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「疑われてるのかと」10日間の帰省から戻ったRさん夫婦、ポストの“1通の封書”に顔を見合わせたワケ【一級建築士は見た】

  • 2026.8.25
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「帰省明けのたまった郵便に、『境界立会いのお願い』の封書が。疑われているのかと、身構えてしまって」

そう話すのは、昨年、市街地の住宅地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約114㎡/土地約160㎡、約5,700万円)を建てたRさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。南隣は、長くお住まいだった高齢のご夫婦の家。この夏、住み替えで売りに出されました。

その矢先、Rさん一家は10日間のお盆の帰省へ。戻るとポストには郵便物の束、チラシに交じって土地家屋調査士事務所からの封書が入っていたのです。「土地境界立会いのお願い」。家を建てたとき、境界標は図面と現地で確認済み。だからこそ「境界の話は済んだはず。うちが、何か?」と、夫婦で顔を見合わせたのです。

「立会い」は疑いではなく、売却の準備

建築時に確認していても、土地を売るとき、売主は買主に正確な面積と境界を示したうえで引き渡すのが一般的です。そこで土地家屋調査士が境界を確定する測量を行い、隣り合う土地の所有者に現地で境界標(杭や金属のプレート)を確認してもらいます。これが境界立会いです。

費用は依頼した売主側の負担で、立ち会う側の持ち出しはありません。法律上の義務でもなく、あくまで協力のお願い。つまりあの封書は、Rさん宅を疑う知らせではなく、隣家が売却の準備を丁寧に進めている知らせでした。

実は、「自分の土地のため」でもある

立会いで境界を確認して筆界確認書(境界確認書)を取り交わせば、自分の側の境界も書面で明確になります。将来、自分が売る、相続する、塀を建て替える。そのとき、この書面がそのまま生きます。境界標が失われても、書面があれば復元の手がかりになります。

なお、示された境界の位置に納得できないときは、その場で署名せず、持ち帰って確かめることもできます。折り合えないときのために、法務局が筆界の位置を特定する「筆界特定制度」という公的な仕組みもあります。境界の確認は、いつか立場が入れ替わる、お互いさまの積み重ねなのです。

Rさん夫婦はどう対応したのか

帰宅の翌日、封書に記載された事務所へ電話。留守で返事が遅れたことを詫びると、「日程はこれからですので」と穏やかな応対でした。

夏の朝、現地での立会いは30分ほど。調査士の案内で境界標を一つずつ確認し、自宅の南東の杭が庭木の根元に隠れていたことも、この機会に確かめることができました。筆界確認書に署名押印し、控えは登記の書類と同じファイルに保管しました。

隣の売却は、「うちの境界」を確かめる好機

長く住んだ隣人の住み替えは寂しいものですし、見知らぬ封書に身構えるのも自然です。ただ、その封書は好機でもあります。以下を確かめてみてください。

・「境界立会いのお願い」は協力の依頼:費用は売主側の負担で、こちらの持ち出しはありません
・立会いの前に、購入時の測量図で自宅の境界標の位置を確かめておきましょう
・取り交わした筆界確認書は、登記の書類と一緒に保管を:将来の自分の売却や工事で生きます
・折り合えない、分からないときは、法務局の筆界特定制度という公的な窓口もあります
・旅行や帰省のあとは、たまった郵便をその日のうちに仕分けを:大事な封書が交じっています

一通の封書は、疑いの知らせではなく、境界を確かめ合う機会の知らせ。そう読み替えられれば、隣の売却の夏も、落ち着いて見送れます。

参考:筆界特定制度をご存じでしょうか?(法務局)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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