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映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』重岡大毅が語る「人間らしさ」を失わないことへの願い、俳優としての現在地【ロングインタビュー】

  • 2026.9.7

重岡大毅を俳優として強く印象づけた映画を挙げるなら、『溺れるナイフ』を外すことはできないだろう。山戸結希監督による青春映画において、重岡は高校生男子の朗らかさと影の二面性をまとう演技を披露し、観客を物語に引き込んだ。あれから10年。今度は主演として、再びギャガ配給作品『5秒で完全犯罪を生成する方法』へ帰ってきた。

本作は、重岡演じる初海航が妹の犯した罪を生成AIの力を借りて隠匿しようと奔走する、オリジナルストーリー。急速に力を増し、重岡の言葉を借りるならば「もはやインフラとなってきた」生成AI。荒唐無稽と笑い飛ばせたのは今や昔、さもありなんというサスペンスフルなこの内容に、背筋が凍る思いをする観客が後を絶たないはずだ。

アーティスト(WEST.)でありながら俳優としても頭角を現している重岡にとって、俳優業の立ち位置とはどういうものだろうか。重岡の役への理解や深め方などの対話を重ねるうちに、あっけらかんとした明るい物腰に潜むひたむきな努力が浮き彫りになるようだった。ロングインタビューで、彼の現在地を探った。

これからさらに利用も増えていくのではと思う生成AIにまつわる映画でした。オリジナル作品ですが、脚本を読んだときはどのような気持ちになりましたか?

最初に読んだときは、とにかくワクワクしていました。(配給の)ギャガさんはもともと僕が『溺れるナイフ』という作品でお世話になっていたんです。あの作品のおかげで、今の僕があるようなところも本当に多いにあるので。

名演でしたよね。

いやいや! あのときは、本当に何が何だかわかっていなかったんです。……今もかもしれないけど(笑)。いろいろな作品に出させてもらうときに、多くのスタッフさんに「『溺れるナイフ』を観て一緒にやりたいと思ったんです」と言っていただいたり、現場で一緒になる共演者の方からも感想を言っていただいたりしました。俳優としてのきっかけの作品の一つとなったギャガさんと、また一緒にできるということが大きかったです。あと、脚本の岡田(道尚)さんも以前お世話になっていた方でしたので。

それらが前情報としてあったから、台本をとにかくワクワクしながらラストまでぶわーっと一気に読みました。生成AIと犯罪というリアルで不気味なテーマをはらみつつも、ちゃんとエンタメとして昇華されている作品だったので、「やろう!」と思いました。すごく面白いかもと思ってやったんですけど、そこから……泥沼にハマっていきましたね(笑)。

泥沼ですか!最初の泥沼は何でしたか?

僕が演じる航の妹・幸来(原菜乃華)が予期せぬ殺人を犯してしまうんです。妹に呼び出されて何だろうと行ったら、人が死んでいるという。普通はまず「警察!」となるじゃないですか。それを警察に通報なしに、生成AIを使って隠匿しようとしてどんどんエスカレートしていくんです。第1稿目から「おっと!結構大変な扉を開いてしまったのでは、この役は」と思ったんです。

惹き込まれて読んだ脚本でしたが、いざ自分が演じるとなったら挑戦的な部分があったと。

「僕めっちゃエンタメとして読んでたわ」と思いました。お客さんとして普通に楽しんで読みすぎてしまっていましたね(笑)。だから、いざ自分でやるとなると、「あーっ!あっちゃー!」という状況とでもいうか。

役作りはどう取り組んでいきましたか?

とにかくノートにめっちゃ書きました。たまに旅先に行ったら、「みんな好きに書いていいですよ」みたいなノートがあるじゃないですか。文字の濃淡も大きさも、言語も違って、いろいろな言葉が書いてあるでしょう?僕のノートはいうならば、あれがギュッとなった1冊みたいな感じでした。今日、取材があるから久しぶりに開いたんですよ。ノートには、そのときの自分がハッとなったことを書いていたりしました。今見ても、何のこっちゃわからない文字もあるんですけどね(苦笑)、いろいろなことが書いてありました。「完全犯罪」、「航教えて~」、「怖い!」とか書いていたりもしました。見たけどすぐ閉じて「うーん、やだ!あのときに戻りたくない!」となりましたね(笑)。

ノートに書く役作りは、どなたかのアドバイスを受けてやったんですか?

全然です。普段からメモ帳を持ち歩くことは、結構あるんです。鉛筆で歌詞を書いたりしていて。今回は書き始めたら止まらなくなって、とにかく書いていました。何となく手書きで書くという行為が、全身で向き合っている感じがしたんです。自分の中のまだ言葉になっていないモヤモヤみたいなものを、0から1にする作業という感じでした。

振り返っても「書くっていいなあ」と改めて思いましたね。今回やることで、手書きに対してのディティールが細かくなったというか、解像度が高くなったと自分では思っているんです。今後も例えばお芝居だったり、何かクリエイティブなことをするときは、手書きは僕の心強い手段の一つになるなと思っています。ただし、今回は書きながら納得するまで自分をねじ伏せたという感じでした。

ねじ伏せるとは、航の心情や行動に説得力を持たせて演じるために納得することが必要で、手書きのノートがとても助けになったということなんですね。

航の大切なものを守りたいという入り口はわかりますし、それは誰もが一緒だと思うんです。そこから選択肢は無限に広がっていくじゃないですか。それが結構大変やったかな。例えば正論をぶちかますと、警察に行き、更生しようと頑張る妹をそばで見守る、という。寄り添って一緒にいるのが、一番あるべき兄の姿じゃないですか。そこで隠匿しようとする行為が……。そもそもまず僕に妹がいたとして、同じ状況になったらどう思うのかとか、いろいろな角度から考えました。でも考えれば考えるほど……うーん……。

なので、航自身もめちゃくちゃ揺れていたんだと思うんです。いろいろな可能性をずっと両手いっぱいに抱えながら歩き続けていたような気がするんですよね。「今だったら自首できるんじゃないか」と思ったりもするだろうし、状況が息つく間もなくどんどん変わっていったので、とにかく揺れまくるという感じに僕は見えて。それでも何か大切なものを守りたいことがあるので、その一筋の光を何とか見逃さないようにという感じでいましたね。結構エネルギーがいったなあ。

重岡さんは、すごくエモーショナルにお芝居をする俳優というイメージがありましたが、今回はかなりロジックを組み立てて、テクニカルな部分を優先したのですね。そうした芝居を学んだ意識もあったんでしょうか?

ありました。最初に近藤(亮太)監督が伝えてくれたことですごく印象的だったのは、「やっぱり人だから、こうした異常に思える状況にも適応していくと思う。だから、兄妹でしゃべるところの会話は、ずっと重苦しく“どうしよう、どうしよう”という空気ではなくて、普段の兄妹の日常会話として成立していてもいいんじゃないかな」と。そのお話で、僕の中のちょっともやっというのが晴れたんです。この監督が率いるチームと一緒にやれるわけなので、僕もそこに従って吸収しながらやろうと思っていました。もちろん自分が思いつくことができることはやるのが大前提ですけれど。

総じて、とても難しい役柄に挑戦した本作でしたが、振り返って役者として楽しかったという感慨や、やってよかったという思いになっていますか?

もちろん、もちろん!やってみて「やらなかったらよかったな」ということは、ほとんどないと思うんです。みんなもきっと、そうですよね。後悔って、なくないですか?

そもそも、こういう役がやれてよかったという気持ちももちろんあるけれど、何より僕はやっぱり人と仕事をしたいんです。今回、完全なオリジナル作品で何とか大事に育ってきた企画で、それをみんなで「いいものにしよう!」と製作が始まっていって……。僕はその熱量の中に招き入れてもらえた、という感覚なんです。これがやっぱり何より醍醐味だと思っています。そういう人たちの熱量に巡り会えて僕はうれしかったですし、そういうことを大事にしています。

本作の生成AIに代表されるように、映像制作や音楽制作などでもテクノロジーの活用は進んでいますよね。重岡さんは仕事におけるテクノロジーをどう捉えていますか?

テクノロジーは正直、怖いなと思っています。時間をかけて培った技術に価値がなくなっていくんじゃないかなと感じてしまうので。例えば、音楽や映像の制作にしても、信じられないくらい本物のような作品を、誰もが一瞬でできてしまう時代だと思うんです。今後ますます加速していくだろうし、止められる術がないような大きな流れだと捉えています。

そんな中で、自分の活動で言うと僕は作詞作曲をしたりするんですね。今後続けていって、果たして価値が合うのかなという、そこの問いみたいなものがあるのかもしれないですよね。ただ、僕たちが届けたいと思っていて、僕たちの活動を見てくれるお客さんは、僕らの技術を見たいわけじゃないんだろうなとも思うんです。生成AIでは作れない、技術だけじゃないものをやっぱり意識しているかなあと思っています。

生成AIに負けないモチベーションと言いますか、生身の人間としてどう価値を発揮していきたいと考えているのでしょうか?

曲作りの話を例に出すと、量をこなすことは20代のときが最強かなと僕は思っているんです。もともと量か質かみたいな話があると思うんですけど、量をこなすから質があると思っているんですね。これは僕の好きなボクシングの選手もよく同じことを言っていて、「いいからとにかくやれ」と(笑)。量をこなしていないのに、質も何もあるかいな、経験を詰めと。それで言うと、僕は20代のときに曲作りの量をこなせなかったので、自分に圧倒的に経験が少なく、30代の今足りないと思っているんです。それが呪いのようになって、今自分にふりかかっているというか。

この戻ってこない時間を、僕は今、曲作りに投資しようとしているわけです。でも時間をかけて培った技術には、価値がなくなるかもしれないじゃないですか。そう思うと、自分はたぶん技術が欲しいんじゃなくて、自分に自信が欲しいだけなんだなと。過去にできなかった自分にリベンジしたいだけなんです。それがたぶん胸を張れる自分だから、そうありたいと思ってやっているんですよね。

生成AIはコスパ・タイパですぐに価値を出せてしまうけれど、経験を積んでいくことが自分の血肉になるので大事ということなんですね。

そうです。だから、一見無駄に思えるようなことが意味を見いだした瞬間に輝き出すんじゃないかと思っています。そういう輝きを僕は自分も見たいなと思っているし、自分にもその輝きが(あると)信じたいし。それがむしろエンターテインメントで、生成AIには絶対作り出せない人間らしさそのものになるんじゃないかな、と思っています。

例えば無駄な部分が思い出になったりもしますし、そこがエンターテインメントの価値になるんですね。

そうですね。これはね、身をもって常々感じていますね。これまで続けてきた活動でも、結果だけじゃなくてその過程にもちゃんと意味があって、その時間が輝いて見えるというか。これは僕の好きな「HUNTER×HUNTER」で冨樫(義博)先生が描かれていることでもあるんですけど、「なるほど、わかるわ!」と思いました。

グループや音楽活動のお話がありましたが、俳優業についてはどう考えていますか?

俳優業に関しては、音楽活動とはまたちょっと違うかもしれなくて、あまり一喜一憂しないようにしているんです。やれることをやったと思えたらそれがすべてで、あとはなるようになると思っている、という感じです。俳優として自分に声がかからなくなったらそれは終わりだし、お声がけいただけたら、お話したように熱量のある人と出会えることがうれしいですし。そんな出会えるきっかけがあるなら、ぜひやりたいという感じです。

『5秒で完全犯罪を生成する方法』は今回、富川国際ファンタスティック映画祭に正式招待していただいたりしましたよね。そういうことは、めっちゃくちゃうれしいんです!これも誰かと喜ぶから楽しかったりするし、そこまでの道草が結果一番求めていたものだったりもするじゃないですか。今ここからどうなっていくかなあと、楽しみです。

俳優という仕事、演じることや違う人物になって表現すること自体は楽しいことですか?

めっちゃ楽しいです。正直、お芝居は自分の精神安定剤にもなっています。僕はステージが本業なんですけど、ステージだけだったら息が詰まったりするときもあるので。お芝居はお芝居の自分として立てる場所があることが、すごく安定につながっています。逆を言えば、お芝居だけでも心が詰まっちゃうし、そのときはステージがあると思うんです。そうして「帰る場所がある」ことが、1個僕のアクセルの踏み方になっているかもしれません。「いてまえ!えい!」という感じになれるというか。戻る場所があるからこそ、ちゃんと戦えるようになっているのかもしれないです。

俳優としてさまざまな経験を積まれていますが、ご自身の成長に関してはどんなときに感じられていますか?

どうだろう……。過去の「この作品を観ていました」と声をかけていただけるのは、やっぱりすごくうれしいことです。続けていないと、それは訪れないですから。何事も長く続けるのは大変じゃないですか。だって、お仕事、大変ですよね? 長く続けているから、こういうちょっと心が癒やされる瞬間に出会えると思うんです。そういうときに決まって思うのが、「もうちょっと頑張ってみよう」と。その頑張ってみようの気持ちがきっとまた成長につながるのかな、まだ成長できるのかなと思ったりしています。

ありがとうございました。最後に、本作をこれから観る読者にどう届いたらうれしいですか?メッセージをお願いします。

完成作を観たとき、いろいろな人の思いが詰まっている中でも、僕が本当に一番いい観客として観ていた気がします(笑)。それほど面白いです。テーマが生成AIなので、もう人間が避けては通れないことですよね。もはや生成AIはインフラという時代に今僕たちは生きているので、皆さんも「生成AI×犯罪」というサスペンスに、かなり興味を持ってもらえんじゃないかなと思います。きっと「観てよかったな」と思ってもらえるだろうエンターテインメント作品になっています。

(取材・文:赤山恭子)

映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』は、9月11日(金)より全国公開。

出演:重岡大毅、原菜乃華、田中みな実
監督:近藤亮太
原案・脚本・プロデューサー:岡田道尚
(C)2026 Gaga Corporation/Storm Labels Inc./Studio i3

※2026年9月3日時点の情報です。

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