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世界で広がる「ネオ・アールデコ」とは? ホテルで読み解く最新インテリアトレンド

  • 2026.8.20
Photo : Robert Rieger

1925年の「パリ万国装飾美術博覧会」をきっかけとして、ヨーロッパやアメリカを中心に広がりを見せたアールデコ。それから100年あまりを経た今、その幾何学な構成や素材づかい、そして艶やかな仕上げといった要素を現代の感覚で再解釈した「ネオ・アールデコ」が海外のインテリアシーンで注目を集めている。

本記事では、ロンドン、パリ、ニューヨーク、マイアミ、そして横浜のホテルを舞台に、「ネオ・アールデコ」の現在地を紹介。ホテルのインテリア空間を通してトレンドを紐解いていく。

Waldorf Astoria New York

ネオ・アールデコとは?

「ネオ・アールデコ」が目指すのは、1世紀前に誕生したアールデコというスタイルそのものを現代に再現することではない。アールデコでは、幾何学的でグラフィカルなモチーフを主役にシンメトリーで装飾的な空間がつくられたが、「ネオ・アールデコ」において、こうした要素を過剰に盛り込むことはせず、特徴を押さえつつも、より抑制された形で仕上げる。

また、真鍮や大理石、木材といった素材を組み合わせてコントラストをつくり、空間にほどよいインパクトをもたらす。

「ネオ・アールデコ」で大切なのは、空間のコンセプトやテーマ。これに調和させる形で、さまざまな素材や仕上げ、色彩、パターンを重ね、そこに奥行きを生み出していくのだ。

<写真>ウォルドーフ・アストリア・ニューヨークのロビー。

Hearst Owned

ザ・ボーモント・メイフェア/ロンドン

ロンドンの中心地、メイフェア地区に2014年、開業したホテル。建物の外壁に備え付けられた現代アーティスト、アントニー・ゴームリーによる宿泊可能な作品《ROOM》(ホテル写真左、グレーの部分)の存在でも知られている。

建物自体は1926年に竣工。1920年代ニューヨークに漂っていたグラマラスな空気感からインスピレーションを得たというインテリアでは、竣工当初に隆盛を極めていたアールデコのスタイルが現代風に解釈されている。

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客室は、照明や家具のディテール、ファブリックに幾何学的モチーフを取り入れながら、ブラウンを基調とした落ち着いた雰囲気に仕上げられている。

Hearst Owned

バスルームの主役は大理石。ラグジュアリーな素材を使いながらも、壁に飾られた写真を含め、色を白・黒・グレーに限定することでシックな印象に。

Hearst Owned

レストラン「ロージ」では、アーティスト、ルーク・エドワード・ホールが描いた壁画を背景に、作品と同じ色調に統一されたインテリアが空間を彩る。ベルベットの張り地、光沢のある木製パネルや床、照明に用いられた小ぶりな球体が「ネオ・アールデコ」のスタイルを完成させた。

The Beaumont Mayfair
住所/Brown Hart Gardens, London W1K 6TF, UK

©Matthieu Salvaing

オテル・バルザック/パリ

パリの名所、シャンゼリゼ通りからほど近いバルザック通りに立つブティックホテル。19世紀フランスを代表する作家、オノレ・ド・バルザックがこの界隈に住んだことから、名付けられた。

建物自体は、個人邸として19世紀に建設。20世紀初頭に創業したホテルを全面改装し、2024年にリニューアルオープンした。

©Matthieu Salvaing

リノベーションを担当したのは、パリを拠点とするフェステン・アーキテクチャーのシャルロット・ドゥ・トナックとユーゴ・ソゼ。ホテル創業当初の華やかなパリを意識しつつ、日本文化からもインスピレーションを得て、洗練された静謐な空間をつくり上げた。

<写真>ホテルのロビー。チェッカーボード柄の床が1920年〜30年代を彷彿とさせる。

©Matthieu Salvaing

客室数は、スイートルームを含めて58室。エッフェル塔を望む「テラス・スイート」(写真)は、木目の美しいフローリングが映えるニュートラルカラーでまとめつつ、黒の窓枠や家具で直線を取り入れ、空間を引き締める。広々としたテラスには、幾何学的モチーフをあしらった手すりが見える。

©Matthieu Salvaing

パリ市民と観光客が共に集う「バー・バルザック」は、アルコーブのような空間と控えめな照明、そしてダークブラウンを基調としたインテリアが親密な雰囲気をつくり上げる。

Hôtel Balzac
住所/6 Rue Balzac, 75008 Paris, France

Waldorf Astoria New York

ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク/ニューヨーク

1893年創業の「ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク」は、1931年、現在の所在地であるパークアベニューに開業。各国の首脳や皇族、映画スターを、荘厳なホールやレストラン、宮殿を思わせる客室で歓待した。

Waldorf Astoria New York

その後、建物や老朽化や機能面におけるアップデートの必要性から、建築事務所、スキッドモア・オーウィングス&メリルとインテリア・デザイナーのピエール・イヴ・ロションが手を組み、8年をかけて大規模な修復・改修を敢行。最先端テクノロジー、モダンなアメニティを導入し2025年にリニューアルオープンを果たした。

<写真>1890年代に描かれた壁画が残る「シルバー・コリドー」。

Waldorf Astoria New York

ホテルを象徴するアールデコ・スタイルのインテリアも、モダンに生まれ変わった。「エンパイア・スイート」の客室には、家具やアート作品にさりげなく幾何学的モチーフを盛り込みつつ、木目や厚みのあるカーペットで素材感を強調し、さまざまな感覚に訴える心地よさを実現した。

Waldorf Astoria New York

アメリカン・ブラッスリー「レックス・ヤード」も必見。四角形をモチーフにした照明をはじめとする直線的なラインと曲線を描くテーブルやチェア、やわらかな色合いの対比が秀逸だ。

Waldorf Astoria New York
住所/301 Park Avenue, New York, NY 10022, USA

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デラノ・マイアミ・ビーチ/マイアミ

マイアミのサウスビーチに立つ、リゾートホテル。設計を担当したのは、ニューヨークとマイアミを拠点に活動したB・ロバート・スワートバーグ。1947年に創業し、アールデコに影響を受けた華やかなスタイリングで多くのセレブリティを魅了した。

Photo : Robert Rieger

コロナ禍の2020年に閉業したが、6年にわたるリノベーションを経て、2026年再オープン。「デラノ・マイアミ・ビーチ」を運営するエニスモアのデザインチームと共にインテリアを担当したエラスティック・アーキテクツは、「ホテルがもつアールデコのルーツに敬意を示しながら、現代的な感覚で空間を再構築」したと語る。その言葉通り、テラゾーを用いたフローリングや象徴的な六角柱といった建築的なディテールは注意深く修復され、デザインに生かされた。

<写真>六角柱が並ぶロビー。

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ペントハウスとスイートルームを含む171の客室は、ホワイトを基調に、木や大理石、家具を縁取る曲線が心地よいリズムを奏でる。アクセントは家具や植物によって随所にちりばめられたグリーン。

Photo : Robert Rieger

アイコニックな「ローズ・バー」も復活。マイアミのナイトライフを象徴するカクテルバーは、ミラーやレザーの仕上げなどで光沢感を強調し、親密な雰囲気とグラマラスさを共存させた。

Delano Miami Beach
住所/1685 Collins Ave, Miami Beach, FL 33139, USA

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ヒルトン横浜/横浜

2023年に開業した「ヒルトン横浜」のデザインコンセプトは、アールデコにモダンな横浜の要素を組み込み、再構築した「YOKOHAMA Déco」。神奈川県では、県庁本庁舎などの歴史的建築にアールデコの造形が多くみられることなどから、これが採用された。

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横浜の庭園をコンセプトにデザインされたオールデイダイニング「パレード」も、アールデコの意匠を随所に取り入れている。幾何学的なパターンや艶やかな素材を、緑を思わせる色彩や有機的なモチーフと重ね、クラシックな様式を軽やかにアップデートした。







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エントランスなど共有スペースは、白・黒・ゴールドをベースにしたデザインが非日常をきらびやかに演出する。幾何学的モチーフをかたどったゴールドの手すりを備えた螺旋階段は、象徴的だ。

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スイートルーム20室や写真の「プレミアムルーム」を含む全339室の客室では、木目を強調して仕上げた家具や、壁紙と絨毯のパターンなどにアールデコの気配をちりばめつつ、横浜の夜景に溶け込むエレガントな配色を採用した。

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夜の帳が下りたら、3階のメインロビー(写真)やバー&ラウンジ「メロディー」もおすすめだ。街の灯りと、ゴールドを多用した内装や照明が呼応。ここでも、直線的なデザインの照明や艶やかな素材感が、「ネオ・アールデコ」なスタイルを叶える。

ヒルトン横浜
住所/神奈川県横浜市西区みなとみらい6-2-13

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