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旅館の心遣いだと思って感動していた客。「ありがとうございました」と仲居さんにお礼を言った私が、思わず赤面した理由

  • 2026.9.6

部屋には、すでに二組の布団が敷いてあった

年に一度だけ、夫と少し良い宿に泊まることにしている。その年に選んだのは、静かな山あいの旅館だった。

部屋へ案内されると、奥には二組の布団がすでに敷いてあった。掛け布団には厚みがあり、枕まできれいにそろっている。

「もう敷いてあるんだね」

私が言うと、夫も「珍しいな」と布団を眺めた。

夕食まで少し時間があったので、私は布団の端に座って荷物を整理した。

バッグを置いたり立ち上がったりしているうちに、掛け布団の端がずれ、枕も少し斜めになってしまった。

そろそろ食事の時間というころ、私は洗面所で身支度を済ませ、そのまま先に廊下へ出た。夫は少し遅れて部屋から出てきた。

そのまま二人で食事処へ向かい、ゆっくり夕食を楽しんだ。

一時間ほどして部屋に戻ると、私は布団を見て足を止めた。

さっき乱れていたはずの掛け布団が、きれいに伸ばされている。枕もまっすぐ並び、チェックインしたときのように整っていた。

「見て。きれいになってる」

夫は布団をちらりと見て、「ほんとだな」と答えた。

私はてっきり、夕食で留守にしているあいだに旅館の方が入って、さっと整えてくれたのだと思った。

こちらから何も頼んでいないのに、こういうところまで見てくれるのか。さすがだな、と妙に感動して、ふっくらした布団の写真まで一枚撮った。

翌朝のお礼で、話がかみ合わなかった

翌朝、会計を済ませたあと、見送りに出てくださった仲居さんに声をかけた。

「昨日、夕食のあいだにお布団をきれいに直してくださって、ありがとうございました」

すると仲居さんは、少し不思議そうな顔をした。

「昨日の夕食中ですか?」

「はい。部屋に戻ったら、すごくきれいになっていたので」

仲居さんは申し訳なさそうに首を振った。

「夕食中は、お部屋には入っていないんです」

私は一瞬、意味が分からなかった。

すると隣にいた夫が、思い出したように言った。

「あ、それ俺だ」

夕食へ出る直前、私が洗面所を出て先に廊下へ行ったあと、夫が乱れていた掛け布団と枕を直していたらしい。

「そのままにして出るのもなんか悪いと思って。ちょっと直しただけ」

つまり、夕食後に私が見て感動していた布団を整えたのは、旅館の方ではなく夫だった。

「じゃあ昨日、私が写真まで撮ってたのは…」

「布団の写真撮ってるな、とは思ったけど」

夫は、私が旅館のサービスに感動して撮影しているとは思っていなかったらしい。

仲居さんの前で、急に顔が熱くなった。

帰りの車で、前の晩に撮った写真をもう一度見た。確かに布団はきれいで、日に干したばかりだからか、ふっくらして見える。

細やかな旅館の心遣いだと思っていたものの正体は、夫が夕食前に少し布団を整えただけだった。

写真まで撮ったことを改めて話すと、夫はしばらく笑っていた。今でもその一枚を見ると、あの朝の気まずさまで一緒に思い出してしまう。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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