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「いらないって言ってたよね?」夫の車から出てきた空のお菓子袋。思わず私が笑った理由とは

  • 2026.9.2

「また来たんだよ」夫はいつも面倒そうに話していた

夫の職場には、月に何度か保険の担当者が来るらしい。

その日の夜も、夕飯を食べ終えた夫が、洗い物をしている私に話しかけてきた。

「今日さ、また保険の人が来たんだよ」

「また?よく来るね」

「そうなんだよ。昼休みに来るからさ。やっと休めると思ったところで話しかけられると、結構きついんだよな」

夫は昼休みになると、一人で車へ戻り、シートを倒して少し目を閉じるのが習慣だった。

その時間を邪魔されるのが嫌なのだという。

「じゃあ今日は休めなかったの?」

「まあ、少しは休めたけどさ。お菓子まで渡してくるし。別にいらないんだけどな」

「それなら『いりません』って言えばいいじゃない」

私がそう言うと、夫は困ったように笑った。

「それが言えたら苦労しないって。せっかく持ってきてくれてるのに、目の前で断るのも悪いだろ」

そんな会話を、私たちは何度もしていた。

私はてっきり、もらったお菓子も職場の誰かに渡しているのだと思っていた。

「いらない」と何度も聞かされていたので、自分で食べているとは考えてもいなかった。

助手席の下から出てきた、見覚えのない袋

ある土曜日、夫の車で買い物に出かけたときのことだった。

助手席に座り、足元に荷物を置こうとしたところ、シートの下から袋の端が見えていることに気づいた。

「なにこれ?」

引っぱり出してみると、お菓子の詰め合わせが入っていたらしい袋だった。

もちろん、中身は空。代わりに食べ終わったあとの小さな包みが何枚も入っていた。

私は袋と夫の顔を交互に見た。

「……これ、もしかして例の?」

夫が一瞬だけこちらを見て、すぐ前を向いた。

「何が?」

「何が、じゃないよ。『いらない、いらない』って毎回言ってたお菓子じゃないの?」

赤信号で車が止まる。

夫は袋をちらっと見て、とうとう観念したように笑った。

「あー…見つかったか」

「全部食べてるじゃん」

「いや、だってさ」

夫は少し言いにくそうにしたあと、小さな声で続けた。

「もらったら食べるだろ。普通にうまいし」

思わず笑ってしまった。

「あれだけ『いらない』って言ってたのに?」

「来るのは嫌なんだよ。それとお菓子がうまいのは別の話だろ」

妙に真面目な顔で言うので、余計におかしかった。

「じゃあ今度は私にも食べさせてよ」

「わかったよ。次はちゃんと持って帰る」

次の月、夫が差し出してきたもの

数週間後、仕事から帰ってきた夫が、台所にいた私の前へ小さな袋を置いた。

「ほら」

「何?」

「この前言ってただろ。食べたいって」

見ると、例のお菓子だった。今度はまだ封も開いていない。

「え、本当に持って帰ってきたの?」

「約束したからな。でも一個くらい残してくれてもいいからな」

「自分も食べたいんじゃない」

そう言うと、夫は笑いながら「まあな」と答えた。

保険の人が昼休みに来るのが嫌なのは、たぶん本当だった。そして、もらったお菓子がおいしいと思っているのも本当だったのだ。

それ以来、夫が「今日また保険の人が来てさ」と愚痴をこぼすたび、私は以前のように素直に同情できなくなった。

「ふーん。それで、お菓子は?」

そう聞くと、夫は決まって少し気まずそうに笑う。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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