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「どうしてうちの車は小さいの?」父を困らせた娘が2020年、同じ個体を買い戻した“意外なワケ”

  • 2026.8.7
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

父親が乗っていた小さなマニュアル車に、幼い頃は苦手意識があった娘。しかし大人になり、彼女はかつて父親が手放したまったく同じ個体を買い戻すことになります。なぜ苦手だった車を再び手に入れたのか、そしてなぜ再び手放すことになったのか。親から子へ、そして孫へと受け継がれていくかもしれない、ある車好き家族の心温まる物語を紹介します。

「どうしてうちの車は小さいの?」父親を困らせた幼い日の記憶

Aさんの幼少期、周囲の家庭の多くは立派なセダンや広々としたファミリーカーに乗っていたそうです。それに比べて、お迎えに来てくれる父親のスズキ「スイフトスポーツ HT81S」は、子ども心に小さく、少し無骨に感じられてしまったといいます。周囲の大きな車を見るたびに羨ましくなり、父親に対して早くほかの広い車にしてほしいと、無邪気な不満をぶつけてしまうこともありました。

自身の趣味と家族への配慮の間で揺れていたであろう父親は、その言葉を聞いた時、少し困ったような、なんとも言えない微妙な表情を浮かべていたそうです。

それから数年後、父親はこのHT81Sを手放すことになります。当時のAさんにとっては、車がなくなったことに大きな喪失感があったわけではありませんでした。しかし、助手席から眺めていた父親の手元やシフトレバーを小気味よく操作する姿、そして小さな車内に響き渡る快活なエンジン音だけは、なぜかAさんの記憶の片隅に残り続けることになったのです。

免許取得で気づいた運転の楽しさと、あの日の記憶

やがてAさんは成長し、自ら免許を取得してハンドルを握るようになります。初めは単なる移動手段だったはずが、自分で車を走らせる経験を重ねていくうちに、彼女の中で少しずつ心境の変化が生まれました。

とりわけ、マニュアル車を自らの手と足で操る楽しさや、コンパクトで軽い車体を自分の意思通りにキビキビと動かす感覚に、次第に魅了されていったのです。自分の操作がダイレクトに車の動きにつながる喜びは、車を単なる機械から相棒のような存在へと変えていきました。

そうして運転の奥深さと楽しさを知れば知るほど、子どもの頃には理解できなかった父親の小さな車への思いに考えが及ぶようになります。「あの時、父親はなぜあの車を選び、あんなに大切に乗っていたのだろう」という純粋な疑問は、いつしか自分もあの車を運転してみたいという強い好奇心へと変わっていきました。かつてはもっと立派で静かな車がいいと感じていたはずなのに、大人になったAさんにとって、父親が走らせていたスイフトスポーツ HT81Sは、とても魅力的で意味のある車として映るようになっていったのかもしれません。

運命の再会と、父親の気持ちを心から理解できた日々

そんな思いを密かに抱え続けていた2020年、Aさんに思いがけない転機が訪れます。なんと、父親が手放したあのHT81Sとまったく同じ個体を探し出し、奇跡的に買い戻すことに成功したのです。同じ車種というだけでなく、かつて父親がハンドルを握っていたまさにその車との再会でした。

久しぶりに車の運転席に座った瞬間、Aさんの胸には父親の車が戻ってきたという深い懐かしさと、今は自分の車になったのだという新鮮な喜びが同時に押し寄せてきたといいます。

マツダのロードスターに乗る夫と一緒にドライブへ出かけるなど、HT81Sと過ごす日々はまさに幸福感に満ちたものでした。自分でステアリングを握り、シフトを操ることで、Aさんは父親がこの車を愛していた理由を、ついに心から理解できたのだそうです。

二度目の別れは突然に。事情が重なり手放した喪失感

しかし、順調に見えた愛車との生活に、再び大きな変化が訪れます。Aさんが自動車ディーラーへ就職したことで、勤務先の規定や環境との兼ね合いから、日常の足としてHT81Sを維持することが難しくなってしまったのです。

それでも完全に手放すことは考えず、いつかまた自由に乗れる日を夢見て、実家の駐車場に停めてセカンドカーとして大切に残しておくつもりでした。ところが、実家で同居している兄が新しく車を購入することになり、駐車場のスペースが足りなくなってしまいます。さらに、ほとんど乗られずに置かれているHT81Sを見た家族から、維持費や管理の手間を考えて、兄の車の下取りに出してはどうかという提案がありました。

Aさんは乗ってあげられない現状に負い目を感じており、強く反対することができず、最終的にその提案を受け入れることになります。本当は手放したくないのに見送るしかなかったその状況は、Aさんにとって非常に辛いものでした。せっかく手元に戻ってきた車を守れなかった悔しさと、心にぽっかりと大きな穴が開いたような虚しさが残ります。苦労して買い戻した時の喜びがとても大きかった分だけ、二度目の別れはひどく深い悲しみを伴うものでした。

三度目は娘のために。世代を超えて受け継がれる思い

現在、父親はスバルのWRXに乗り、夫はロードスターを愛用しています。二度も同じ車を手放す悲しい経験をしたAさんですが、「私たちの車好きは一生治りそうにありません」と、少し笑いながら語ってくれました。

そんなAさんは今、ある未来への夢を抱いています。それは、自身の娘さんが思春期を迎える頃に、もう一度あのHT81Sを探して買い戻すことです。いつか、かつて自分が座っていた助手席に愛する娘さんを乗せ、自らは運転席でマニュアル車を操る日が来るかもしれません。

そしてもし、助手席の娘さんから昔の自分とまったく同じように、早くもっと広くて静かな車に乗り換えてほしいと言われてしまったとしたら。その時こそ、かつて父親が見せた少し困ったような、なんとも言えない微妙な表情の本当の意味を親として理解し、Aさん自身もまったく同じ顔をしてしまうのではないかと想像しているそうです。

「でも、今度こそは絶対に、簡単には手放さないつもりです」と語るAさんの言葉からは、親から子へ、そして孫へと紡がれていく、車を通じたかけがえのない温かい絆が感じられます。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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