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「車まで運んで。そこに停めてるから」客の要望を断った店員→店員の思わぬ提案に客が帰ったワケ

  • 2026.7.30

レジ台に積まれた箱

レジ台にビールの箱がひとつ置かれ、男性がまた飲料の棚へ戻っていきました。

学生のころ、幹線道路沿いのコンビニで夜のアルバイトをしていたときのことです。

二十四時間営業の店ではなく、日付が変わる前に閉めていました。

「2ケース頼む」

戻ってきた四十代くらいの男性が、二箱目をどんと置きます。

「かしこまりました」

閉店30分前で、店内には雑誌コーナーの常連さんが一人いるだけでした。

会計は滞りなく済み、男性は財布をポケットに押し込みます。

そこで、駐車場のほうを親指でさしたのです。

「車まで運んで。そこに停めてるから」

断った私と、開いた扉

店の外に出れば、レジには誰もいなくなります。

レジを離れてはいけないと、初日の研修で何度も言われていたのです。

「申し訳ありません。店員が店の外に出ることはできないんです」

「誰が決めたんだ、それ」

「決まりですので」

「バイトが客に指図すんのか」

「そういうことでは、ありません」

言葉を返そうとしても、その先が続きません。

声が大きくなって、常連さんが雑誌から顔を上げました。

膝が震えました。それでも、外には出られないという一点だけは譲れません。

勢いが抜けていった顔

「じゃあ、どうしろって言うんだ」

「台車をお貸しします。そちらでお運びいただけますか」

事務所の脇から引いてきた台車を、男性の足元にそっと置きます。

男性の顔から、勢いが抜けていきました。

押しても意味がないと分かったのか、口が半分開いたまま止まっています。

「…台車って」

言いかけて口を閉じ、目を逸らします。

常連さんが雑誌を棚に戻して、レジのほうへ小さくうなずきました。

「もういい」

男性は台車も2ケースも置いたまま、自動ドアを抜けていきました。

エンジンの音が、遠ざかっていきます。

怒鳴られたことは今も忘れられません。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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