1. トップ
  2. エピソード
  3. 「ナンバーは4桁まで覚えているから」挨拶する程度の保護者。だが、私の友人に届いた一文に背筋が凍った

「ナンバーは4桁まで覚えているから」挨拶する程度の保護者。だが、私の友人に届いた一文に背筋が凍った

  • 2026.9.5

顔と連絡先を知っている程度の人だった

子どもの学年が同じというだけの付き合いが、いくつかある。学校の行事で顔を合わせれば挨拶をするけれど、終わればそれぞれ別の方向へ帰っていく。

その人も、そんな保護者の一人だった。

名前と顔は分かる。連絡先も知っている。でも、どこに住んでいるのかも、普段何をしているのかも知らなかった。

行事で会うと、向こうから声をかけてくることがあった。

「こんにちは。今日、暑いですね」

「本当ですね。日陰もないですし」

話すとしても、その程度だった。

わざわざ避ける理由もなければ、もっと親しくなろうと思うこともない。ただ顔を知っている保護者。それ以上でも、それ以下でもなかった。

その日、一緒に出かけていた友人も、同じ学校に子どもを通わせている保護者だった。

学校行事の連絡をきっかけに、その人とも連絡先を交換していたという。

私はその友人を助手席に乗せ、白い車で出かけていた。特別目立つ車種でもなく、同じような色の車なら街でいくらでも見かける。

昼ごろ、ある道を走っていると、向こうから一台の車が来た。

ほんの数秒、すれ違っただけだった。

私は相手の運転席を見ていなかったし、その保護者の車だったことにも気づかなかった。

夜になって、友人から届いたメッセージ

その日の夜だった。

友人から突然、連絡が来た。

「ねえ、この人からこんなの来たんだけど」

送られてきた画面には、昼間すれ違ったらしいその保護者からのメッセージがあった。

「今日は12時ごろすれ違ったね、あの道を通ってたんだ」

私はしばらく、その一文を見ていた。

責めているわけでもない。問い詰めているわけでもない。文面だけなら、偶然会った人に声をかけるような、ごく普通の調子だった。

それなのに、なぜか落ち着かなかった。

私自身、すれ違ったことすら気づいていなかったからだ。

向こうから来る車の運転席を見るだけなら、まだ分かる。

でも、その一瞬で白い車が私の車だと気づき、助手席に座っていた友人まで見ていたことになる。

しかも、そのことを私ではなく友人に連絡している。

自分が知らないところで、自分が何時ごろ、どの道を通り、誰と一緒にいたのかが覚えられていた。

そう考えると、さっきまで普通だった一日が、少し違って見えた。

すると友人が、もう一つ教えてくれた。

「前に一回、直接言われたことがあるんだよね」

「あの白い車、ナンバーは4桁まで覚えているからって」

思わず、自分の車のナンバーを頭に浮かべた。

友人によると、似たような連絡を受けた人はほかにもいるらしい。ただ、その人本人に「見かけた」と言うのではなく、今回のように誰かを通して話が届くことがあったという。

何のためなのかは分からない。

それ以来、私はその道を通るのをやめた。

一本隣の道へ回るので少し遠くなる。それでも、そちらを走るほうが気持ちは楽だった。

直接声をかけられたり、あとをつけられたりしたことは一度もない。

友人も最後には、少し困ったように言った。

「たぶん悪気はないんだと思う。覚えるのが得意なだけなんじゃないかな」

私も、そうなのだろうと思う。

子どもの学年が変わり、その保護者と会う機会はなくなった。私は今も同じ白い車に乗っている。

ただ、対向車とすれ違うとき、ときどき運転席を見てしまう。

自分が気づいていなかったあの数秒のあいだに、あの人が何を見て、どこまで覚えていたのか。

それだけは、今も分からない。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ