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「菊乃井」村田吉弘が語る、ガストロノミーの現在地

  • 2026.5.11
Hearst Owned

ラグジュアリーホテルの進出を機に、さまざまなジャンルのレストランが出揃った2026年春の京都。幅広い視野で日本料理を捉え続けてきた「菊乃井」の村田吉弘さんのメッセージと共に、京都ガストロノミーの現在をお届けします。

【菊乃井 本店】日本料理を世界に発信し続ける名店

「日本料理を題材にし、イケメンの料理人が活躍する映画を作ってみたい。『国宝』みたいにね」と、これからの夢を語る村田さん。 Katsuo Takashima

<Profile>
村田吉弘(むらたよしひろ)

1951年京都府生まれ。立命館大学在学中にフランス料理修業のために 渡仏。’76年菊乃井木屋町店を開店。2004年「日本料理アカデミー」を発足させ、日本料理の海外普及や「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力する。現代の名工、文化功労者にも選出されている。

町衆が支えてきた京都の料理屋さん

「菊乃井」の厨房からは、数多くの外国人料理人が育っていきました。 Katsuo Takashima

「料理屋や料亭は公共のものです。そうした考えを持っているのが、京都の料理屋です」

京都の料理文化が持つ一つの側面を、「菊乃井」3代目主人の村田吉弘さんは、そう語ります。

「江戸から明治になり大正、昭和と時代がどれだけ変わろうと、京都を支えてきた町衆の生活は変わりません。そんな町衆が使うのが料理屋です。七五三、成人式、法事などで、家族が集まって、ちょっとおいしいもの食べよかとなったときに、普通の人が少し気張れば行ける値段の店、それが京都の料理屋です」

そうした店が数多く暖簾(のれん)を掲げているからこそ、京都の料理は「京料理」と称され、一目置かれる存在となってきました。

「伝統を大事に守っているのが京料理と思われがちですが、食材が変わり、食べる人の嗜好(しこう)も変わってくるので、それに合わせて料理も変わらなければなりません。実は伝承の技、なんてものはあまりないのです。むしろ、料理文化というものを守るためには、料理そのものは、絶えず新しいことに挑戦し続けなければなりません。切磋琢磨(せっさたくま)を続ける京都の料理人はそれを理解し、外国のお客さまにも対応します。うちの店でもベジタリアンやハラールに応えられるようにしてあります」

ボランティアで手掛けた『日本料理大全』

『日本料理大全』は、文字どおり日本料理の教本ですが、ビジュアルも美しいのが特徴。掲載されている料理は、いずれも村田さんをはじめとする名料理人の手によるものです。現在5巻まで刊行済で、「煮る」「炊く」「煮含める」を取り上げる全7巻で完結となる予定です。画像はいずれも『向板(むこういた)』の巻より。 写真=齋藤 明

新しいことに挑戦し続けるには、勘と経験だけではなく、科学の力が必要。そう確信した村田さんが中心となって、次代の料理人のためにボランティアで手掛けたのが『日本料理大全』でした。昆布やかつお節が持つうま味の科学的分析から、魚のおろし方の解説など、5巻に及ぶ大著がこれまでに完成し、全て英語版も刊行されています。

「日本料理を海外に普及させたい。そんな思いから手掛けました」

「菊乃井」は、自国の料理を志す外国人シェフが日本料理のエッセンスを学ぶために身を置く場所としても知られ、村田さんの薫陶(くんとう)を受けて育ち、今や世界的に名の知られる存在となったスターシェフも数名います。時には、京都のラグジュアリーホテルの厨房(ちゅうぼう)に、そうしたシェフが立つことも。

「うちで育った子が頑張ってくれて、料理のジャンルを問わず、京都の料理全体が底上げされれば、そんなうれしいことはありません」

日本料理全体を見据えてきた村田さんは、そう目を細めます。

『日本料理大全』現在5巻まで刊行中。デジタルブックは無料公開

表紙 / 「染司よしおか」吉岡幸男作 写真 / 久間昌史

NPO法人「日本料理アカデミー」が監修して制作された『日本料理大全』。デジタルブックは無料公開され、少しでも多くの次代を担う料理人たちが目を通すことができる配慮がなされています。下記のURL、二次元コードよりアクセスできます。
URL/www.kpu.ac.jp/jp_cuisine_ebook

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「菊乃井 本店」
料金/昼コース¥16,500~ 夜コース¥22,000~(共にサ別)
所在地/京都府京都市東山区下河原通八坂鳥居前下る下河原町459
営業時間/12:00~12:30、17:00~19:30(共に最終入店)
定休日/不定休
TEL/075-561-0015
URL/kikunoi.jp
要予約

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売

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