1. トップ
  2. 【ネタバレあり】実写版『モアナと伝説の海』が、私たちに勇気をくれる理由

【ネタバレあり】実写版『モアナと伝説の海』が、私たちに勇気をくれる理由

  • 2026.7.31

アニメーション映画『モアナと伝説の海』が公開されて今年で10年。傑作揃いのディズニー・アニメーションの中でも特に多くの人に愛され、モアナは今もたくさんのファンの心を離さない。この作品が〈超〉実写版としてスクリーンに戻ってきた。今回は新たな『モアナと伝説の海』の魅力を徹底的に分析する。

Hearst Owned

アニメーション版ヒロイン像をリスペクト

大好きだったアニメーションが実写版になったとき、オリジナルのテイストが薄れていてがっかりするのはよくある話。でもこの〈超〉実写版『モアナと伝説の海』に限って、そんな心配は無用。スクリーンに小さなモアナが登場、浜辺で物語の鍵である母なる島「テ・フィティ」のハートと出会う冒頭のシーンを見た瞬間、今作がアニメーション版と同じモアナの世界へと連れて行ってくれることが予感できる。そしてモアナが少女へと成長していくのを見ているうちに、その気持ちは確信に変わるはず。それくらい、今作のモアナはアニメ版のヒロイン像をしっかり受け継いでいる。

キャサリン・ランガイア(Catherine Laga’aia) Hanna Lassen / Getty Images

演じているのは数万人の中からオーディションで選ばれた18歳の新人キャサリン・ランガイア。モアナのルックスをコピーしているわけではなく(ルックスももちろん似ているけれど)、アニメーション版のモアナの持つ島民たちを思いやる心、未知の世界への好奇心や勇気、ちょっとやそっとの困難には負けない不屈の精神を表現している。その演技には、単なる真似では終わらせない、オリジナルへの深いリスペクトが込められている。ちなみにオリジナルでモアナの声を演じたアウリイ・クラヴァーリョは今作に製作総指揮として参加している。今作は、2人がヒロインのモアナに抱いていたリスペクトの結晶ともいえる。

キャサリン・ランガイア(Catherine Laga’aia)、アウリイ・クラヴァーリョ(Auli’i Cravalho) Rodin Eckenroth / Getty Images

モアナ&マウイのバディがより楽しく、美しく進化

そんなモアナとバディを組むマウイを演じているのは、アニメーション版で声を演じていたドウェイン・ジョンソン。元プロレスラーというだけあってハリウッド屈指のマッチョなボディの持ち主だが、今作ではそれを生かしてアニメーション以上にたくましいマウイを生み出している。

しかしマウイは単なるマッチョな半神半人ではない。母なる島「テ・フィティ」の心を盗み出したトラブルの元凶である。とはいえそれは、「愛されたい」「認められたい」という一途な思いからやってしまったこと。それなのにその盗みのせいで追放され幽閉されるという、悲劇的な過去も背負っている。それを彼はコミカルな表情で覆い隠している。

ドウェインはこれまでアクション映画だけでなく、コメディ映画やシリアスなドラマ映画にも出演してきた人物。抜群の笑いのセンスと演技力を合わせ持つ。明るいけれどどこか影のあるマウイという複雑なキャラクターを、愛すべき、しかもリアルな人物として生き生きと描き出している。

マウイが進化したことで、バディとしてのモアナとマウイの魅力も確実にグレードアップしている。たとえばアニメーション版よりマウイがマッチョになったから、モアナとマウイのルックスの凸凹ぶりはより際立っている。その結果、巨大なマウイを小柄なモアナがやり込めるシーンはさらにコミカルに。たくましいマウイが愛らしいモアナに助けられる場面は一層感動的だ。2人のやりとりに笑わされ、泣かされてしまうはず。

マウイにとって大切な魔法の釣り針も登場。キャサリン。ランガイア(Catherine Laga’aia)、ドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson) Samir Hussein / Getty Images

今だからこそ際立つ、モアナの魅力

2016年、オリジナル版が公開されたときも、見知らぬ世界へ飛び出して行くモアナの姿は多くの人に勇気と刺激を与えた。それから10年。世界はいろいろ変わったけれど、残念ながらよくなったとは言えない部分も。たとえばSNSの影響で他の人のミスに対する目はますます厳しくなっているし、不特定多数からジャッジされることも増えている。安心していられるゾーンに居続けたいというトレンドが強くなっても不思議はないが、モアナの生き方はそんな今の状況と対照的。

父親に止められても見知らぬ世界を見たいという心を失わず、海に投げ出されるという怖い経験をしても挑戦を重ねていく。過去の失敗とトラウマで諦めモードに入っているマウイに真正面から向き合い、頑なな彼の気持ちを明るい方へと変えていく。何事にもオープンマインドで臨み、失敗から学んで突き進んでいく彼女の姿は、見るものに希望を与えてくれる。勇気や挑戦、優しさや思いやりなど、モアナの心の中にあるものは、言葉にするととてもシンプル。でもそれらが持っている力と可能性を、今作は鮮やかに見せてくれるのである。

ポリネシアンカルチャーのスピリットを表現

舞台となっているモトゥヌイは架空の村。でも描かれる風景や生活からポリネシアの島なのは間違いない。アニメーション版でも登場したフラダンスやタヒチアンダンス、士気を高めるための舞踏「ハカ」など、数々のポリネシアン文化がストーリーを通して随所に描き出されている。

またタトゥーもポリネシアの重要な文化の1つ。単なる装飾ではなく、その人の社会的な地位や功績、一族の歴史を示す神聖なものである。マウイのボディには彼のこれまでの経験がタトゥーになって現れるが、それはまさにポリネシアにおけるタトゥーのあり方そのものなのである。

Rodin Eckenroth / Getty Images

そしてこのストーリーの中で、大きな位置を占めているのが海。ポリネシアの人にとって海は単なる自然の1つではなく、毎日の食料をもたらしてくれる命の源。同時に人間も含めた生命体を生み出した場所であり、多くの神々が宿る信仰の対象でもあった。またポリネシアの人々は古くから優れた航海術を持っていることで有名。星の位置や水の温度、波のうねりなどを見て太平洋を移動できたそう。彼らにとって、海は孤立した島々を結ぶ道でもあった。つまり海と特別な絆を持っていたモアナもタラおばあちゃんも、ポリネシアのカルチャーを体現したキャラクター。さらに航海術をマウイから学びながら大人になっていくモアナの姿は、ポリネシアの人々の生き方そのものなのである。

ネイティブハワイアンやニュージーランドのマオリといった、ポリネシアのマイノリティの姿をきちんと描いたハリウッド映画はまだまだ少ない。今作はそれを実現した貴重な一本。ちなみにキャサリンとドウェインはサモアの、タラおばあちゃん役のレナ・オーウェンはマオリのルーツを持っている。多様な文化を表現するストーリーを多様なキャストが作り出した、今の時代に相応しい画期的な作品といえそう。

レナ・オーウェン(Rena Owen) Axelle/Bauer-Griffin / Getty Images

脇役たちもパワーアップ

アニメーション版でモアナのもう1人のバディだったチキンのヘイヘイ、愛らしい子豚のプアを筆頭に、人間以外のお馴染みのキャラクターたちももちろん登場。最新のテクノロジーを使った映像のおかげで、色鮮やかな姿に進化している。マウイと仲の悪いカニのタマトアや、一見かわいらしいのにやたらと凶暴な海賊のカカモラらもパワーアップ。そして圧巻は母なる島「テ・フィティ」と溶岩でできたヴィラン「テ・カァ」。その美しさと迫力は息を飲むほど。スクリーンから目を離せなくなるはずだ。

甦るマスターピースと新たに誕生した名曲

ミュージカルとしても評価されたアニメーション版と同様、今作でも歌が魅力的。アニメ版で繰り返し登場、今やマスターピースとなった「どこまでも〜How Far I'll Go〜」を新ヒロインのキャサリンが美しく歌い上げている。その伸びやかな歌声は、未知の世界に憧れるモアナの想いや不安を観客の心にダイレクトに届けてくれる。モアナとテ・カァが向き合うクライマックスを飾る「Know Who You Are」は壮大で、思わず涙してしまうほどだ。ドウェインも負けていない。アニメーション版の人気ナンバー「俺のおかげさ(You're Welcome)」を踊りながらコミカルに歌い上げている。

さらに今作には新曲も。オリジナル版で音楽を担当していたリン=マニュエル・ミランダがこの作品のために書き下ろした「Along The Way」をキャサリン、ドウェイン、そして製作総指揮のアウリイ・クラヴァーリョ、つまりアニメーション版のモアナが歌っている。キャサリンによるとこのナンバーは「今作を象徴した一曲」。プレミア上映に出席したキャサリンは雑誌『ピープル』に対して、「この曲は、私たちがみんな一緒にこの作品の一部になれたということを表している。3人のレガシーなの」と話していた。まさにこの実写版は、モアナというヒロインの歴史に加わった新たなレガシーなのである。

『モアナと伝説の海』あらすじ

周囲を海に囲まれた島で暮らす16歳の少女、モアナ。平和な日々を送っていたが、島が異変に襲われる。モアナは愛する島民たちを救うため、村長である父の決めた掟を破り大海原に出かけていく。島を元に戻すには半神半人のマウイを見つけ出し、彼が盗み出した母なる島「テ・フィティ」の心を元の場所に返さなくてはならないと知ったからだ。しかし海に出たモアナを予想していなかった数々の危機が襲う。しかもようやく見つけ出したマウイはモアナの言うことに耳を貸さず、心を元に戻すことにも協力してくれない。しかしモアナは次々と迫る危険に立ち向かっていく。そんな彼女の姿にマウイの心も少しずつ変わっていく……。果たして2人は心を元の場所に戻し、島を救うことができるのか。

監督:トーマス・ケイル

音楽・製作総指揮:リン=マニュエル・ミランダ

製作総指揮:アウリイ・クラヴァーリョ

出演

モアナ:キャサリン・ランガイア

マウイ:ドウェイン・ジョンソン

日本版声優

モアナ:TSUZUMI(ME:I)

マウイ:尾上松也

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

2026年7月31日劇場公開

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ