知りたかったのは道だったのか。それとも別の理由で私に声をかけたのか。

今も、それだけは分からないままだ。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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