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「湘南乃風に憧れて」観客大盛上がりの“タオル回し”に、ラッパー顔負けの高速歌唱まで…さだまさし(74)のアグレッシブすぎる現在地

  • 2026.8.7

さだまさしソロ活動50周年、だけではない!?

さだまさしさん。紫のシャツがとってもオシャレ。コンサートの服装も毎回とてもオシャレだ。メガネ族の私としては、彼のメガネのブランドも気になる。©文藝春秋

さだまさしさんが、今年でソロ活動500周年だ。おっと違う違う、50周年だ。さださんほど「生まれる前から曲を聴いていた」感がある歌手はなかなかいない。「案山子」なんて前世から知ってる気がするもの。

50年前、さださんの1976年はまさに激動の1年だった。1973年グレープというフォークデュオでデビューし、人気絶頂の1976年4月に解散(※2023年から本格的に再始動)。そこから半年の休養を経て、同年11月にソロデビュー。まさに人生のターニングポイントだったのだ。

一時は歌手以外の職業を考えたそうだが、周囲に全力で止められたおかげで、今では日本全国誰もが知っているレジェンドアーティストだ。

特に、50歳以上の方に「さだまさしさん好き?」と聞くと、「さださんね……」と、空を見て、微笑みを浮かべる人の多いことよ――。必ず、独特のシンキングタイムが入るのだ。多分、脳内で、様々な楽曲が流れているのだろう。とにかく、やたら人を遠い目にする魔力の持ち主。それがさだまさしなのである。

さだ楽曲を好きな人はもちろん、苦手な人もその1曲1曲の思い入れが底なし沼のように深い、というのが興味深い。「さだまさしとは、さだまさしの楽曲とはなんぞや」とトコトン専門的に掘り下げたくなる猛者も多く、なんと、全国各地の大学には「さだ研」と呼ばれる研究会まで存在する。さらには近年、シニア男性を中心に新規ファンクラブ入会が増えているというではないか。

なるほど……。これは心してかからねばならない。まずは現地調査に行かねば――。

ということで、私は7月19日、太陽が照り付ける中、コンサートツアー2026「神さまの言うとおり」に参戦すべく、大阪フェスティバルホールに向かった。

さだまさしは追い詰められてパワーが増すタイプ?

ダンディーかつ最高のスマイル! ギターたちまで「さださん素敵♪」と見つめているように感じる素晴らしい写真である。©文藝春秋

会場はぎっしり満員である。さださんを数十年単位で応援している筋金入りのファンの方も多く、年齢層は比較的高め。そのため、基本は座って聴くスタイルなのだが、皆さんおっとり静かなのかと言われれば全くそうではない。

幕が上がり、さださんが登場すると、会場のボルテージ、いや、ボルテージというより生命力がガッと上がるのがわかる。しかも今回は1曲目からアップテンポな「長崎小夜曲」が流れたものだから、立ってペンライトを振っているお客様もいる! 「さださーん!」「まっさーん!」という声が飛ぶ! クッ楽しい。予想以上にアグレッシブーッ!!

今回は、5月13日に発売されたばかりのオリジナルアルバム「神さまの言うとおり」を引っ提げてのツアーだ。このアルバム制作が、そりゃもうとんでもなく大変で、元旦の時点では、1曲も完成していなかったのだという……。ひー(震)! 焦り&ビビりな私は想像しただけで卒倒しそう。その頃のさださんのインスタを遡ってみると、どれも穏やかな笑みを浮かべておられる。実際頭の中は「アルバムどうしようどうしよう(汗)」状態だったのか……と思うと、なんとも趣深い。

しかも、いざ出来上がったら名盤。どの曲も本当に素晴らしいのだ。さださんはグレープ時代、一晩で6曲を書いたという逸話もあるし、追い詰められてパワーが増すタイプなのかもしれない。

苛立ち言葉のご参考に!?「身も蓋もない BOOGIE-WOOGIE」

2026年5月13日発売の「神さまの言うとおり」(発売元/ビクターエンタテインメント)

収録曲の中でも、特に「身も蓋もない BOOGIE-WOOGIE」は、1番の歌詞は褒め言葉、2番は身も蓋もない本音のオンパレードで構成されている。

コンサートでも披露されていたが、言葉がスーパーボールみたいに跳ねている感じで躍動感がハンパない!

さださん曰く、2番の言葉は、昨今SNSでよく流れる「クソ」という言葉に憤慨し、そんな汚い言葉など使わずとも、苛立ちの言葉の種類はこんなにある! と挙げていったそうだ。その勢いたるや、リズムは早いし言葉数は多い、そんじょそこらのラッパーにも負けていない! いやもう74歳でこの体力とこの気力はすごい。

MCも「黙ったら死ぬ」くらいの勢いでよく話される。トークアルバム「歌ってはいけないCD」まで出されているほど、話術の巧みさは有名なのだが、生で聴くと圧倒される。ツアーのこぼれ話や最近の日本について、おすすめの作家、大ヒット曲「雨やどり」の重要ポイントなど、スラッスラとユーモアたっぷり、よどみなく話される。私など、50代で既に固有名詞がほぼ出ず、話が「あれがあれでそれ」状態なのに!

あの恐ろしいまでのトーク力、どこか国家機密的な特別組織で訓練を受けているのだろうか。ヒントを探しにインスタを見ると、私が参戦した大阪フェスティバルホール1日目が、4761回目(!)のコンサートであることを知った。

なるほど。その回数を見て、私は胸がいっぱいになった。さださんの話術は持って生まれた資質に加え、「5000回近いステージ」という、想像を絶する経験が合わさった賜物なのだ。

まさかのあの曲で夏フェスばりにタオル回し!

いきなりだが、若かりし頃、とても厳かな環境で歌っていらっしゃるさだまさしさん。©文藝春秋

さらに驚くべき報告が。なんと今回のコンサートで、ノリノリの夏フェスにありがちなタオル振り回しがあったのだ! これを読んでいるあなた、今、

「さだまさしの歌でタオル回せる曲ある?」

と思ったのではなかろうか。わかる。私もさださんがおもむろに、

「以前共演した湘南乃風がやっていたタオル回しに憧れてね、やってみようと」

と言い出したときはビックリした。しょしょ湘南乃風!? 「睡蓮花」的な歌が来るのか? カバンの中から「さだまさし手拭い」を取り出し、オロオロしながらどの曲が来るのか待った。

すると響いてきたのは、歌詞を知らずとも誰でも一緒に歌える、有名すぎる某ドラマ主題歌――。タイトルは伏せるが、とにかく約3分間、さださんも我々観客も歌いながら、オリャオリャとタオルを回したのだった。湘南乃風ほど速くはないが、独特で、唯一無二の一体感を味わった。しかも意外なほどの運動量! 途中、さださんからの

「時々(タオルを回す)腕を変えてくださいね。痛くなりますから」

という声掛けがあったが、通路を挟んで向こうのマダムたちが、とても元気にタオルを回し続けているのが目に入り、私も負けてはならぬと、腕を変えず手拭いをオリャオリャ回し続けた。

2日後(←次の日じゃないのがまた……)に筋肉痛になったのは言うまでもない。

幸せになる約束の言葉

いきなりだが、若かりし頃、立川談春師匠と談笑するさださん。お二人とも、リラックスモード全開。どんなシチュエーションでの撮影だったのかすごく気になる。©文藝春秋

コンサートの最後、歌われたのは「神様の言うとおり」。ステージの端から端まで、靴に羽が生えたようにステップを踏みながら、さださんは歌う。

まるで、やさしいおまじないのようで、「神様は、言葉に棲んでいるのかもしれないなあ」と思ってしまった。

日本の言葉はたくさん種類があって、とても美しいものなのだ。セットリストには「防人の詩」など、命を思わせる楽曲もあり、美しいからこそ心に突き刺さった。

コンサートが終わり、会場が明るくなったあとも、頭の中で感情がドラム洗濯機のように回り続ける。現地調査など息巻いたが、調査どころではなく、ひたすら心が動かされ時が過ぎた。アグレッシブすぎた、さだまさし!

ただひとつ、確信したことがある。「これからも、彼の音楽に驚かされるだろう。※永遠案件」。これを、今回の報告の締めとして書き記したい。

ということで、長期的調査に向け、態勢を整えねば。よし、さっそくタオル回しの自主練を始めるか――。

田中 稲(たなか いね)

ライター。WEBを中心に、昭和歌謡、J-POP、世代研究、映画・ドラマの記事を執筆中。感動したら即行動をモットーに、50代半ばから、コンサートレポート、インタビューにも走り回るようになる。
著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社)がある。
執筆協力も、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(じっぴコンパクト新書)『時代小説・時代劇がよくわかる剣術・剣豪と刀[本/雑誌] (じっぴコンパクト新書)ほか多数。
X:@ine_tanaka

文=田中 稲

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