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「レシートなんか残してるわけない」使い込んだ電動工具の返金を迫った客。だが、店長が毅然とした対応を行なった結果

  • 2026.7.29

袋から転がり出た工具

紙袋の口から、見覚えのある箱が半分だけのぞいていました。

定年後に勤めはじめたホームセンターで、レジに立って三年目のことです。

六十歳くらいの男性が、その袋をカウンターの上で逆さまにしました。

転がり出てきたのは、うちが扱っている電動ドライバーです。

箱の角はつぶれ、外側にも茶色い土の跡がいくつも残っていました。

「1回使っただけで壊れた。不良品だろ」

本体の側面には乾いた土がこびりつき、握りの溝は黒く汚れていました。

買ったのは半月ほど前だと男性は言います。

「恐れ入ります。レシートか保証書をお持ちでしたら、お見せいただけますか」

「レシートなんか残してるわけない」

「あんたの店で買ったんだ。それで通るだろう」

高くなっていく声

「申し訳ございません。ご使用による破損の可能性がある場合は、ご返金いたしかねます」

男性の声が、そこで一段跳ね上がりました。

並んでいたお客さまが、いっせいにこちらを向きます。

「客をなんだと思ってるんだ。店長を出せ」

レジ台に拳が落ちて、脇に立てていたペン立てが倒れます。

後ろの列は伸びる一方で、かごを抱えた十人以上のお客さまが、身動きの取れないまま待っていました。

私が押した呼び出しのボタンは、カウンターの下にあります。

勢いが落ちた瞬間

呼び出しを受けた店長が売り場から出てきて、男性の正面に立ちます。

「お話をうかがいます」

店長は本体を裏返し、先端の金具のすり減り方を、男性にも見えるように示しました。

新品なら銀色に光っているはずの部分が、削れて曇っています。

「何度もお使いになった跡がございます。ご返金はいたしかねます」

「1回だと言ってるだろうが」

「よろしければ、メーカーの点検にお出しいたします」

男性は同じ主張を繰り返し、そのたびに店長が同じ答えを返します。

どれだけ声を荒らげられても、店長の言葉は最初の一言目から変わりませんでした。

私は横で、返品伝票の用紙を出したまま手を止めていました。

20分が過ぎたころ、男性の勢いが落ちました。

同じ答えを返され続けて、次に出す言葉がなくなったようでした。

列の途中から、はっきりと聞こえる舌打ちが飛びます。何人かが手元のかごから顔を上げ、男性のほうへ視線を向けました。

男性は首だけで後ろを見て、それきり列のほうを見ませんでした。レジ台へ伸ばしかけた手が、途中で下ります。

「もういい。二度と来ない」

電動ドライバーはレジ台に置き去りにしたまま、男性は自動ドアを抜けていきました。

店長がそれを紙袋に戻し、私に短く言いました。

「対応は間違っていません。次のお客さま、どうぞ」

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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