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不倫役で魅了する「昼顔系女優」“道ならぬ恋”を任されてきた禁断愛の系譜

  • 2026.8.6
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2010年9月、フジテレビ系ドラマ『ギルティ 悪魔と契約した女』制作発表に出席した吉瀬美智子(C)SANKEI

夫の秘書と密会する、政略結婚の妻。愛人とともに夫の殺害を企てる会長夫人。そして、夫を送り出した平日の昼間、別の男性との恋に身を投じる主婦。

一見すると同じ人物の波乱に満ちた半生のようだが、すべて吉瀬美智子が別々の作品で演じてきた役である。

モデルとして活動したのち俳優へ軸足を移し、端正で落ち着いた雰囲気を生かしながら、数多くの映画やドラマに出演してきた吉瀬。その歩みを振り返ると、結婚という枠からはみ出す女性を、約15年にわたって何度も任されてきたことが見えてくる。

政略結婚の妻が抱えていた秘密

その反復の始点として外せないのが、2008年放送のTBS系ドラマ『魔王』だ。吉瀬が演じた芹沢麻里は、政略結婚によって芹沢家に入った女性。夫の芹沢典良と暮らす一方で、夫の秘書を務める葛西均と人知れず関係を続けていた。

復讐と殺人事件が絡み合う物語のなかで、麻里と葛西の関係は単なる恋愛要素では終わらない。誰にも知られてはならない秘密だからこそ、ふたりを追い詰める材料として利用されていく。

吉瀬は、恋に浮かれる女性ではなく、社会的な立場を守りながら感情を押し殺す妻を静かに表現した。整った表情の奥にある迷いや緊張が、秘密の重さを伝えていた。

愛人と企てた夫の殺害

それから2年後、吉瀬は2010年公開の主演映画『死刑台のエレベーター』で、さらに危うい関係へと踏み込む。

演じた手都芽衣子は、医療グループ会長の妻でありながら、勤務医の時籐隆彦と愛人関係にある女性。ふたりは一緒になるため、芽衣子の夫を自殺に見せかけて殺害する計画を立てる。

『魔王』の麻里が秘密の関係によって追い詰められていく人物だったのに対し、芽衣子は自ら計画を動かす側だ。道ならぬ恋が逃げ場ではなく、殺人へ向かう原動力になっている。

冷静に振る舞いながら、その内側では激しい欲望が動いている。吉瀬の抑制された演技があるからこそ、芽衣子は記号的な“悪女”ではなく、何を考えているのか最後まで目を離せない存在になった。

“昼顔妻”が代表役になるまで

吉瀬の不倫役を広く印象づけたのは、2014年放送のフジテレビ系ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』だろう。

吉瀬が演じた滝川利佳子は、裕福な夫と娘たちに囲まれ、一見すると何不自由なく暮らしている主婦。しかし夫のいない昼間には、家庭とは別の場所で男性との関係を重ねていた。

当初の利佳子は、不倫の危うさも切り抜け方も知っている経験者として、笹本紗和をその世界へ誘う。ところが画家の加藤修と出会うと、自分も計算では処理できない感情にのみ込まれていく。

余裕のある“大人の女”が、恋によって家庭や母親としての立場を揺さぶられる。その崩れ方まで演じたことで、利佳子は吉瀬の代表役のひとつになった。

完成披露試写会舞台挨拶の場で吉瀬自身が、不倫役は初めてではないという趣旨の発言をしていたのも象徴的だ。視聴者にとっても、禁断の関係に立つ吉瀬は、すでに見覚えのある姿だったのである。

15年後は、18歳下の男性と

2023年放送のテレビ朝日系ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』でも、吉瀬は再び結婚の外側に恋人を持つ女性を演じている。

主人公の姉・泉川蘭は、自身にも家庭がありながら、18歳年下の男性と不倫中。麻里や芽衣子が重い秘密を抱えていたのに対し、蘭は自分の欲望や身勝手さを比較的あけすけに見せる人物だった。

同じ不倫という題材でも、その意味合いは少しずつ違う。『魔王』では弱みとなる秘密、『死刑台のエレベーター』では犯罪の引き金、『昼顔』では日常の空白から始まる恋、そして『ゆりあ先生の赤い糸』では複雑な家族模様をかき回す現実として描かれた。

“色気”だけでは終わらない理由

吉瀬がこうした役を繰り返し任されてきた理由を、単に大人の色気だけで片づけることはできない。

吉瀬が演じる女性は、社会生活を乱すほどの感情を抱えながら、表面上は平静を保とうとする。その整った外見と、ふとした視線や沈黙から漏れる危うさの落差が、秘密を持つ人物に説得力を与えてきた。

政略結婚に縛られた妻、自ら殺害計画を進める愛人、家庭と恋の間で崩れていく母親、年下の恋人を持つ奔放な姉。吉瀬が15年にわたって演じてきたのは、同じ“不倫する女性”ではない。

正しさだけでは割り切れない感情を抱え、それでも平然と日常へ戻ろうとする女性たちだ。その矛盾を静かな表情のなかに宿せるからこそ、吉瀬美智子には何度でも“禁断の愛”が託されるのだろう。


※記事は執筆時点の情報です

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