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「新人だからって、遅すぎるだろ」怒鳴った客。だが、他の年配の女性客の一言に救われた瞬間

  • 2026.7.29

ひとりで任された夜

学生時代、コンビニでレジ打ちのアルバイトをしていました。

研修が明けて、ひとりでレジを任されるようになったばかりです。

雨の夜は、なぜかお客様がまとまって来ます。

「おでん、大根と卵ね」

「肉まん二つ、袋は別で」

注文が重なって、頭の中が真っ白になりました。

容器の蓋を探しているうちに、レジの前には列ができています。

次の会計では、今度は決済の端末が反応しませんでした。

「もう一度、お願いできますか」

カードをかざし直してもらっても、画面は変わりません。

そこへ、列の途中から声が飛びました。

「まだかよ。いつまで待たせるんだ」

怒鳴り声が止まった瞬間

「申し訳ございません」

頭を下げても、声は続きました。

「新人だからって、遅すぎるだろ。他の店員呼べよ」

先輩は奥で品出しをしていて、呼びに行く余裕もありません。

謝りながら、体がどんどん小さくなっていきました。

そのときです。列の後ろのほうから、落ち着いた声がしました。

「レジで威圧するの、やめなさいよ」

年配の女性でした。責める調子でも、説教でもありません。

「この子、一生懸命やってるでしょう」

男性が振り返って、女性を見ました。

言い返そうとしたのか、口が半分開いたまま止まります。

列に並んでいた人たちの目が、いっせいにそちらへ向いていました。

男性の顔から、勢いが抜けていくのが分かりました。

雑誌の棚の前にいた学生風の二人組も、こちらを見ています。

「……別に、そんなつもりじゃない」

バツの悪そうな顔でそう言うと、かごを足元に置いて、そのまま自動ドアを出ていきました。

バス停まで追いかけて

止まっていた列が、また動き始めました。

女性は前に進んで、何事もなかったように商品を台に置きます。

「はい、お会計ね」

「……ありがとうございます」

言えたのはそれだけで、お礼の続きは喉の奥で止まりました。

後ろにはまだ、五人ほどが並んでいたのです。

女性はレシートを受け取ると、傘を差して出ていきました。

列がはけたのは、それから十分ほど後です。

「ちょっと出てきます」

戻ってきた先輩にそれだけ言って、私は店を飛び出しました。

女性は、少し先のバス停のベンチに座っていました。

「さっきは、ありがとうございました」

頭を下げると、女性は驚いた顔をして、それから笑いました。

「わざわざ来たの。いいのよ、あんなの」

バスが来て、女性は手だけ振って乗り込んでいきます。

店に戻ると、雨の音が少し弱くなっていました。

あの夜のことは、今でもはっきり覚えています。怒鳴られた声よりも、後ろに並んでいた人の一声のほうが、ずっと強く残っているのです。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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