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名作家具やアートも登場、A24の新作映画『ドラマなふたり』のリアル過ぎるインテリアに注目

  • 2026.8.10
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気鋭の映画スタジオA24が手掛ける新作『ドラマなふたり』(原題:The Drama)が8月21日より日本で公開される。ゼンデイヤとロバート・パティンソン演じる、秘密を抱えたカップルの住まいはいかにしてつくられたのか? 本作のプロダクション・デザイナーが、セットデザインの裏側を語る。US版「エル・デコ」より

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同じ家で暮らし、人生を共にする相手の解答を、私たちは本当にどれほど知っているのだろうか? 8月21日より日本で公開される、クリストファー・ボルグリ監督作『ドラマなふたり」』(原題:The Drama)では、ゼンデイヤとロバート・パティンソンが、それぞれエマ・ハーウッドとチャーリー・トンプソンを演じている。文芸編集者とイギリス人ミュージアムキュレーターの2人による、一見パーフェクトなボストンでの暮らしは、ワインを飲みながら楽しんでいたディナーパーティのゲーム中、たったひとつの告白によって破綻してしまう。

ボルグリ監督の3作目の長編映画『ドリーム・シナリオ』で初めてタッグを組んだプロダクション・デザイナーのゾシア・マッケンジーは、準備期間が始まるほんの数週間前、2024年の夏に監督から電話を受けた。「とてもスピーディに話が進みました」とマッケンジーは振り返る。「私はすべてを放り出して、とにかくボストンへ飛んだんです」

マッケンジーは、ボルグリ監督や撮影監督のアルセニ・カチャトゥランとともにボストンへ移り、登場人物たちが実際にどのように暮らしているかを体感するためにロケハンを繰り返した。「本当に色々なアパートを見ました」とマッケンジーは語る。「一軒家も、ロフトも見ました。どんな可能性があるか、かなり柔軟に探っていったんです」

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理想の空間に行き着くまでのプロセス

しかしチームは当初から、理想の家が固まっていたという。天井高で螺旋階段があり、大きな窓から十分な自然光が入る、開放感のあるヴィクトリア朝後期のローハウス(長屋風住宅)だ。最終的に彼らは、造り付けの本棚とオリジナルのモールディングが残るバックベイ地区のローハウスに辿り着いた。しかし、見つけた時には実際に家族が暮らしていたため、一時的な引っ越しの交渉を行い、住人の荷物を片付け、塗装を施す必要があった。万が一に備え、他の候補地を探し続けながらの作業だった。「ロケーションマネージャーの交渉のおかげで実現しました」とマッケンジーは振り返る。この緻密な交渉のおかげで「最終的に、私たちが最初から思い描いていた通りの場所を手に入れることができたんです」

理想の空間を無事に確保すると、マッケンジーとセットデコレーションチームは、そこをチャーリーとエマの家らしくするために装飾を始めた。ミュージアムキュレーターであるチャーリーは、教養があり几帳面で「本当に良いものを少しだけ所有する」タイプの人物。そこでマッケンジーは、クラシックな家具で空間のベースをつくった。ケンブリッジにあるヴィンテージショップで「ノル」のソファを手に入れ、さらにはフェイスブックのマーケットプレイスを駆使して「ノル」のポロックチェアのペアを見つけた。そしてセットデコレーションチームは、ユニークな装飾品を求めてボストン市内やそれ以外の地域へと足を延ばし、アンティークマーケットや地元のショップ、遠くはケープコッドの販売者のもとまで訪れたという。さらに「Katherine Small Gallery」からはタイポグラフィやグラフィックデザインの本を取り寄せ、「Perrotin Art Gallery」をはじめとする一流ギャラリーからアートを調達していった。

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「作品の中で『偽物のアート』を使わないことが、私たちにとって非常に重要なこだわりでした」とマッケンジーは説明する。登場人物のチャーリーは、地元のアーティストに投資したり、ニューヨークで作品を購入したりしながら、個人コレクションを築く。そのため、アパートは彼のこだわりや関心が反映されたリアルな空間である必要があった。作品の中には、ほのかなメッセージが込められているものもあるという。例えば、暖炉の上に飾られているのはトリスタン・アンローの作品で、マッケンジーはこの作品を「支離滅裂な人物像」と表現しており、映画の後半で崩壊していくチャーリーの姿を密かに象徴させている。

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プロダクションチームはこの家を主導したのはチャーリーだと想定して、空間をつくり上げた。「あの部屋は元々チャーリーのアパートだったという設定です」とマッケンジーは語る。「エマが引っ越してくる前から、彼はそこに長く住んでいたんです」。そのため、家の中におけるエマの存在感はより控えめで、彼女が勤める架空の出版社「ミッション・パブリッシング」のロゴが入った本などを通して、ひっそりと空間に織り込まれた。「気づいてくれる人がいるかはわかりませんが、さり気ないこだわりを持たせました」

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インテリア好きであれば、よく見ると他にも隠されたディテールに気づくはずだ。リビングのランプは左右でデザインが揃っておらず、ダイニングチェアのうち2脚は他の椅子と異なり、サイドテーブルも左右非対称になっている。これらはすべて意図的なものだ。

「一見整っているけれど、ほんの少しだけ狂っている」。マッケンジーが語るその「綿密に計算された不完全さ」が、デザイン全体に貫かれてる。彼女はアパートの表面上を洗練され整然とした空間に仕上げることで、やがてそこを満たしていく感情的なカオスとの対比を生み出そうと考えたのだ。

しかし、こうした密かな伏線があるにもかかわらず、マッケンジーが映画のためにつくり上げたアパートは、今どきの若きカップルが「本当に住みたい」と思えるような空間に仕上がっている。センスの良い本を読み、センスの良いヴィンテージショップで買い物をするような人物の「憧れの我が家」そのもの。だからこそ、その空間が崩壊していく過程を見るのは、これほどまでに居心地が悪いのである。

Original Text:Julia Cancilla

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