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「怖い妻が似合う」だけじゃない美人女優。“サレ側”も“する側”も似合う凄み

  • 2026.8.12
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2011年2月、明治製菓のPRイベントに登場した仲里依紗(C)SANKEI

夫の不倫を知り、静かに相手を追い詰めていく妻。その2年後には、自分が四角関係の一角に立っている。さらに翌年には、夫の浮気に傷つきながら別の男性へ心を動かす妻を演じた。

仲里依紗が不倫を扱うドラマで担ってきたのは、いつも同じ立場ではない。裏切られる側から、秘密の関係に入る側へ。その振れ幅を追うと、派手な感情表現だけではない俳優としての強みが見えてくる。

怒鳴らずに怖さを生んだ妻

大きな転機となったのが、2017年放送のTBS系ドラマ『あなたのことはそれほど』だ。仲が演じた有島麗華は、夫・光軌の不倫に気づく妻。感情をむき出しにするよりも、相手の言葉や行動を注意深く見つめ、逃げ道を少しずつ塞いでいく人物だった。

当時、麗華の言動は「怖すぎる」と話題になった。しかし、その怖さは単純な怒りではない。夫を信じたい気持ち、疑いが確信へ変わる痛み、家庭を守ろうとする意志が重なり、穏やかな声や視線にも緊張が宿った。

仲はこの役で東京ドラマアウォード2017の助演女優賞を受賞している。本人も授賞式で、これまで経験の少なかった地味な役に不安があった一方、自分でも知らなかった引き出しを見つけられたと振り返った。鮮やかな服や明るいキャラクターの印象とは逆の、感情を抑える芝居が高く評価されたのである。

今度は秘密を抱える側へ

2019年放送のWOWOW『それを愛とまちがえるから』では、立場が反転する。仲が演じた整体師・逢坂朱音は、既婚者の伊藤匡と交際している女性だ。匡の妻・伽耶にも恋人がいるため、物語は夫婦とそれぞれの恋人による四角関係へ広がっていく。

興味深いのは、重い題材を扱いながら、作品全体に軽やかな会話のリズムがあることだ。仲自身も完成披露の場で、それまで重苦しい不倫ドラマを多く演じてきたため、明るい雰囲気に驚いたと笑いを交えて語っていた。

『あなたのことはそれほど』の麗華が沈黙の中に疑いをため込む女性なら、朱音は関係のねじれを会話の中で動かす女性。同じ不倫劇でも、仲は被害者と当事者を単純な善悪に分けず、作品の温度に合わせて人物の見え方を変えた。

一人の中で両方が重なった

2020年放送のTBS系ドラマ『恋する母たち』で演じた蒲原まりは、その両方を一人で抱えている。セレブ妻に見えるまりは、夫の浮気に苦しむ一方、落語家の今昔亭丸太郎と本気の恋に落ちていく。

裏切られたから別の恋へ進んだ、と単純な因果で片づけられる役ではない。家庭を守りたい思いも、丸太郎に惹かれる気持ちも、夫への怒りも同時に存在する。仲は華やかさと健気さを行き来しながら、矛盾を抱えたまま前へ進もうとするまりを演じた。

ここまで来ると、仲が不倫劇で求められてきた理由は「怖い妻が似合う」だけでは説明できない。傷つく側の警戒心も、関係へ踏み込む側の勢いも、一人の中で揺れる矛盾も見せられる。その幅があるから、同じ題材でも役が重ならないのだ。

する側か、サレる側か。仲里依紗の演技は、その二択の間にある感情をすくい上げる。強い色をまとっていても、静かな表情を選んでいても、人物がいま何に傷つき、何を欲しているのかが伝わる。だからこそ、仲が演じる秘密の恋は、刺激的な設定だけで終わらず、その人の人生として残るのである。


※記事は執筆時点の情報です

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