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【インタビュー】安達祐実さんが45歳で踏み出した一歩。「安心な場所」の先に見えた景色

  • 2026.9.2

かつて苦手意識を持っていた「舞台」という表現の場。キャリアを重ねたいま、安達祐実さんはあえてその世界と向き合っています。
2026年秋に上演される舞台『ナイボー!』への意気込み、そして9月に45歳を迎える心境とこれからについて語っていただきました。

苦手意識のあった舞台へ。「できない」という感覚が原動力

「まだ、できないことがある。それが嬉しいんです」

そう語る安達祐実さんは、この数年、意識的に演劇へと活躍の場を広げてきました。映像の分野で確かなキャリアを築いてきたいま、決して得意ではないと感じていた舞台にあえて挑む理由は、「自分にはまだ余白がある」と思えたから。

「昔もときどき舞台に出ることはあったのですが、当時は『私はあまり舞台に向いていないかも』と苦手意識を持ってしまって。舞台は映像と違って、お客様に全体が見えていて、どこを観るか自由に選べる。そのなかで、自分がどう存在すればいいのかわからなくて。それで、私は映像をがんばろう、としばらく舞台からは遠ざかっていました」

その思いが変わったのは、2020年に再び舞台に立ったことがきっかけでした。

「あらためて考えてみたら、私は演劇をやりきってもいないし、それほど経験もないのに苦手だとか、向いていないと言っていることが恥ずかしくなって。挑戦する前から自分はなにを言っているんだろう? と思いはじめたんです」

映像というジャンルでは経験を重ね、自信もある。一方、演劇ではまだ思いどおりにはいかない。その“まだできない”感覚こそが、安達祐実さんの原動力になっていると言います。

「安心できる場所で、自分ができることだけをやっていく道もあるのかもしれません。でも私は、お芝居に関することは、全部できるようになりたいんです」

舞台の醍醐味は、毎日同じことを繰り返しても、決して同じにはならないこと。

「同じセリフを言っているのに、毎回違うものになる。その新鮮さを最後まで保ち続けることは本当に難しい。でも、その難しさがあるからおもしろいんだろうと思います」

舞台と向き合う時間は、映像にも少しずつ還元されはじめています。

「表現そのものが変わったかはまだわからないんですけど、自分のなかにある“なにか”は確実に変わっています。欠けていた部分が少しずつ満ちていくような感覚というか。そうやって、いつか円に近付いた自分が映像に戻ったとき、また違う景色が見えるんじゃないかと思っています」

今回は等身大で演じたい、地に足をつけて生きる「母」の役

そうした思いで臨むのが、この秋上演される舞台『ナイボー!』です。野球を通して成長していく球児とその家族を描く青春ドラマで、安達祐実さんが演じるのは、夫を突然失い、息子との距離に悩みながらも、母として前を向いて生きる郁美。稽古を前に、新しい座組との出会いも楽しみにしているそう。

「映像でも演劇でも、私は演出家に従順なタイプだと思います(笑)。演出家の方が思い描いているものを私も共有して、同じ景色を見たいという気持ちが強いですね。今回はキャストに若い方も多いので、なるべく自分から話しかけるようにしたいです。子どもの頃から芸能界にいるからなのか、怖そうというイメージを持たれることが多いのですが、本当は私も人見知りなんです(笑)」

作品については、「ひとりひとりの人生が匂い立つようなドラマ」だと表現します。

「郁美は夫を亡くしているので、その出来事が影を落としている部分はあります。でも、悲しみに暮れているだけでなく、しっかり地に足をつけて生活している人なんですよね。私はこれまで、どこか壊れていたり、重いものを背負っていたりする役が多かったんですけど、今回はそうではない。日々を生きている人として、リアルに演じられたらと思っています。私たちもそうですけど、あえて語らなくても、それぞれに人生があって、過去があって、時間の流れがありますよね。そういうものが自然と伝わってくる作品。それぞれが葛藤と向き合いながら前へ進もうとする姿がていねいに描かれた、人間らしいドラマだと思います」

楽しいと感じることもわかってきた。45歳で描く「これからの未来図」

今年で45歳を迎え、仕事だけでなく、これからの生き方についても変化が生まれています。

「人生も折り返しなんだろうな、という年齢になって、将来をどう生きていくかだけでなく、どういう終着点に向かっていくかも考えるようになりました。でも、これは決してネガティブな意味ではなく、ポジティブな気持ちなんです。ときどき夢物語のように、友人と『お互いおばあちゃんになったら、シェアハウスで暮らそうか』と話すことも。もともと東京育ちで都会が大好きなのですが、最近は自然のなかで過ごす時間もいいなあ……なんて、いろいろと思いを馳せています」

未来を思い描きながらも、お芝居という軸が揺らぐことはありません。

「ただ、本当に心を動かされるものは、やっぱりお芝居。趣味も持ちたいとは思うんですけど、仕事を超えるものにはまだ出会えていなくて。私にとっては、お芝居をすることがいちばん楽しいことなんでしょうね」

PROFILE

安達祐実(あだち・ゆみ)
1981年、東京都生まれ。1983年、2歳でモデルデビュー。1993年、映画『REX 恐竜物語』で映画初主演。1994年、ドラマ「家なき子」で注目を集める。近年の出演作にドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」「夫よ、死んでくれないか」「誘拐の日」、映画『災 劇場版』など。Netflixシリーズ「ダウンタイム」が2026年9月17日より配信予定。

衣装協力:ジャケット/ホリデイ、シャツ/マリリンムーン、パンツ/ルスティック、ピアス/ソワリー、リング/ノーム

安達祐実さん出演 舞台『ナイボー!』

中学時代にバッテリーを組んでいたヨウスケ(大西風雅)とハルタ(岡﨑彪太郎)。同世代屈指のピッチャーだったヨウスケだが、チームの監督だった父(山内圭哉)が他界。ヨウスケは特待生として強豪校の野球部に入部するが、監督(宇野祥平)の期待をよそに、野球から距離を置くようになる。母(安達祐実)はそんなヨウスケとうまく関われずにいた。

脚本:横山拓也
演出:眞鍋卓嗣
出演:大西風雅 岡﨑彪太郎 安達祐実 水野美紀 宇野祥平 山内圭哉 ほか
日程:2026年9月30日(水)~10月18日(日) 東京建物 ぴあ シアター
10月22日(木)~25日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

撮影/白井裕介 スタイリング/船橋翔大[Dragon Fruit] ヘアメイク/paku☆chan 取材・文/工藤花衣

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