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“静かな悲恋”からキャスターの現在へ 元月9ヒロインが残した「2つの輪郭」

  • 2026.8.19
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2024年3月、日本テレビ『news every.』会見に登場した桐谷美玲(C)SANKEI

海を望む場所に立つと、桐谷美玲の細い輪郭は景色に溶けず、むしろ人物の抱えているものをくっきり見せる。明るい服も、白い厨房も、静かな海辺も、桐谷美玲が立てば画面の芯が決まる。

2013年公開の映画『100回泣くこと』と、2016年放送のフジテレビ系ドラマ『好きな人がいること』。どちらも恋のそばに海がある。ただし、桐谷美玲の佇まいは正反対。前者では言えない秘密を抱えて動きを抑え、後者では仕事も恋も体ごと追いかける。

海辺の悲恋から湘南のラブコメディーへ。現在は日本テレビ『news every.』でキャスターもつとめる桐谷美玲は、華奢な見た目を「守られる女性」の象徴にはせず、感情の強さを映す線として使ってきた。

笑顔の奥に置いた残り時間

『100回泣くこと』で演じた沢村佳美は、事故の影響で一部の記憶を失った藤井秀一と再会する。藤井役は大倉忠義。かつて恋人だったことを明かさない佳美は、求婚されると1年間の「結婚の練習」を提案する。

佳美は卵巣がんの再発も隠していた。二人でハワイのルナレインボーを見たいという願いは、先の長い約束というより、限られた時間の中でどうしても手放したくない景色に近い。

桐谷美玲の佳美は、悲しみを先に見せない。笑ったときの整った顔、細い肩、相手をまっすぐ見る目。その静かな形が崩れないほど、言葉にされない病の重さが残る。

きれいな輪郭の内側へ秘密をしまい、最後まで恋人との日常を選ぶ。桐谷美玲の見た目は、佳美の弱さではなく意志を支える器になった。

厨房から恋へ、全身で飛び込む

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※2016年撮影、桐谷美玲(C)SANKEI

3年後の『好きな人がいること』では、同じ細身の体がせわしなく動く。演じた櫻井美咲は、独立を夢見て仕事に打ち込んできたパティシエ。職を失ったところで高校時代の初恋相手・柴崎千秋と再会し、湘南のレストラン「Sea Sons」で働くことになる。

千秋役は三浦翔平。無愛想なシェフの次男・夏向を山﨑賢人、調子のいい三男・冬真を野村周平が演じた。美咲は三兄弟の家に住み込み、厨房では夏向とぶつかり、千秋の前では可愛く見られたい気持ちを隠せない。

佳美が胸の内を閉じたまま相手との時間を守った女性なら、美咲は失敗も焦りも顔に出しながら次の一皿へ向かう女性。姿勢よく立つだけで画になる桐谷美玲が、あえて慌て、転び、食らいつく。その崩れ方が、美咲を手の届かない美女から働く人へ連れてくる。

モデルとして知られた端正さを入口にしながら、厨房では汗と失敗を隠さない。その落差が、月9初主演の美咲を動かした。

海辺で変わった、恋する人の立ち方

2018年、桐谷美玲と三浦翔平は結婚を発表した。二人が同じ時間を過ごした作品の一つが、湘南で撮影された『好きな人がいること』だった。

『100回泣くこと』の佳美は、海の向こうにある月虹を願う。『好きな人がいること』の美咲は、海辺の店で毎日の仕事を積み上げる。遠い景色を見つめる静かな横顔と、目の前の厨房へ飛び込む前傾姿勢。

桐谷美玲が海辺で見せたのは、恋の結末よりも、その時間にどう立っていたか。肩に秘密を抱えた佳美。白いコックコートで兄弟の間を駆けた美咲。同じ海の光を受けながら、二人の女性はまるで違う輪郭を残している。


※記事は執筆時点の情報です

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