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「もうお腹いっぱいでしょ」勝手に彼女のパスタを食べる彼氏。だが、黙っていた彼女が店員に頼んだもの

  • 2026.9.23

自分の皿を空けて、向かいの皿へ伸びたフォーク

五十代の私は、そのころ小さな飲食店でホールの仕事をしていた。平日の夜、店内は半分ほど埋まっていた。

窓ぎわの二人席には、二十代後半くらいのカップルが座り、それぞれ別のパスタを注文した。

料理を運んでしばらくすると、男性は自分の皿をきれいに空けた。そして何気ない様子で、向かいに座る彼女の皿へフォークを伸ばした。

最初は一口だけ味見するのかと思った。ところが男性はパスタを巻いて口へ運ぶと、少ししてまたフォークを伸ばした。

彼女はまだ自分ではそれほど食べていない。

フォークを持ったまま、男性の手元を見ていた。

ほかの席の皿を下げていると、男性の声が聞こえた。

「もうお腹いっぱいでしょ」

彼女は少し戸惑ったように、「え…」と男性を見た。

男性は気にした様子もなく、「ちょっともらうね」と、またパスタを口へ運んだ。

しばらくすると、男性は残っているパスタを見ながらもう一度言った。

「ほら、もうお腹いっぱいなんでしょ」

彼女は返事をせず、自分の皿を見下ろした。

私は心の中で、それはあなたが食べているからでは…と思った。

ただ、お客様同士のやり取りに店員が口を挟むわけにもいかない。

水のピッチャーを持って、二人の席へ向かった。

彼女が頼んだ一枚の取り皿

グラスに水を注いでいると、彼女が私を見上げた。

「あの、すみません」

「はい」

「取り皿、一枚もらえますか?」

「もちろんです。少々お待ちください」

厨房の脇から白い取り皿を一枚取って戻ると、彼女は「ありがとうございます」と受け取った。

そして、自分のパスタを数口分だけ取り皿へ移し、男性の前に置いた。

「食べたいなら、こっちにして」

男性が少し驚いた顔をした。

「え?」

彼女は自分の皿を手元へ引き寄せる。

「私もまだ食べるから」

「まだ食べるの?」

「うん。まだ食べてる途中だよ、ちょっと図々しいよ」

彼女がそう答えると、男性は一瞬黙ったあと、「あ、ごめん」と小さく言った。

それからは取り皿に分けられた分だけを食べ、彼女の皿へフォークを伸ばすことはなかった。

彼女もようやく、自分のペースで残ったパスタを食べ始めた。

食事を終えて会計を済ませると、男性が先に店の外へ出た。

彼女もあとを追いかけようとしたが、入口で一度こちらを振り返った。

「さっき、取り皿ありがとうございました」

「いえ、とんでもないです」

彼女は小さく頭を下げて、店を出ていった。

私は頼まれた取り皿を一枚運んだだけだった。それでも、自分がまだ食べたいことを相手にはっきり伝えるきっかけにはなったのかもしれない。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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