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「カーサ キャバン ハヤマ」パトリシア・ウルキオラが手掛けた美しい葉山の海を望むホテル

  • 2026.8.7
JUNPEI KATO

パトリシア・ウルキオラが日本で初めて全面監修したホテルが葉山に誕生。海と空、異文化とクラフト──。彼女は、この地でどんな夢を描いたのか。

『エル・デコ』2026年8月号より。

JUNPEI KATO

異文化間で交わされる、奥行きのある対話を形に表す

目の前に広がる青々とした大海原の先に見える名峰・富士。三浦半島の絶景を独り占めする海岸沿いに全14部屋の宿泊施設「カーサ キャバン ハヤマ」が2026年3月に誕生した。この施設のデザイン監修を担当したのは、世界の名だたるブランドと協業しプロダクトを手掛けるデザイン界のトップリーダー、パトリシア・ウルキオラ。構想するに当たり、まず彼女が意識したのは、初めて現場を訪れた時に感じた土地が醸し出す空気感。そして思わず息をのんだという感動的な風景だった。

「葉山は観光地というよりも、ゆったりとした時間の流れの中で、穏やかに住み暮らす人が多い。さらに、夕暮れの海を眺めていると、静かな青に明るい金色が混じり、鮮やかなローズカラーが海原を染め、キラキラと光り出す。いるだけで自然と心が休まる。そんな感覚を空間に描きたいと思ったのです」

街の風景になじむことを意識したシンプルなファサードを抜けて建物の内部に足を踏み入れると、ソファやテーブル、照明はもちろん、ラグやテキスタイル、壁面タイルからアートまで、空間を彩る全てのアイテムが見事に調和しながら、特別なひとときをつくり出していることがわかる。

このように多様な要素を巧みに組み合わせながら一つの世界観に集約するためにウルキオラが軸に掲げたコンセプトが、「Weaving(編み込むこと)」だ。

<写真>チェックインレセプションを兼ねたラウンジ。家具は「カッシーナ」を中心に、特注で仕上げたものを配置。竹を格子状に編んだ天井の意匠は、日本の職人が手作業で丁寧に組み上げている。

keiko ichihara

「丁寧に素材を選び抜き、カスタマイズしながら編み物のように絡めとり、建築として立ち上げていく。日本の職人技とイタリアのものづくり、東洋と西洋の意識など、異文化の間で交わされる豊かで奥行きのある対話を空間で表現したと言っても過言ではありません」

ウルキオラの熱い思いの裏には、ホテルのオーナーであるトゥモローランド創業者、佐々木啓之との長年にわたる交友関係が影響している。2人の出会いは、およそ30年前。共通のテキスタイルデザイナーを通じて、まだ無名だったウルキオラに佐々木がショップのインテリアデザインを依頼したことがきっかけだった。「少年のように純粋な感性と自由でおおらかな人柄がすてきな佐々木さん。彼のたゆまぬ好奇心と探究心が、あらゆる活動を芸術の領域へと導いていく。このホテルは私たちの親交の証しであると同時に、共に目指す新しい夢の実現でもあったんです」

世界の才能が集結するイタリアでキャリアを築いたことで、相手の視点や状況を捉え、総合的に編集していく力を身につけたと話すウルキオラ。佐々木と顔を突き合わせて対話を重ね、構想からおよそ9年をかけて完成した「カーサ キャバン ハヤマ」は、ウルキオラの思想と経験が凝縮されたプロジェクトと言えるだろう。

<写真>手前に見えるソファは「カッシーナ」のために手掛けた“セングウ”。神社の、社殿の修復・建て替えを重ね、神の居場所を受け継ぐ“遷宮”を意識し、社殿の構造や循環の精神をデザインに映した。

JUNPEI KATO

再生ポリエチレンを用い、インドネシアの職人が手編みで製作したルーバー。ニットの製作からスタートした「トゥモローランド」の歴史も感じさせる意匠。

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水面に墨を落としできた模様を紙に写す「墨流し」から着想した柱。青緑色の濃淡が空間を美しく彩る。

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海に面したレストランの床には、夕日の赤や海の青、植物の緑など自然豊かな葉山のカラーパレットを映したタイルを使用。ランダムに張ることで、葉山の景色を空間に取り込んだ。

JUNPEI KATO

客室に飾られた不思議な姿をした生き物の陶板も、ウルキオラの作品。

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エントランスに飾られたCCタピスの“クリプティッド”。このグラデーションは葉山で見た風景そのものだとウルキオラは語る。

JUNPEI KATO

地下から1階へとつながる内階段の壁面も独自のカラーパレットで展開。

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テラス付きのキャバンスイートは広さが173㎡もある最上クラス。柔らかな座り心地のソファ“モン クラウド”や花占いをテーマにしたラグ“マーマ・ノン・マーマ”がゆとりをもたらす。

JUNPEI KATO

キャバンスイートのベッドルーム。CCタピスのラグのカラフルなパターンが内階段の壁とリンクしているのも面白い。

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ラウンジと直結しているプライベートプール。開放的なテラスとプールの先には海岸線が広がっている。アウトドア家具はスペインのブランド、「ケタル」のアイテムを中心にセレクトした。

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アーモンドの殻をモチーフにした「フロス」の照明“アルメンドラ”から漏れ出る光が、バーカウンターを印象的に照らしつつ、壁面に施したタイルの豊かなテクスチャーを引き立てている。

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Casa CABaN HAYAMA

住所/神奈川県三浦郡葉山町堀内955-2
全14室 2名利用の1室料金(夕・朝食付き)
料金/¥235,290~(税・サ込み)
※料金は2026年7月時点のもの
tel. 046-895-0228

keiko ichihara

Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)

建築家・デザイナー。マドリード工科大学とミラノ工科大学で建築を学ぶ。アッキーレ・カスティリオーニなどに師事後、2001年ミラノにスタジオを設立。15年よりカッシーナのアートディレクターも務める。

Photo : JUNPEI KATO, KEIKO ICHIHARA
Text : HISASHI IKAI

JUNPEI KATO

『エル・デコ』2026年8月号

Right Photo:Nicola Carignani

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