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35年前、男女混合の声優ユニットが動き出した 間奏の「寸劇」が証明する“サービス精神の濃さ”

  • 2026.8.11
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2021年8月、映画『ザ・スーサイド・スクワッド〝極〟悪党、集結』日本語吹き替え版試写会に登場した山寺宏一(C)SANKEI

いまでは、声優がユニットを組んで歌い、ライブをやり、ときにチャートにも名を連ねる。それは珍しい光景ではなくなった。だが1991年、その組み合わせ自体がまだ物珍しかった時代に、男女混合声優ユニットとして動き出した3人がいた。

バナナフリッターズ『今夜はバッチグー!』(作詞:白峰美津子・作曲:棚部陽一)ーー1991年8月21日発売。

山寺宏一、日髙のり子、関俊彦。それぞれがすでにアニメの現場で確かな仕事を積んでいた実力派声優3人が、声優ユニットを組んだ。

芝居の達人が歌の新人に戻った日

山寺宏一はマルチな芸達者として、日髙のり子は数々のヒロインを演じる存在として、関俊彦は人気キャラクターの声で、それぞれすでに現場の第一線にいた。演技の実力で名前を知られていた3人が、あえて歌に挑む。それ自体が当時としては新しい試みだった。

タイトルの『今夜はバッチグー!』は、語感からしてすでに肩の力が抜けている。歌謡曲の様式にきっちり則りながら、そこに乗る声はどこまでも軽やかで、深刻さとは無縁だ。作詞は白峰美津子、作曲は棚部陽一。演技者としての実力と、歌い手としての新人らしいフレッシュさが同居する曲づくりで、3人の歌声はしっかりと重なり合い、ハーモニーとしての完成度も低くない。

山寺の伸びやかに張る声、日髙の明るく抜ける高音、関の落ち着いた響き。三者三様の声質が、重なった瞬間にひとつの陽気な塊へと溶け合う。声を仕事にしてきた者同士だからこその、混ざり方のうまさがある。声優が本業の傍らで楽曲を作るとなれば、余興のように軽く仕上げてしまうこともできたはずだが、3人はきちんと歌謡曲の骨格を保ったまま、その上に自分たちらしい遊びを乗せている。

「男女混合声優ユニットの草分け的存在」という評価は、後年から振り返って初めて見えてくる位置づけだが、その最初の一歩がこの曲だったことは動かない。

間奏に紛れ込んだ寸劇という遊び心

この曲の面白さは、歌そのものの出来の良さだけにとどまらない。3人は演技のプロだ。歌のなかにも、その芝居っ気がしっかりと息づいている。

間奏では生のセリフが差し込まれる仕掛けも用意されている。歌唱パートだけを聴かせるのではなく、寸劇のような遊びを音源のなかに残す構成は、声優という肩書きを持つ3人だからこそ説得力を持つ。ただ歌ってレコードに収めるのではなく、その場のノリと芝居っ気を音に焼き付けている感覚がある。

2017年の復活ライブでも再演され、当時を知るファンの歓声を誘ったという。時間が経ってもなお、その場面が再現に値する見どころとして記憶されている、何よりの証拠だ。

歌唱力だけでは測れない、芝居が乗った歌としての愛され方。それがこの曲を単なる歌謡ポップスから一段浮かせている。声だけを商売道具にしてきたはずの3人が、あえて姿と間合いまで含めて演じてみせる。そのサービス精神の濃さが、聴くたびに新しい発見を連れてくる。

本気と遊びが同居した最初の一歩

声優としての実力で評価されていた3人が、歌という土俵に本気で足を踏み入れる。その姿勢の面白さは、令和のいまアニソン・声優アーティストがごく自然に音楽シーンに立っている風景を思うと、なおさら際立って見える。

『今夜はバッチグー!』は、派手な成功譚として語られる曲ではない。それでも、声のプロたちが真剣に歌に向き合い、間奏では茶目っ気たっぷりに芝居を挟み込む。その本気と遊びの同居こそが、この曲をいまも聴くに値するものにしている。

3つの声が重なった瞬間の屈託のない明るさは、30年以上を経たいま聴いても少しも古びていない。声優が歌う時代の入り口に、こんな軽やかな一歩があったことを、覚えておいていい。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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