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15歳下のイケメンに揺れる40歳。“複雑な役”に命を吹き込んだ「吉田羊」の演技力

  • 2026.8.7
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2016年1月、フジテレビ系ドラマ『ナオミとカナコ』制作発表会に出席した吉田羊(C)SANKEI

恋には、勢いのまま進む瞬間だけでなく、知っているからこそ立ち止まる瞬間もある。2018年公開の映画『ラブ×ドック』で吉田羊が演じたのは、恋で仕事や人間関係を失ってきた40歳のパティシエ・剛田飛鳥。そんな飛鳥に、15歳下の男性がまっすぐな思いを告げる。

年齢差に驚くだけなら話は早い。だが、過去の痛みを知る大人にとって、新しい恋は希望と警戒を同時に連れてくる。吉田はその足踏みを、弱さにも正しさにも寄せ切らず、一人の女性が積み重ねてきた時間として見せた。

相手を受け止める母親から、恋に揺れる40歳、周囲の型に自分を合わせない働く女性まで。吉田の芝居には、強い設定の奥に、その人なりの事情を残す力がある。

『映画 ビリギャル』で示した受け止める芝居

吉田の映画での評価を大きく高めた作品の一つが、2015年公開の『映画 ビリギャル』だ。有村架純演じる工藤さやかが、学年ビリの成績から慶應義塾大学合格を目指す物語で、吉田は母のああちゃんを演じた。

ああちゃんは周囲の反対に負けず、娘の可能性を信じ続ける。吉田はその愛情を大げさな言葉だけに頼らず、相手を受け止める姿勢や声の温度で伝えた。前へ出て場面をさらうより、受け止めることで相手の感情を深くする芝居だ。

吉田は同作で第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した。また、第58回ブルーリボン賞助演女優賞は、『ビリギャル』『愛を積むひと』『脳内ポイズンベリー』の3作品での演技が対象となった。

一つの感情を強く押し出すのではなく、相手との間に生まれる揺れを見せる。支える役で磨かれたその力は、やがて複雑な恋愛を生きる女性にも説得力を与えていく。

40歳と15歳下、経験が恋を立ち止まらせる

『ラブ×ドック』の飛鳥は、仕事では成功を収めた人気パティシエだ。一方で、恋に走った結果、仕事や親友を失った経験があり、過去には既婚男性との不倫もあった。恋が人生を明るくすることも、傷を残すことも知っている。

その飛鳥に思いを寄せるのが、野村周平演じる15歳下の花田星矢だ。星矢は年齢差を越えて、飛鳥にまっすぐ思いを告げる。だが、飛鳥にはその言葉だけを信じて飛び込めないだけの時間がある。若さへの引け目より先に、同じ失敗を繰り返したくないという記憶が足を止めるのだ。

吉田は、心が動く瞬間と身を守ろうとする反応を同じ人物の中に置いた。恋に奔放だった過去も、慎重になる現在も、飛鳥が生きてきた一続きの時間として映る。15歳下からの好意を前にした迷いは、臆病さではなく、経験を重ねた大人の切実さとして伝わってくる。

自分の生き方を他人の型に合わせない

同じ2018年放送のTBS系ドラマ『中学聖日記』で、吉田が演じた原口律は、有村架純演じる聖の恋人・川合勝太郎(町田啓太)の職場の先輩であり、上司でもある。仕事の場で堂々と振る舞いながら、バイセクシャルで恋愛や生き方についても、自分を周囲の常識に合わせようとはしない大人だ。

律の強さは、迷いがないことから生まれるのではない。過去の恋をめぐる割り切れない感情を抱えながら、それでも自分の基準で人と向き合う。吉田は、きっぱりとした態度の隙間に残る揺れを見せ、律に触れにくいほどの格好よさと、人間らしい温度を同居させた。

飛鳥が経験ゆえに恋の前で立ち止まる人なら、律は経験を抱えながら自分の歩き方を選ぶ人だ。姿勢は違っても、吉田の芝居はどちらの選択にも、その人が過ごしてきた時間を感じさせる。

危うい恋の奥に、その人の事情を残す

『ラブ×ドック』の飛鳥は、15歳下からの告白に心を動かされながら、過去の痛みを思い出す。『中学聖日記』の律は、周囲の型に収まらない生き方を選びつつ、割り切れない感情も抱えている。吉田が演じると、恋愛は人物を飾る設定ではなく、その人の経験が表れる場所になる。

そこで見えるのは、進むか退くかという結論だけではない。決断の前にためらい、相手の言葉を受け止め、自分の傷とも向き合う時間だ。危うさも強さも一つの面に固定せず、いくつもの感情が重なるまま差し出す。

『映画 ビリギャル』で見せた、相手の感情を受け止める芝居。その積み重ねがあるからこそ、複雑な恋を演じても刺激だけに飲み込まれない。吉田羊の説得力は、強い設定の奥に、一人の人間が生きてきた時間を残すところにある。


※記事は執筆時点の情報です

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