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ロンドンのデザイナー直伝。建築的思考でインテリアをアップデートする方法

  • 2026.8.20
Simon Kennedy

建築家、トム・ラットが主宰するTRスタジオは、イーストロンドンを拠点とする建築・デザイン事務所。活動範囲は広く、大規模な建設プロジェクトから個人邸、商業施設のインテリアまで手掛ける。幼い頃、フランク・ゲーリーによるビルバオ・グッゲンハイム美術館のデザインに感銘を受け、マンチェスター大学で建築を学んだ彼は、ノーマン・フォスターとマイケリス・ボイドといった有名建築家、その後は個人邸のインテリアを専門とするアムステルダムの小さなスタジオでキャリアを積んだ。そんな彼が建築的観点を交えたインテリアのアップデート術を解説!UK版「エル・デコ」より

David Cleveland

ミニマリズムにプレイフルな要素をプラス

さまざまな設計事務所で対照的な経験を重ねたことで、トム・ラットは多彩なスキルセットを手にした。そして、これが今日のTRスタジオの原動力となっている。「私はずっと、モノの形と機能に興味を抱いてきました。それによって、いかに人々の生活をよりよいものに、日常を楽しくできるのか、とね」とラット。彼と共に働く9人は、みな異なる経歴をもつが、全員が物質性やクラフツマンシップ、それからサステナビリティに情熱を注いでいる。

ラットのシンプルなスタイルは、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンやピエール・ヨヴァノヴィッチ、デヴィッド・チッパーフィールドといったデザイナーたちから影響を受けているという。

「彼らは職人の手を感じさせながら同時にモダンでもあるようなアプローチをとります。そして、純粋なミニマリズムをプレイフルで楽しげな何かに高めるような質感を、それと掛け合わせる。私はこの手法に共感し、自分のプロジェクトにも取り入れています」

Billy Bolton

TRスタジオのスタイルを体現するカントリーハウス

近作のひとつは、コッツウォルズ地方に立つカントリーハウスの別棟。ラットはこのプロジェクトがTRスタジオの「クワイエット・ラグジュアリーな、そして現代的でありながら時代を超越した」スタイルを体現していると考えている。

「細部を極限までシンプルに洗練させ、あたたかく閉じた環境であるインテリアと屋外空間とのシームレスなつながりのバランスを尊重しました。その魅力は、装飾性ではなく、スケールや構造面で変化に富んだ建築そのものから生まれています」

ロンドンのケンジントンでは、1830年代築のタウンハウスのリノベーションを手掛けた。エレガントなインテリアに含まれる要素のひとつが、クライアントが所有する膨大な本のコレクションを収納する吹き抜けのライブラリー。壁面を覆うガラスの引き戸を通して、空間全体が自然光で満たされる。

マルバリーズ・ファーム&ダイニング( Malverleys Farm & Dining)も、大きなプロジェクトの一つに挙げられる。このモダンでラスティックなハンプシャーの農場にはレストランやデリ、ギフトショップ、講堂が入る。ニューベリー郊外、ウェセックス・ダウンズに位置し、コミュニティが集う場として認知されつつある。

<写真>ケンジントンのプロジェクトでデザインしたライブラリー。

Adam Lynk

現在進行中のプロジェクトは?

ローマに建てられた巨大な物件の修復・改装プロジェクト。それから、ドバイでは「地域の農業を支援するコンセプトストア」が進行中。さらに、英国内では1970年代に建てられたミューズハウス(馬小屋を改装した住宅)をよりサステナブルな手法を取り入れながらリノベーションしている。ウエストロンドンでは、この地域最大の室内プールを改装中だ。

TRスタジオによるコメント

「クライアントの日常をより豊かにする、考え抜かれた意味のある空間を創造する作業は、とても幸せな使命。優れたデザインとは単なる物理的な対象ではなく、ある種の感覚的存在であると考えてきました」

<写真>マルバリーズ・ファーム&ダイニングのダイニングルーム。

Kalina Krawczyk

TRスタジオによるアドバイス

TRスタジオが、自宅を過ごしやすい空間にアップデートする方法を教えてくれた。以下が、彼らが大切にしている「建築的原則」だ。

どんなに狭い場所でも無駄にしない。

階段下に収納スペースをつくるのは賢い選択。ただ既成概念にはとらわれすぎないで。こうした場所を、靴やコート、掃除機を隠すためだけに使う必要はない。バーを設えたり、小さなワインセラーを置いたりすることだってできるのだから。

同じ素材かつ異なる仕上げを掛け合わせて目を楽しませよう。

最近のプロジェクトで、キッチンに無垢材と溝彫り加工を施したオーク材を組み合わせて使用したところ、空間に見事なレイヤーが生まれた。

<写真>ロンドンのテラスハウスのためにデザインしたバーは、階段下にすっきり収まった。

Oculus Projects

家の中をいくつかのエリアに分けて考えよう。

これは、私たちがプロジェクトを進める上で起点としている考え方。光やテクスチャーを駆使して、あらゆるスペースのインパクトを最大化しようと試みている。最近手掛けたドバイのピラティススタジオでは、さまざまなドームやアーチ、それから間接照明を設置するための溝を設け、表面はすべてテクスチャー豊かなスタッコ仕上げとした。

光が当たることで魅力的な表情を見せる表面をつくる。

自宅のスペースを豊かなものにする方法のなかでも、これは失敗が少ない方法の一つ。現在取り組んでいるプロジェクトは、大きな天窓を複数設置しているが、光がもたらす効果を最大限に得るために、光を受けて際立つ曲線や壁との角度を常に念頭におきながら窓の位置を決めていった。

<写真>ドバイのピラティススタジオでは、奥に設置した鏡が空間を見事なまでに広く見せている。

Original Text: AMY BRADFORD Translation: CHISATO YAMASHITA

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