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リーゼントの銀行員が「契約数全国1位」に。「Vシネマの帝王」になった伝説の元行員とは?

  • 2026.8.20
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2019年8月、プロ野球「DeNA対広島」試合前イベントに登場した竹内力(C)SANKEI

銀行の窓口に、リーゼント姿の行員がいる。しかも定期預金の契約件数は全国1位。後に「Vシネマの帝王」と呼ばれる竹内力が、本人の言葉で明かした会社員時代である。

約2年勤めた銀行を辞め、バイクで上京。1986年公開の映画『彼のオートバイ、彼女の島』で俳優になった。

堅い銀行の窓口にいた青年は、上品な役に苦戦し、やがて裏社会を生きる男として選ばれていく。

見た目を変えず、数字を出す

大分県の高校を卒業した竹内は、恩師の推薦で大阪の都市銀行へ入った。勤務先は三和銀行淡路支店。現在の三菱UFJ銀行につながる銀行である。

髪形は高校時代からのリーゼントを通した。周囲と同じ見た目に寄せるより、仕事で結果を出す。竹内によれば、定期預金の契約件数は全国1位だった。粗品を工夫し、店先から威勢よく客を呼び込んだという。

後に画面を支配する押し出しの強さは、スーツ姿の銀行員だった頃、すでに営業の武器になっていた。強面の役はまだ遠い。窓口では、人を振り向かせ、話を聞いてもらう力が数字になった。

爽やかな青年に求められたもの

銀行を辞めた竹内は、バイクで東京へ向かった。ライブハウスのウェイターとして働いていたところを芸能事務所にスカウトされ、大林宣彦監督の『彼のオートバイ、彼女の島』でデビューする。

映画の竹内は、リーゼントの元銀行員や後年の強面像とは違う、爽やかな青年だった。1991年放送のフジテレビ系ドラマ『101回目のプロポーズ』では、ヒロインと同じオーケストラに所属するバイオリニストの沢村尚人を演じている。

本人は後に、周囲に裕福な「お坊ちゃん」がいなかったため、上品な役をどう演じればよいのか分からず苦手だったと振り返った。整った若者を求められた時期、竹内の持ち味はまだ役の外側に置かれていた。

銀行仕込みの手がつくった「萬田銀次郎」

転機は1992年に始まった『難波金融伝・ミナミの帝王』シリーズだった。竹内が演じる萬田銀次郎は、法外な利息で金を貸し、返済を迫る。低い声、鋭い視線、派手なスーツ。爽やかな青年役とは反対の場所で、竹内自身の迫力が前へ出た。

札束を数える場面では、銀行員時代に身につけた札勘定がそのまま使えた。2017年の映画イベントでも札さばきを披露し、「これが役に立ったのが『ミナミの帝王』」と語っている。

演技のために覚えた動きではない。本物の窓口業務で繰り返した手順が、萬田銀次郎の迷いのなさを画面に刻んだ。 札が指の間を走る数秒に、元銀行員の2年が現れる。

演じる側から作る側へ

『ミナミの帝王』は劇場版を含む長期シリーズとなり、竹内はVシネマの顔になった。若い頃に任された好青年ではなく、強面、低い声、金を扱う手。その組み合わせを求められる俳優へ変わっていった。

2023年に配信が始まった『欲望の街』では、主演だけでなく製作も担っている。シリーズについて、70歳まで続けたいと語った。2026年にも新作が配信され、金融と欲望が動く世界を自分で作り続けている。

銀行では客を呼び込み、契約を取った。映画では萬田銀次郎として札を数え、観客を呼んだ。爽やかな役に選ばれた新人は、自分の見た目と声と手を看板に変え、いまは作品を動かす側に立つ。リーゼントも、札さばきも、そのままである。


※記事は執筆時点の情報です

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