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「一回謝りに行こうかと思ってんだわ」…不良の先輩が語った山奥の“石碑”を踏みつけた過去と、今も続く忌まわしき“不運の連鎖”

  • 2026.8.15
写真はイメージです。提供:アフロ

北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、その大学の後輩である聞き手の映画ライター・加藤よしきさんをMCに、今年で10周年を迎えた人気怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。サクッと聞ける小話から、回をまたいでつながる長編まで、その怪談の種類は多岐にわたり、令和のホラーファンの心をつかみ続けています。

そんな禍話から今回は、怖いもの知らずの不良たちが恐れをなした、ある“石の塚”に関するお話をご紹介します――。


不良たちの“不謹慎”な行動から…

写真はイメージです。提供:アフロ

「――いやマジマジ。なんか、じいさんが急にキレて殴りかかってきそうな勢いだったんだよ。作業着の袖捲り上げてさ」

「普通、現場だったらそこは引くだろ? でも、K先輩は違ったんだな。聞かせてくれたやつ、再現してくださいよ!」

「めんどくせぇなぁ~」

「お願いします!」

「はぁ……『おっさん、今俺に手出したらどうなるか分かって言ってる? あそこに防犯カメラあるの、見えるよな? 今てめーがちょっとでも突き飛ばしたら、労災じゃなくてあんた個人の暴行罪だからな? 工期が遅れた違約金も全部あんた個人の口座から差し押さえて人生ごと詰ませるぞ、コラ。家族も一発で路頭に迷うんだよ。それでもいいなら、ほら、早く殴れよ』」

「えっぐぅ~! 殴らせて人生ごと終わらせるセットアップ!」

「穏便にすっとさ、後からグチグチうるせぇだろ、ああいうおっさんって。だから、最初にハッタリと逃げられない金のリスクで、精神的に潰しとくんだよ。あのおっさん、顔真っ赤にして周りに止められてたぜ。結局、後で謝りに来たけど、残りの仕事も全部こっちの言い値でやらせたわ」

平成の中頃。Iさんたち不良メンバーは、地元で働いている先輩のKさんを交えて家で酒を酌み交わしていました。

中学を停学になっただの、ゲーセンで金を巻き上げただの、果ては警察に追われたけれど振り切っただのと、次々と語られる不良自慢は彼らにとっては良い酒の肴でした。

「神様とトイレ我慢するのとどっちが大切なんだって話だろ」

「いや、だからって神社の鳥居にションベンすることねぇだろ! 祟られんぞ!」

「俺、前に賞味期限切れてないから大丈夫だと思ってお供えの大福食ったけど、普通に腹壊したことあるぜ。祟りじゃね、これ?」

「先輩も罰当たったことあるとか……?」

写真はイメージです。提供:アフロ

次第に彼らの話は“どれだけ自分たちが罰当たりなことをしてきたのか”という方向にシフトし始め、蒸し暑い夏の夜の熱気と相まって、そのボルテージはどんどんと加速していきました。

しかし、意外にもそんな盛り上がりに突如釘を刺したのは、一番年上のKさんでした。

「おい、ガチでああいうもんはふざけねぇ方がいいぞ。警察とか喧嘩売ってくるやつとかは最悪なんとかなっけどな、ああいうのはどうにもなんねぇからよ」

ボソリと呟き、タバコを吹かすKさん。

一同は水を打ったように静まり返り、返す言葉に詰まっていました。

学生時代からガタイがよく、不良たちの間では強面の喧嘩自慢として知られていたKさん。あまり冗談を言うタイプではなく、ゆえに彼がしゃべるときは空気がピリッと引き締まる。そんな先輩が“祟りにビビっている”とも取れる発言をしたのです。

「え……じゃあ先輩もなんかして罰当たったことあるとか……?」

「あるっていうか、まあ、まさに今だわな。不幸続きでよ。さすがに偶然とは思えねぇんだわ」

それは、4カ月ほど前の出来事だそうです。

当時、Kさんが交際していたAさんという女性と家でくつろいでいると、テレビでお花見特集をやっていたとかで、しつこく桜が綺麗に見えるスポットに連れて行ってくれとせがまれたのだとか。

当初は面倒臭いとあしらっていたそうですが、あまりにもしつこかったこともあり、『あー、連れて行くから』と言ってしまったのです。

“桜が満開になる展望台”へ

とはいえ、テレビで特集されているようなスポットは人混みだらけ。悩んだ彼は、友人に良い穴場を知らないかと相談したところ、『車で行けばそう遠くない山の上に、桜が満開になる展望台がある』という耳寄りな情報を手に入れたのです。

「で、俺の車で女乗っけて行ったんだよ。確かに人は少なくてよかったんだけどさ、展望台まで続いている遊歩道っつーの? あそこが草ボーボーで、しかも当日Aのバカがスカートで来やがってさ。足に草とか葉っぱが当たるのが嫌とか言い始めたわけよ」

Kさんは仕方なく先陣を切る形で草むらを進み、その後をAさんがついていく形になりました。

写真はイメージです。提供:アフロ

幸い、ザクザクと草むらを掻き分けていくと、数分で白いモルタル製の古びた展望台の下に出たそうです。

展望台には上へ登る階段がついており、Aさんは先導したKさんをよそに駆け上がるや、そこから見える桜の花々に感嘆の声を上げました。

「俺もいっちょ花見でもすっか、って階段を登ろうとしたときにさ、急にションベンしたくなっちまったんだよ」

辺りを見回しても公衆トイレのような場所はなく、Kさんは仕方なく彼女に用を足してから行くと告げて、近くの草むらに向かったのです。

「『音が聞こえないようにしてよね!』だの『せっかくのお花見が台無し!』だのうるさくってさ。さっさとさっきの草むらにまた入っていったんだよ、そしたらな――」

草むらの中にやたらと背の高い草が生い茂っている場所、正確に言うと少し盛り土のような、丘のような感じに地面が盛り上がっている一角を見つけたのです。

ちょうどその背の高い草の向こうで用を足せば彼女も文句を言ってこないだろう――そう思ったKさんはそそくさとその小さな丘の向こう側へ歩を進めました。

「おっと……んだよ、これ!」

つま先が何か固いものに当たる感覚。

Kさんがその形を足で踏みつけるようにして確かめ、そのまま視界を遮る草を踏みつけてどかしていくと、それは“小さな石碑”だとわかりました。

「I、お前付き合えよ」

写真はイメージです。提供:アフロ

「一瞬『マズ……』と思ったけどさ、誰も見てねぇし、そもそもこんな見えねぇ所に置くなよって話だろ。だからそのままそれ踏み越えてションベンしたんだわ」

「……それから不運が続いてるって感じなんすか?」

「……警察に切符切られたり、職場でミスったり、車ぶつけちまったり、現場で転んで手を怪我したりで散々だぜ。やっぱりバチが当たることしたらいけねぇなって思うよ、こうも続くとさ」

「はぁ……そっすか」

本音を言えば、あの強面のKさんのエピソードにしては肝っ玉が小さいというか、こんなことでそんなにビビる必要あるのかな……Iさんたちはそんな思いを抱いていたそうですが、続いてKさんの口から出た言葉に一同はさらに驚かされることになったのです。

「だからよぉ、俺お供え物とか持ってな、一回謝りに行こうかと思ってんだわ。あの石碑に」

「え、謝りにっすか?」

「おう。だからよ、I、お前付き合えよ」

フーッとIさんの顔面に吹きかけられるタバコの煙。

友人たちの顔を見回しても、皆視線を逸らすばかり。

「な?」

「……はい」

こうして、IさんはKさんと共に、後日その石碑のある展望台に赴くことになってしまったのです。

文=むくろ幽介

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