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【ニューオープン連載】西小山の商店街に誕生! 古民家改造した「ミチ」で味わう、イタリアン

  • 2026.8.12
HARUNA KAMIHASHI

ユニークなコンセプトととびっきりおいしい料理を提供しているお店が続々と誕生している東京のレストラン。その“今”をフードジャーナリストの佐々木ケイさんと高山裕美子さんが独自の視点で紹介する連載。個性派ぞろいのスペイン料理に続き、今回、ふたりが注目したのは居抜き物件をそれぞれのセンスで素敵に生まれ変わらせたレストラン。

2軒目は西小山の商店街にオープンした「ミチ」。懐かしい空間の店内では、自家製調味料から作る料理が楽しめる。

Photo : HARUNA KAMIHASHI Editor : SATOKO UDA

Haruna Kamihashi

昭和の看板を残して。古さとモダンが融け合う心地よい空間

数年前から西小山は、食シーンにおいて、隣駅の武蔵小山や中目黒・学芸大学といった賑やかなエリアとはまた一味違う、独自の進化を遂げている。「nerisa」や「winebar WEST」「caillou」など、有名レストランや人気店で実績を積んだ実力派シェフたちが、続々と西小山を自身の拠点として選んでいるからだ。

その理由は、昔ながらの商店街や住宅街の穏やかな空気感と近隣の感度の高い人が立ち寄る上質感が良いバランスで混ざり合っているから。それが、大人たちにとって居心地の良い街となっているのだろう。

そんな西小山に、またひとつ、注目の一軒が仲間入りした。駅からすぐの「西小山にこま通り商店街」を進むと、昭和の情景をそのまま残した建物に「たばこ 徳屋 日用雑貨」(とあるはずが……雑貨の字が落ちているのも、また味わい深い)と記された重厚な看板が立ち現れる。一目見ただけでは飲食店とは気づかない、さりげない佇まいだ。

4月29日にオープンした「michi(ミチ)」は、学芸大学の人気イタリアン「リ・カーリカ」を筆頭に、「あつあつリ・カーリカ」や「リ・カーリカ ランド」などの系列店で通算11年にわたり、料理人として研さんを積んだ伊藤和道さんの店。

Haruna Kamihashi

1階の外観部分はファサードを全面開放できる6面開きの窓になっており、木枠がダークトーンのため古い看板と自然と馴染んでいる。内装も落ち着いた雰囲気で、ステンレスなどの素材を組み合わせることでモダンさを演出。天井の一部が吹き抜けになっていて、むき出しの梁は、商店街の歴史を感じさせる趣だ。

古さを全面に打ち出さず、絶妙な塩梅で融合させている。「イタリアの街並みもそうですが古い建築物が好きで、最初から新築物件は考えていなかったんです。ここは建物の図面が残っていなかったので、床下を掘って水道管を探すところから工事が始まりました」と伊藤さんは笑う。

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まずは「カツ煮」から。型破りでやみつきになる酒場メニュー

「うちはレストランではなく酒場」と伊藤さんが言うように、オンメニューされているのは、ワインが飲みたくなるような料理の数々。

最初に「お待たせしないですぐ出せるもの」とおすすめされたのは、「イタリアンカツ煮」(¥1,600)。「リファッタ」というトスカーナ地方の料理がベースで、ここでは冷やしたものを提供しているため、オーダーするとすぐに出てくる。トマトソースが牛カツの衣と馴染み、冷菜感覚でクセになる味わいだ。

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前回訪れた際、3組中1組は頼んでいた「ポルペッティ(肉団子)とパリパリピーマン」(¥2,000)は、牛ネックと豚肩ロースの塊肉を粗挽きで2度挽きし、香ばしく焼き上げた肉団子に、煮詰めたバルサミコ酢の薄い衣がまとわされている。

噛むほどに溶ける圧倒的な肉感と華やかな酸味は、どこか「洗練された酢豚」を思わせ、24時間氷水につけた異次元のパリパリ食感のピーマンが、完璧な箸休めを果たしてくれる。

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変化球すぎて驚いたのが、「ほっけのマンテカート 揚げポレンタ」(¥1,800/写真上)だ。干し塩だらを使ってオリーブオイルと練り上げるヴェネチアの郷土料理「マンテカート」を、ここでは北海道産真ほっけで。

脂の多い魚である真ほっけが、まるで極上のムースのようななめらかな味わいに大化けしており、ほっけの新たな魅力に気づかされる。

Haruna Kamihashi

インドカレーからジビエまで。ジャンルを超える探求心が原動力

この自由な発想の原点は、伊藤さんの飽くなき探求心にある。前職の「あつあつ リ・カーリカ」や「リ・カーリカ ランド」時代には、ランチ用に本格的なインドカレーをスパイスから調合して提供したり(インドを訪れた経験あり)、アジアの発酵ソーセージからインスパイアされた発酵サルシッチャを開発したり、ジャンルを超えた食文化への好奇心を原動力に新たな味を生み出してきた。

「ミチ」開店までの1年4か月におよぶ準備期間中も、イタリア北部での滞在や、地方でのジビエ探求、レバノン料理への挑戦、他のレストランとのコラボ、ポップアップ、ケータリングなど多角的に活動。その濃密な体験と柔軟な視点が、現在の店づくりに活かされている。「ベースはイタリアンですが、“これがイタリア料理(?)”と思わせる自由な発想を大切にしたい」と伊藤さん。

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一から手仕込みする調味料が醸す、唯一無二の深みと余韻

「ミチ」の料理の核となっているのが、一から手仕込みされる自家製の加工品や調味料の数々。ビネガーやコラトゥーラ(魚醤)、アンチョビはもちろん、ンドゥイヤ(発酵ピリ辛ソーセージ)、塩レモン、からすみ、さらにはクルミのリキュール「ノチーノ」までもが手作りという徹底ぶりだ。

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たとえば、「プラムとトマトのマリネ」(¥1,200/前出写真右下)に使われているのは、昨年初夏に仕込んだ自家製のプラムビネガー。同じ生産者が育てたプラムとトマトを合わせているのだから、その相性の良さは折り紙付きだ。

また、「発酵青唐辛子と自家製魚醤のペペロンチーノ」(¥2,000)は、青唐辛子の鮮烈な辛みと魚醤のコクがやみつきになるパスタ。手間ひまかけて仕込まれた調味料が、料理に唯一無二の深みをもたらしているのだ。

合わせるワインは、イタリア産を中心とした自然派がそろう。体にじんわりとなじむナチュラルな味わいで、グラスワインは常時20種類以上を開栓。好みのタイプがなければ新しく開けてくれる懐の深さもありがたい。

ふらりと立ち寄れるカジュアルな酒場の装いながら、味わえるのは妥協のない本格派の料理。この気軽さと質の高さのギャップこそが、訪れた人を虜にして離さない「ミチ」の一番の魅力だ。

mici(ミチ)
住所/東京都品川区小山6-4-7
営業時間/火~土曜18:00~24:00、日曜14:00~24:00
電話番号/090-5137-7092
定休日/月曜
Instagram/@mici_nishikoyama

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