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【ルームツアー】海と暮らす歓びに満ちた白亜の邸宅を訪ねて

  • 2026.8.28
Vincent Leroux

フランス・マルセイユの南岸に立つこの邸宅は、リヴィエラの洗練とイタリアの魂を併せ持つ。インテリアアーキテクトのマルゴー・フリッツの手による光と人が集う開放的な空間には、南仏への賛歌が奏でられている。『エル・デコ』2026年8月号より。

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リヴィエラの風をまとい丘の上に佇む邸宅

フランス南東部の港湾都市、マルセイユの南岸を走る「コルニッシュ・ケネディ」は、断崖から地中海を見渡す全長約5kmの海岸道路だ。空と海が溶け合うような絶景で知られる景勝道路を見下ろす高台に、この1900年代築の邸宅は立っている。手掛けたのは、宿泊施設を紹介する「メゾン・ドミノ」のオーナー、オードリー&アントワーヌ・コロンバニ夫妻と、インテリアアーキテクトのマルゴー・フリッツ。彼らが目指したのは南仏の避暑地、リヴィエラを思わせる洗練とイタリア的な温かさが共存する、時代を超えて愛される家だった。

<写真>1900年代に建てられた邸宅は、オーナー夫妻と建築家によって、本来備えていた白く美しいファサードを取り戻した。ラウンジャー“アル・フレスコ・リゾート”とフリル付きのパラソルはオーストラリアのブランド、「ビジネス&プレジャー」の製品。

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地中海が眼前に広がるバルコニーでくつろぐ

夫妻がこの物件に出合った当初、印象は決して良いものではなかったという。建物は古び、内部は2つの住戸と約30もの小部屋に分割されていた。しかし、傷んだ細い階段を上り、テラスからマルセイユ湾を見渡した瞬間、その景色に心を奪われた。海へと開かれた圧倒的な眺望こそが、この家の真の価値だったのである。

<写真>手すりの装飾は竣工当時のオリジナルをそのまま残している。青い折りたたみ式のチェアは「エアボーン」の“AA”、コーヒーテーブルは「メゾン・マドレーヌ」の“オスカー”。ウチワサボテン、アロエベラといった乾燥地帯の植物がのびのびと育っている。

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マルセイユの景勝を名作チェアから一望する

改修ではまず、細分化された空間構成を見直した。壁を取り払い、いくつかの部屋を緩やかにつなぐことで、光と視線が家全体を自由に行き交うようにした。ダブルリビングや屋外へと開くキッチン、海を望む主寝室、そして忘れ去られていたテラスもよみがえった。

<写真>書斎はマルセイユの海岸線を正面に望み、街と海を視界に収める絶好のロケーションにある。チェアはウォーレン・プラットナー、スタンドライトはガエ・アウレンティの“ピピストレッロ”。共に60年代のデザインを象徴するマスターピースだ。

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端正なリビングに巨匠たちの名作が集う

「私たちが求めたのは、流行に左右されない、太陽の光に満ちた家でした。リヴィエラの洗練と70年代の空気感が共存するような住まいです」とオードリーは語る。インテリアには、ヴィンテージデザインと現代のクリエーションとをきわめて自然に共存させた。

<写真>リビングでは、ヴィンテージデザインがひときわ存在感を放っている。70年代の深緑のソファはマリオ・ベリーニの“カマレオンダ”、コーヒーテーブルはシャルロット・ペリアンが1969年にデザインした“プラナ”。サイドテーブルはエーロ・サーリネン。

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美しい天井のアーチがこの家の歴史を語る

素材にも強い個性が宿る。1階の床とバスルームにはイラン産レッドトラバーチンを採用。深みのある赤褐色の石は、地中海の夕景を思わせる温かな存在感を放つ。

<写真>建築的なクラシシズムとモダンデザインが出合うダイニングルーム。テーブルはヤコブ・プレイドラップによる“プラッシュ”、チェアはリュディ・ゲネールによる“ボー・リヴァージュ”。花器はギャラリー・アンテリユール・パルティキュリエで見つけた。

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トラバーチンに囲まれた彫刻的なバスルーム

<写真>バスルームはイラン産の赤トラバーチンで空間全体を包み込んだ。水栓の両脇に見えるのはギリシャ神話の主神ゼウスと伝令神ヘルメスを模した黒いレリーフ。スツールは1927年にシャルロット・ペリアンがデザインした「カッシーナ」の“LC9”。

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ステンレスの鈍い輝きとオブジェが呼応する

キッチンではステンレスを大胆に用い、光を柔らかく反射するモダンな表情を演出。主寝室には寄せ木細工の床とコーデュロイベルベットを取り入れ、静かで包み込まれるような雰囲気をつくり出した。

<写真>マルゴー・フリッツは現代的なエレガンスを表現するために、ステンレス素材を主役にキッチンを構成。静物画の両脇に設置したブラケットライトは「リーファ」の“パン”。右奥の花器は1950年ごろに南仏のヴァロリスで制作されたアンドレ・ボーの作品。

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軽やかなストライプが寝室に落ち着きをもたらす

特に印象的なのは、家のどこにいても海の存在を感じられることだ。寝室のベッドからも、窓辺のデスクからも、視線は自然と水平線へと導かれる。マルゴー・フリッツが設計した書斎は、まるで展望室のように街と海を一望し、この家の特等席となっている。

<写真>寝室でまず目に留まるのは、ヘッドボードと壁を同じ柄で仕立てた一面。両サイドにのみの市で見つけたアール・デコ調のブラケットライトを配した。部屋の中央では、フランソワ・バザンによる布張りのペンダントライト“ドーム”が存在感を放つ。カシミヤのスローは「ミー&ケイ・ホーム」。

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イタリアの名作が迎える白を基調としたエントランス

こうして再生されたこの家は、単なるリノベーションの成果を超え、海と共に暮らす歓びを映し出す住まいとなった。地中海へ向かって大きく開かれた空間には、南仏の陽光、イタリアの感性、そして人々が集う豊かさが確かに息づいている。

<写真>イタリアの美意識が漂うエントランス。ムラーノガラスのブラケットライト、ロジェ・フェローによる50年代のコートラック“ジオ・アストロバル”、ジオ・ポンティがデザインしたミラー“F.A.33”など、選び抜かれたヴィンテージが空間を彩る。

Realization: LISA SICIGNANO Photo: VINCENT LEROUX Original Text: JEAN-CHRISTOPHE CAMUSET

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『エル・デコ』2026年8月号



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