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結婚式の余興で歌った5歳の子供。「帰ってこいよ」と思わぬ選曲に、親族の席が全部笑いに変わった瞬間

  • 2026.9.6

会場の隅に、余興のマイクが一本立っていた

五歳のころ、家族で親族の結婚式に出席したことがある。

白いテーブルクロスと、大人たちの膝ばかりが目に入っていたのを覚えている。

少し大きめの上着を着せられて、私は椅子の上で足をぶらぶらさせていた。

披露宴の途中から、親族が歌うカラオケの余興が始まった。

会場の隅にはマイクが一本立てられ、前の人が歌い終わると、司会の人が客席を見回した。

「次に歌ってくださる方、いらっしゃいませんか」

すると、隣に座っていた叔父が私の背中を軽く押した。

「歌ってみるか」

私は歌うこと自体は嫌いではなかった。ただ、覚えている歌が一つしかなかった。

当時よく耳にしていた大人の歌で、家でも何度か口ずさんだことがあった。

意味はほとんど分かっていなかったが、うまく歌えたと褒められた記憶だけはあった。

だから私は、それを歌えばいいのだと思った。

前へ出ると、会場中の大人たちがこちらを見ていた。マイクは私には少し高く、叔父が屈んで位置を下げてくれた。

緊張しながら息を吸い、私は覚えていた歌を歌い始めた。

「帰ってこいよ、と5歳の子がカラオケで歌いはじめた」

親族の席から、一斉に笑い声が上がった

歌い始めてすぐ、会場のあちこちから笑い声が聞こえた。

馬鹿にされているような感じではなかった。驚いたような、でも楽しそうな笑いだった。

最初に大きな声で笑ったのは、マイクを直してくれた叔父だった。

「その歌か」

そう言って笑いながら手を叩いていた。

新郎と新婦も顔を見合わせて笑っていた。新婦は口元を手で押さえ、肩を揺らしている。

親族の席も次々に笑いに包まれ、それでも誰も私を止めなかった。

私は最後まで歌い切った。

歌い終わると、今度は大きな拍手が起きた。母も席から笑顔で手を叩いていた。

席へ戻ろうとすると、新婦がこちらへ手を伸ばした。

「ありがとう。上手だったよ」

私はすっかり得意になった。

笑われた理由など考えもせず、「ちゃんと歌えたからみんな喜んでくれた」と思い、そのあとの食事中も妙に胸を張って座っていた。

大人になって、やっと笑われた理由が分かった

それから何十年も経って、あの歌の内容を改めて知った。

家を離れた人を想う、大人の気持ちが込められた歌だった。

結婚式の余興で、五歳の子どもが意味も知らずにその歌を選び、真剣な顔で歌っていた。

大人たちには、その取り合わせがおかしかったのだと思う。

当時の私は、歌の内容など一つも分かっていなかった。ただ、知っている歌を一生懸命歌っただけだった。

だからこそ、大人たちも止めるのではなく、笑いながら最後まで聞いてくれたのだろう。

今でも結婚式で余興のマイクを見ると、あの日のことを思い出す。

歌そのものよりも、歌い終わったあとに長く続いた拍手のほうが、なぜか今もよく覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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