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「返金しろ、シャリが固い」寿司をほとんど食べてから怒鳴り込んだ客。だが、正論を返した結果

  • 2026.8.24
「返金しろ、シャリが固い」寿司をほとんど食べてから怒鳴り込んだ客。だが、正論を返した結果

大晦日の売り場は、息つく暇もありませんでした

大晦日のスーパーは、一年でいちばん忙しい日です。私が働いていた総菜コーナーでも、朝からスタッフ総出で寿司を作り続けていました。

この時期によく出るのは、五十貫入りの大きな寿司パックです。年越しに家族で囲むために買っていく人が多く、売り場に並べても、すぐに数が減っていきました。

私はバックヤードと売り場を行き来しながら、追加分の準備に追われていました。手も腰もすっかり疲れていましたが、それでも売れていくのを見ると、もうひと踏ん張りしようという気持ちになります。

夕方になり、ようやく少しだけ売り場の混雑が落ち着いてきた頃でした。レジの近くから、急に大きな声が聞こえてきたのです。

「ちょっと、どうなってるんだよ。これ、固くて食べられたもんじゃないぞ」

驚いてそちらを見ると、五十代くらいの男性客が、寿司の容器を片手に店員へ詰め寄っていました。

「返金してくれよ。こんなもの売るなんて、ひどすぎるだろ」

私は思わず足を止めました。手にしていた容器の中を見て、さらに言葉を失います。五十貫入りの寿司は、ほとんど食べ終わっていて、残っていたのはたまごの寿司が二貫だけでした。

「シャリが固いんだよ。口に入れた瞬間に分かった。こんなの、客に出していいと思ってるのか」

男性は怒った顔のまま、容器を突き出してきます。けれど、そこまで食べてから言われても、という気持ちは周りの誰もが抱いていたと思います。

近くにいたお客様たちも、買い物の手を止めて、気まずそうに様子をうかがっていました。

店長の言葉は穏やかでしたが、はっきりしていました

騒ぎを聞きつけて、厨房から店長が出てきました。慌てる様子もなく、男性の前で立ち止まると、まず容器の中を一度しっかり確認しました。

「申し訳ありません。ご不快な思いをさせてしまったことについては、お詫びいたします」

店長は落ち着いた声で、そう言いました。男性は少し勢いづいて、すぐに言い返します。

「謝るなら返金してくれよ。こんなの、どう考えてもおかしいだろ」

店長は表情を変えず、男性の目を見て答えました。

「お気持ちは分かります。ただ、ほとんど召し上がった状態ですので、こちらとしては返金の対応はできません」

「なんでだよ。固かったんだぞ?」

「もし途中の段階でお持ちいただいていれば、すぐに売り場の者にも確認させていただけました。ですが、この状態ですと、商品の不良として判断するのは難しいんです」

言い方は丁寧なのに、店長の言葉には迷いがありませんでした。

男性はさらに声を荒らげます。

「こんなの納得できるわけないだろ」

「納得いただけないお気持ちは理解します。ただ、できないことを、できるとは申し上げられません」

短い言葉でしたが、その一言で店長の考えは十分に伝わりました。

それでも男性は引き下がらず、全額返せ、新しいものと替えろと繰り返しました。売り場の空気がぴんと張りつめ、私まで胸がざわざわしてきます。

すると店長は、声の調子を変えないまま、もう一度だけはっきりと言いました。

「申し訳ありませんが、ほかのお客様のお買い物のご迷惑にもなっております」

男性の表情が、そこで少し変わりました。

男性は口を開きかけて、言葉を飲み込みました。さっきまでの勢いが、目に見えてしぼんでいきます。

「……もういいよ」

吐き捨てるようにそう言うと、男性は容器を持ったまま、足早に売り場を離れていきました。

去っていく背中を見送りながら、私はようやく詰めていた息を吐きました。周りのお客様たちも、何事もなかったように少しずつ買い物へ戻っていきます。張りつめていた空気が、そこでやっとゆるみました。

店長は私たちのほうを振り返り、「大丈夫。持ち場に戻ろうか」とだけ言って、また厨房へ戻っていきました。

大晦日の忙しい売り場では、強い言い方をされることもあります。けれど、相手が感情的になっても、慌てず、必要なことだけをきちんと伝える。その姿勢がどれだけ大事なのかを、あの日の店長から学んだ気がします。

正直、あのときの私は、ただ怖くて立ち尽くすことしかできませんでした。だからこそ、穏やかな口調のまま一歩も引かなかった店長の背中が、今でも強く印象に残っています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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