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20代のころ、母親が余命3カ月と宣告され自宅介護。親の死に対して複雑に揺れ動く気持ちを綴った実録コミックエッセイ【書評】

  • 2026.8.26

【漫画】本編を読む

『20代、親を看取る。』(キクチ/KADOKAWA)は、余命わずかとなった母親を自宅介護することを選び、看取るまでの、20代だった著者・キクチ氏の実体験を描いたコミックエッセイだ。介護の現実だけでなく、親の死とどう向き合っていくべきかという複雑な感情が等身大の言葉で綴られている。

キクチ氏が中学生の頃、母親は乳がんを患い、今後5年の生存率は50%と告げられる。それでも母親は手術や治療を乗り越え、60歳を過ぎてからは接客の仕事や大好きなパン教室に通うなど、前向きな毎日を送っていた。しかし、ある日「なんだか脚が動かしにくい」と感じたことで検査を受けた結果、脳腫瘍が見つかる。さまざまな治療法を模索していくなかで医師から告げられたのは、「余命3カ月」という言葉だった。キクチ氏と父親は、母親との残された時間を家族3人で過ごすため、自宅介護を決断する。

慣れない介護生活は想像以上に慌ただしい。ケアマネジャーや訪問医師といった多くの専門家とやりとりしながら、初日から深夜の排泄処理に追われて眠れなかったり、食べられるものが限定される母親の食事の献立に頭を抱えたりと、想像を絶する現実が待っていた。体力だけでなく精神的にも削られる状況に四苦八苦する姿が描かれる。しかし、親の死というテーマながら、線の少ないやわらかな絵柄と、どこか淡々とした語り口で進んでいくため、重くなりすぎずに読み進められるだろう。

印象的なのは、日々弱っていく母親と向き合うキクチ氏が抱える感情の揺れだ。いなくなってほしくないという願いと、介護の日々が早く終わってほしいという気持ち。矛盾する本音や、逃げ出したくなったことも描かれていることで、当然ながらきれいごとでは終わらない介護のリアルと切実さが伝わってくる。また、漫画では描き切れなかった背景や思いを綴ったテキストエッセイも収録されている。

自宅介護についてはもちろん、遅かれ早かれ必ずやって来る親の死に直面したときに、できるだけ悔いが残らないよう過ごしていくための参考になるはずだ。まだまだ遠い未来のことと思っている人も手に取ってほしい。

文=坪谷佳保

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