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【アースデイ】夢は前人未踏の地!科学の力で海の課題に取り組む、Z世代女性CEOの挑戦

  • 2026.4.20
Naho Yashiro

4月22日はアースデイ。環境問題の側面から地球の未来を考えたり、解決のためのアクションをとる日。現在、気候変動や環境汚染の影響は、海洋環境や生き物にも広がり、今まで経験したことのない問題が起きているという。

一体、海の中で何が起きているのだろう? 人が普段見ることのできない海の世界を可視化し、水産業の課題解決を目指す株式会社MizLinxは、インターネットがつながった水中カメラ・センサーシステムを開発している企業だ。

ここでは、MizLinxのCEO 野城菜帆(ヤシロ・ナホ)さんにインタビュー! 同分野で活躍する女性の前例は日本ではまだまだ少ないなかで、野城さんのこれまでの道のりとは? 既存のジェンダーロールにとらわれず、私たちの信じる道を力強く選び取るためのヒントが、きっとここにあるはず。

きっかけは、未知の世界への憧れ

「前人未踏」「人類初の挑戦」――そんなキーワードに目を輝かせて、現在、自身が立ち上げたスタートアップでの事業について熱く語るのは、MizLinxを創業した野城さんだ。

MizLinxが取り組んでいるのは、インターネットにつながった水中カメラ・センサーシステムをつくり、海の中で起こっていることを可視化すること。長い時間、海の中を監視することで収集できる生き物の動きや環境の変化などのデータを活用して、例えば、磯焼けと呼ばれる日本各地の浅海で発生している藻場の消失や衰退の原因究明につなげている。漁獲量の減少や漁場環境の悪化にもつながるこの現象は、水産業に携わる人々にとっては目下の課題。

磯焼け以外にも全国各地の海のさまざまな課題に取り組む野城さんが現在の道に進んだきっかけは、意外にも、海からかなりかけ離れた場所への憧れだったそう。それは宇宙だ。

大学時代には留学先でNASAのジェット推進研究所を訪問 Naho Yashiro

「幼少期によくテレビで流れていた宇宙飛行士の活躍を見て、ずっと憧れを持っていました。小学校3年生のとき、愛・地球博(2005年日本国際博覧会)で、日本人女性初の宇宙飛行士 向井千秋さんの講演に参加したのを今でも覚えています。実は講演の具体的な内容は覚えていないのですが、向井さんが一生懸命に話すその熱意や情熱が鮮明に記憶に残っているんです」

人類が住むことのできない宇宙。未知にあふれた極限状態の世界に挑戦する姿に強い憧れとロマンを感じたという野城さんは、それ以降、毎年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に掲載される宇宙飛行士の募集要項を眺めていたそう。当時、応募要件として理学、工学、医学など、いわゆる理系の4年制大学卒業以上であることが求められていたため、大学でも理系を専攻したのは、野城さんにとって自然の選択だった。

挑戦の場は、宇宙から海へ

大学では機械工学を学び、人類が長期滞在ができる大型の月面探査車について研究。そこでも変わらず「宇宙に行ってみたい」という壮大なロマンを抱きつつも、宇宙に関する研究が社会のために役立つのは遠い未来のこと。仕事にするならば「人々の明日の暮らしを少しでも良くすること」がいいという現実的な想いも持つようになった。

「研究をしながら気づいたのは、宇宙と共通した極限環境である海底や海そのものの存在でした。どちらも人類にとって未知の世界でもあり、住むことのできない場所。しかも、海は私たちの身近に存在するのに、1万メートルの海底どころか岸から近い深さ数メートルのところですら、実は何十年も漁業をやってる人でも知らない世界なんです。そこに宇宙と同じロマンを感じました」

水産業の現場である海に足を運び、直接、関係者とコミュニケーションをとることを大事している Naho Yashiro

卒業後の進路としては、研究者としての道も選択肢にあった一方、ビジネスとして今日、明日の社会に貢献したいと考えた野城さんは、学生として起業することを決意。東京大学大学院の博士課程で環境×工学の研究もスタートし、喫緊の課題解決に直結する海のビジネス領域へと本格的にシフトした。実際に起業したMizLinxでは、研究しているだけでは実感できないやりがいや、ダイレクトな反響があると語る。

「MizLinxが提供するサービスに関して、お客さまから直に感想や要望などの反響をもらうときが、もっともやりがいや喜びを感じる瞬間です。人類が足を踏み入れたことのない場所への憧れが強いのも確かですが、結局はその先にある“人が喜ぶ顔”が見たいのかもと、今では思うようになりました」

社会に出て気づいたジェンダーギャップ

起業して社会に出ると、学生のころには気づかなかったジェンダーバイアスに直面することもあると、野城さん。「男性中心の業界ということもあり、初対面の相手に企業の代表だと伝えると驚かれることも少なくありません。同業者で女性を見かけることも少ないですし、そもそも学びの場でも、周囲にいるのは男性ばかり。私自身、それを窮屈と感じたり、ハードルだと感じたことはあまりありません。でも、学校の外に出ると、それ以前には気づかなかった、アンバランスさに目が留まるようになりました」

Naho Yashiro

野城さんが修士課程に進学する際、7~8割の同級生の男子生徒が進学していたのに対し、進学した女性生徒は半分いたかどうかだったという。ある調査レポート(2026年)によると、日本の15歳女子の数学的/科学的リテラシーはいずれも世界トップ水準を誇るのにもかかわらず、日本の理工系学部における女性比率はわずか18.08%と、他のOECD諸国と比較して圧倒的に低いとことがわかった。他にも調査では女子生徒の進学のハードルになっている要因として、一般的に指摘されてきた親の反対よりも、ロールモデルが身近にいないことの影響の方が現在は大きくなっていることを明らかにしている。

“楽しむ背中”が、誰かのロールモデルに

では、野城さん自身が描くロールモデルとはどのようなものか。それは、今も記憶に残っている宇宙飛行士 向井さんの姿に近いのではないだろうか。“苦労して何かを勝ち取った女性”ではなく、“情熱を持って何かに取り組む一人の人間”としての向井さんだ。

仕事や研究以外にも登山やゴルフなど趣味の時間も全力で楽しむ Naho Yashiro

「自由に夢を追求して、これからも楽しくやりたいです。女性のパイオニアとして苦労する姿よりも、圧倒的なロマンを心から楽しんで追う姿の方が、結果として誰かの背中を押すことになると思うんです」と、笑顔で話す野城さん。

そんな野城さんの直近の目標は、MizLinxの事業の海外展開。さらに長期的な目標を聞くと、「いつか実現したい夢は、木星や土星の衛星の氷の下にあるという“宇宙空間の海”の探索です」と、にっこり。宇宙の海を調べることは、地球の生命体が生まれた秘密を解き明かすだけでなく、地球以外の星に生き物はいるのかという大きな謎を解くことにもつながる。つまり、海の課題解決を目指しながら、人類にとっての最大の未知にも挑戦するという。野城さんのロマンは、これからも大きくなっていく一方だ。

PROFILE
Naho Yashiro

野城菜帆(ヤシロ・ナホ)
1996年千葉県生まれ。大学院在籍中、2021年8月に株式会社MizLinxを創業・CEOに就任。国内の漁業者や自治体、研究機関などと連携しながら、海中の環境データの収集・可視化で水産業の課題解決に取り組む。2023年にForbes JAPAN 30 UNDER 30の “SCIENCE & TECHNOLOGY & LOCAL” 部門に選出。同年、「東京都ベンチャー技術大賞」にて「特別賞」と「女性活躍推進知事特別賞」をダブル受賞。東大大学院博士課程在籍中。

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