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『認知症になりやすい人』には“共通点”があった。脳の働きを低下させる「3つの生活習慣」とは?【医師が解説】

  • 2026.8.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「将来、認知症にならないか不安」「最近、物忘れが増えた気がする」と感じていませんか?

予防のために「とにかく運動を始めよう」といきなり筋トレに挑戦しようとしているなら、少し待ってください。実は、良かれと思って始めた「自己流の激しい運動」が、かえって心臓や関節に急激な負荷をかけ、怪我により動けない状態を招くことで、結果的に認知症のリスクを高めてしまうことがあるのです。

では、なぜ動かない生活が脳に悪影響を及ぼすのでしょうか?そして、安全かつ効果的に脳を活性化させるには、どのような習慣を取り入れればよいのでしょうか。
今回は、急性期病院の麻酔科医として全身管理や最前線の医療に携わる松岡雄治さんに、脳の血流を守り、認知症リスクを下げるための正しいアプローチについて詳しく解説していただきました。

「座りっぱなし」が脳を衰えさせる?血流低下が招く認知症リスク

---加齢以外にも、認知症のリスクを高める生活習慣があるというのは本当でしょうか?なぜ血流が関係しているのですか?

松岡雄治さん:

「加齢だけでなく、運動不足による身体活動の低下や、高血圧、糖尿病などの生活習慣病が脳血流を低下させ、認知症リスクを高めます。また、動脈硬化による脳血流の停滞も、脳の働きを低下させる要因になります。

日常生活において体を動かさない状態が続くと、脳のネットワークを支える血管がしなやかさを失う可能性があります。さらに、高血糖や脂質異常症などの生活習慣病が重なると、脳の微小な血管に動脈硬化が進みます。

脳の血流が慢性的に低下すると、神経細胞を維持・成長させるために不可欠な『神経栄養因子』が増えにくくなります。同時に、免疫機能の活性化や抗炎症作用といった、脳を守るシステムも十分働きにくくなってしまいます。これにより、神経細胞の減少や脳の細い血管の障害が促され、認知障害の進行へとつながると考えられています。

これに拍車をかけるのが『座りっぱなし(座位時間の増加)』の習慣です。一日の大半を座ったまま過ごすことは、脳への血流をさらに滞らせる危険因子であることが分かっています。

脳の働きを低下させる生活習慣には、以下のようなものがあります。
日常の不活動(座りっぱなし):筋肉のポンプ機能が働きにくく、脳への血流循環が低下します。
喫煙や過剰な飲酒:脳の血管に負担をかけ、動脈硬化を進行させます。
生活習慣病の放置:高血圧や高血糖が、脳の微小な血管に静かなダメージを与え続けます。

これらの習慣の蓄積が、脳の働きを支える環境に悪影響を及ぼす根本的な原因となります。」

自己流の激しい運動は逆効果?高齢期に潜む「動けないリスク」

---脳の血流を良くしようと、いきなり強い筋トレや運動を始めるのは良いことでしょうか?

松岡雄治さん:

「自己流の強い筋トレや準備不足の運動は、心臓や関節に急激な負荷をかけ、かえって怪我や心血管疾患のリスクを高めることがあります。

不慣れな強い運動は、交感神経を刺激し、体内でカテコールアミンを急増させ、血圧や心拍数を急上昇させます。これは、古くなったホースに突然強い水圧をかけるようなものです。脳や心臓、血管に急激な負担がかかるため、リスクがあります。

さらに高齢期になると、骨や筋肉、関節などの『運動器』は、しなやかさを失っていることもあります。この状態での過度な負荷をかける筋トレは、関節痛や靭帯損傷を招くリスクです。さらに、怪我などの痛みによって『動けない状態』に陥ると、筋肉量は急激に失われてしまいます。筋肉量が低下(サルコペニア)すると、脳への血流も低下しやすくなり、結果として認知症リスクを高めてしまうのです。

ただし、これらの怪我は、運動の強度を検討したり運動前のウォームアップや終了後のクールダウンを徹底したりすることで対策できます。

自己流・過度な運動に潜むリスクには、次のようなものがあります。
・急激な血圧上昇による血管への負担:ホルモンの作用で血管が収縮し、脳卒中などを誘発するリスクがあります。
・関節や靭帯の損傷:自己流のフォームが、膝や腰などの関節を痛める原因になります。
・怪我で動けないことによる筋肉量低下:怪我で寝込むことにより、全身の筋肉量と脳血流が低下し、結果として認知機能の低下を招きます。

良かれと思った運動が逆効果にならないよう、ご自身の状態に応じた『正しい運動』を知ることが重要です。」

明日からできる予防策!「+10分」の活動と「コグニサイズ」

---安全に認知症を予防するために、明日から日常生活で実践できる具体的な方法を教えてください。

松岡雄治さん:

「明日からできる予防策は、普段の活動を『10分増やす』こと、脳と体を同時に使う『コグニサイズ』の実践です。

認知症予防に、息が切れるようなハードな運動は必要ありません。日常生活のなかで、少しだけ活動量を増やす工夫をするだけで、脳血流を高めることができます。まずは、以下の3つの具体的なアクションをおすすめします。

・『+10(プラス・テン)』の意識:わざわざ着替えず、掃除機をかける、少し速歩きで買い物に行くなど、日常の活動を今より10分増やします。
・転倒を防ぐ安全なストレッチ:痛みがなく気持ちいいと感じる程度(いた気持ちいい強度)で、手足の筋肉を10〜30秒ゆっくり伸ばし、怪我を予防します。
・二重課題(コグニサイズ)の導入:散歩をしながらしりとりをする、足踏みをしながら拍手をするなど、頭と体を同時に動かします。

特に『10分増やす』プラステンでは、厚生労働省の身体活動普及啓発(『アクティブガイド』等)の根拠となった研究成果で、『死亡のリスクを2.8%』『生活習慣病発症を3.6%』『ガン発症を3.2%』『認知症の発症を8.8%』低下させる可能性が示唆されています。

しかし、自力で続けるのが難しいと感じたら、決して一人で抱え込まず、医療やかかりつけ医を頼ってください。整形外科的な持病や生活習慣病がある方は、医師から適切な『運動の処方』を受けるとより安全です。」

無理のない「正しい運動」が、健やかな脳と未来を守る

認知症を予防するために、息が切れるようなハードなトレーニングに無理して取り組む必要はありません。大切なのは、日々の生活の中で「座りっぱなし」の時間を減らし、今より「10分多く動く」という小さな工夫を積み重ねることです。

良かれと思った自己流の運動で怪我をしてしまい、動けなくなることこそが一番の避けるべきリスク。もし不安がある場合は、ひとりで抱え込まずにかかりつけ医に相談し、適切な「運動の処方」を受けましょう。

明日からの「+10分」の心がけが、脳の血流を促し、生き生きとした未来を守る大きな一歩になります。


監修者:松岡雄治
監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。"

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