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「アイスに触るな、溶けるでしょ」レジで無茶を言う客。だが、店員の毅然とした対応に唖然

  • 2026.8.3

夕方のレジに流れてきたかご

大学生のころ、スーパーのレジでアルバイトをしていました。

夕方は買い物かごが途切れずに流れてきます。

特売の日は列がお菓子の棚まで伸びて、私は読み取り音だけを頼りに手を動かしていました。

四十代くらいの女性が置いたかごは、一番上に箱入りのアイスが載っていました。

いつもどおり手を伸ばした瞬間、鋭い声が飛んできます。

「レジでアイスに触るな、溶けるでしょ」

近くの話し声が、すっと止まりました。

「申し訳ございません。お会計のために、こちらでお預かりいたします」

「いいから触らないで。溶けたら誰が責任取るの」

女性は私の手から箱を取り上げ、そのまま胸の前で抱え込んでしまいました。

バーコードを通さないと

後ろに並んでいた人たちの列が、そこで止まりました。かごの中の卵も豆腐も、まだ台に載ったままです。

私は手を下ろして、もう一度お願いします。

「そちらの商品は、バーコードをお読みしないとお会計ができません」

「読み取る機械、持ち歩いてないの」

「申し訳ございません。当店のレジは、こちらの台にお通しする形になっております」

女性の口が、開いたまま止まりました。抱えた箱に目を落として、それから私のほうをちらりと見ます。

「……じゃあ、どうしろって言うの」

声は、さっきの半分の大きさになっていました。

一瞬だけ、お預かりします

「一瞬だけ、お預かりします。すぐお返しいたします」

できるだけゆっくり両手を差し出すと、女性は指先だけで箱を持ち替え、少し迷ってから、その上に置きました。

手のひらに、箱の冷たさが伝わってきます。

読み取り音が鳴るまで、本当に一秒でした。かごに戻した箱は、表面の霜も白いままです。

「…あ、もう終わったの」

ひとりごとのような声でした。後ろに並んでいた年配の女性が小さくうなずき、その隣の人も同じほうを向きます。

女性は財布を出すと、レジ画面のほうだけを見ていました。目は最後まで合いません。

「ありがとうございました」

返事はありませんでしたが、袋詰めの台でアイスを一番上に置き直しているのが見えました。

「今の、よくあそこまで冷静に対処できたね」

隣のレジの先輩が、レシートの束を揃えながらそう言いました。

あれから何年も経ちますが、あの一秒の長さだけは忘れられません。

「次にお待ちのお客様、どうぞ」

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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