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「私が抱えていたものはこれだったんだと、はっとさせられた」19歳・早瀬憩を救った、住野よるの一冊【私の愛読書】

  • 2026.8.28

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俳優やタレント、経営者やスポーツ選手など、さまざまなジャンルで活躍する著名人にお気に入りの一冊をご紹介いただく連載「私の愛読書」。今回ご登場いただくのは、女優として快進撃を続ける早瀬憩さんだ。

2021年にデビュー。初主演を務めた映画『違国日記』と『あのコはだぁれ?』での演技が評価され、第16回TAMA映画賞最優秀新進女優賞、第67回ブルーリボン賞新人賞を受賞。2025年は映画『か「」く「」し「」ご「」と「』、『この夏の星を見る』にメインキャストとして出演し、2026年8月28日公開の映画『私はあなたを知らない、』では、ヒロイン・朝子を演じる。

そんな早瀬さんには読書家の一面がある。「本に救われるという経験を何度も味わった」と語る早瀬さんの愛読書とは?

女優・早瀬憩の「家に本棚コーナーがあるくらい好き」な作家は

――早瀬さんは、かなりの読書家だとお聞きしました。

早瀬 憩(以下、早瀬):昔から本を読むのは好きで、中学生のとき、年間で365冊読んだこともあります。360冊読んだら賞状がもらえる、という制度があったので、読書記録家という称号がほしくて、図書室にある本を片っ端から読んでいました(笑)。

――とくに好きな作家さんは?

早瀬:住野よるさんは、家の本棚にコーナーをつくっているくらい、大好きです。住野さんの作品は、学生とか、若い人が主人公であることが多いから共感しやすいというのもあるんですけど、ずっともやもやと抱えていた言語化できない感情を、鮮明に描き出してくれるんですよね。思春期特有の悩みを言い当てられ、私が抱えていたものはこれだったんだと、はっとさせられることも多くて。本に救われるという経験を何度も味わわせてもらい、今でも新刊が出れば必ず手にとる作家さんです。

――じゃあ、『か「」く「」し「」ご「」と「』の実写化に出演されたのは……。

早瀬:めちゃくちゃ嬉しかったです。5人の高校生の群像劇で、一見、悩みのなさそうな明るい子も内側ではもどかしくて解消しきれない想いを抱えているんだということや、自分と似た相手だからこそ、一緒に過ごすうちに共感だけではない葛藤が生まれてしまうこととか、長い人生でみれば些細なことかもしれないけれど、ずっと大事にしたいと思える繊細な感情が詰まっている、大好きな作品なんです。私が演じたエルという女の子は、人の目を気にしすぎてなかなか本音を口に出せないタイプで、急に学校にも来なくなってしまうんですけど、そんな彼女が一歩踏み出す勇気に救われましたし、実写化したらこの子を演じてみたいといちばん感情移入していたキャラクター。本当に、夢みたいでした。プロモーション中に、住野さんにお会いして、ファンですということも伝えられたのも嬉しかったです。

 住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫刊)
住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫刊)

――では、今回の愛読書は『か「」く「」し「」ご「」と「』ということで。

早瀬:いやっ、でもっ、うーーーーん。住野さんの作品は、本当に、全部好きなんですよ。『か「」く「」し「」ご「」と「』に思い入れがあるからといって、他の作品と優劣をつけることはできなくて。でも選ばなきゃいけないんですもんね。今回は『か「」く「」し「」ご「」と「』にさせていただきます。

情景を想像して瞼の裏に思い浮かべることができるのは、本を読んできたおかげ

――年間365冊も読まれるほどの読書家なら、好きな本はと聞かれても、なかなか選びきれないですよね(笑)。最近は、どんな小説を読まれたんですか?

早瀬:一穂ミチさんの『光のとこにいてね』をちょうど読み終わったところで、今は切ない余韻で胸がいっぱいです。古い団地で出会った二人の女の子の話なんですけど、高校生になって、やがて大人になる、そのときどきでの関係性や感情の変化が描かれているのが、好きでした。高校生のパートが、年が近いぶん、やっぱりいちばん感情移入しやすくて。『か「」く「」し「」ご「」と「』の感想と重なりますけど、学校という閉ざされたコミュニティでまわりの目を気にしてしまい、大事な人に素直に向き合うことができなかったり、人と比べて葛藤が生まれたり、感情の揺れの一つ一つに共感できましたし、目に浮かぶような美しい情景描写にも心惹かれました。

――小説を読んで、感情が言語化されることで、役者の糧になることもありますか?

早瀬:そうですね。いろんな感情を学べるというのもありますが、本を読むのに慣れていたおかげで、役者になってからも台本を読むのが楽しいんですよ。自分の演じる役の気持ちを想像するのは、キャラクターに感情移入することと似ているし、ト書きのちょっとした描写からも、情景を想像して瞼の裏に思い浮かべることができるのも、本を読んできたおかげだなと思います。

19歳・早瀬憩。映像化されたら出演してみたい原作は…

――ちなみに、今後、出演してみたい作品はありますか?

早瀬:実は、これまであんまり、自分が演じるなら……という目線で小説を読んだことはなくて。単純に、おもしろそうな本を見つけて楽しむというだけだったんですけど、こうして質問していただく機会も増えて、そういう目線で小説を読むのもおもしろそうだなと思い始めたところなんです。もともと、好きな作品が実写化されたときに、原作とどんな違いがあるのか、役者さんがどんな表現をされているのか観るのも好きなので、それを自分で試せる機会をいただけるなら、こんなに嬉しいことはないんですよね。というわけで、最近はいろいろ考えてしまうんですけど……たとえば伊坂幸太郎さんの『砂漠』とか。

――大学生の男女5人が登場するお話なので、年齢的にはぴったりですね。

早瀬:そう。仙台の大学が舞台の青春劇で、合コンとか麻雀とか、それっぽいワードがちりばめられているなかで、車を空中に飛ばすことのできる超能力をもった女の子が登場するんですよ。その女の子を、演じてみたい(笑)。

――見てみたいです(笑)。

早瀬:あと、出演させていただいた映画『この夏の星を見る』の原作者、辻村深月さんの小説も大好きで。『この夏の星を見る』はコロナ禍における高校生の青春劇でしたけど、『傲慢と善良』みたいな、人の心を暴き出すような、えぐりだすような、ぐさぐさ刺さる作品にも惹かれるんです。『噛みあわない会話と、ある過去について』を読んだときは、人間関係のいびつさや、誰もが日々とりつくろっているところをここまで描き出すのかと、胸が痛い思いになりながらも、夢中になってしまいました。

――その系統でいくと、女性同士の恋愛に似た友情を描いた『盲目的な恋と友情』が個人的には好きですね。

早瀬:いいですね。ただ仲がいいだけじゃない、でもただ敵対するだけじゃない、女性同士の関係性の真髄を描いたあれこそ、実写化されるといいんじゃないでしょうか。その際はぜひ、お声がけいただけると嬉しいです。

取材・文=立花もも 写真=金澤正平

スタイリスト=佐々木翔/Shoh Sasaki

ヘアメイク=坂本志穂/SHIHO SAKAMOTO

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