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後輩の一皿に拍手が集まった帰り道、幹事の私は彼女に助手席を譲った

  • 2026.8.11
ハウコレ

拍手を集めたのは、任せきりにしていた後輩の一皿でした。部長は席を立ち、肉をどこで用意したのか後輩に聞きました。解散の間際、私が口にできたのは一言だけでした。

気が利く後輩だから

課の親睦BBQの幹事を任されたとき、真っ先に頭に浮かんだのは後輩の顔でした。細かいことによく気づく子で、頼んでも嫌な顔をしません。買い出しも設営も任せてしまえば、幹事の仕事はほとんど残りません。私自身、後輩のころは同じように動いてきました。だからこれは指導のつもりでもあったのです。当日、網を代わってほしいと言われたときも、深く考えずに笑って返しました。

「後輩なんだから当たり前でしょ」

彼女は軍手をはめ直して、焼き場へ戻っていきました。

薄い肉への不満

肉には、内心不満がありました。渡した予算のことは頭から抜けて、口をついたのは責める言い方です。

「もっといい肉、買えなかったの?」

彼女が何か説明していましたが、隣の先輩との話を優先して、最後まで聞きませんでした。幹事の椅子に座ったまま、私は焼けた肉を受け取るだけでした。焼き場に戻る背中を見ても、悪いとは思っていなかったのです。彼女が何度かクーラーボックスを開けて確かめる様子も、気に留めていませんでした。

見たことのない一皿

終盤、彼女がクーラーボックスから包みを取り出しました。切り分けられていくのは、塊から火を入れたローストビーフ。皿が回るたびに歓声がわき、部長まで席を立ちました。

「この肉、どこの?」

「実家で、朝から仕込んできました」

駅前の精肉店の名前を、部長は知っている様子でした。さらに同僚の一言が続きました。

「準備も買い出しも、全部彼女がやってくれたんですよ」

拍手が起きたその中心に、幹事の私はいませんでした。隣の先輩と目を見合わせて、手にしていた紙コップを卓に置きました。

そして...

片付けの間、彼女への謝り方をずっと探していました。解散の間際にようやく出てきたのは、謝罪になりきらない一言です。

「次は、私も仕込みから入れて」

彼女は少し間を置いて、首を縦に振りました。帰りの車で、行きには当然のように座っていた助手席を、彼女に譲りました。あの拍手を、今度は準備する側で聞いてみたいと思っています。

(30代女性・事務職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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