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“38度台の熱”が続く70代女性→「風邪っぽさはないし…」不思議に思って病院を受診すると…CT検査で判明した“恐ろしい病気”

  • 2026.10.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

「熱が下がらないけれど、風邪っぽさもないし、どこが悪いのかわからない」——ご高齢のご家族がそんな状態になると、周りも不安になりますよね。年齢を重ねると、痛みなどの症状がはっきり出ないことも多く、発熱の原因にたどり着くまで時間がかかることがあります。実はそのなかに、あまり知られていない「筋肉の奥にうみがたまる」病気が隠れていることがあるのです。

今回は、原因のわからない発熱で入院し、精密検査の末に「腸腰筋膿瘍」と診断された女性のエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

腎盂腎炎かと思ったら……尿はきれいなまま

Kさん(76歳・女性)は、数日続く38度台の発熱で入院されました。咳やのどの痛みはなく、「そういえば、少し腰がだるいかしら」という程度。ご高齢の女性の発熱では、腎盂腎炎(じんうじんえん:腎臓に細菌が入って起こる感染症)がよく見られるため、当初はその可能性が疑われました。

ところが、尿検査の結果はまったく問題なし。肺炎や胆のうの炎症など、発熱の原因になりやすい病気も見つかりません。

お見舞いに来た娘さんは「熱の原因がわからないって、いちばん怖いです。母は痛みをあまり口にしない人なので……」と、心配そうに話していました。

そこで全身を詳しく調べることに。CT検査を行ったところ、背骨の脇にある筋肉の中に、うみのたまりが見つかりました。診断は「腸腰筋膿瘍」です。

「腸腰筋膿瘍」ってどんな病気?

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

腸腰筋(ちょうようきん)は、背骨の腰のあたりから骨盤の内側を通り、太ももの付け根までつながる筋肉です。脚を持ち上げたり、姿勢を保ったりするのに欠かせない筋肉で、体の奥深く、腎臓のすぐ近くにあります。

膿瘍(のうよう)とは、細菌の感染によってうみが袋状にたまった状態のこと。つまり腸腰筋膿瘍は、この筋肉の中にうみがたまる病気です。

原因は大きく2つあります。体のどこかから血液に乗って細菌が運ばれてくる場合と、背骨や腸、腎臓など近くの臓器の感染が広がってくる場合です。ご高齢の方や、糖尿病などで抵抗力が落ちている方に起こりやすいといわれています。

やっかいなのは、症状がはっきりしないこと。発熱のほかに、腰や足の付け根の痛み、脚を伸ばすと痛む、歩きにくいといったサインが出ることもありますが、ご高齢の方では「なんとなくだるい」だけということも少なくありません。体の奥にあるため、外から触ってもわからず、血液検査だけでは診断がつかないことがほとんどです。

診断にはCTやMRIなどの画像検査が決め手になります。Kさんの「少し腰がだるい」という言葉も、いま振り返れば大切な手がかりだったのかもしれません。放置すると細菌が全身に回り、敗血症など命に関わる重症に陥る危険があるため、早期発見と適切な治療が極めて重要です。

抗生剤で下がらない熱。「ドレナージ」でうみを外へ

治療の基本は、抗生剤(細菌をやっつける薬)の点滴です。膿瘍が小さければ、点滴だけで治ることもあります。

しかしKさんの場合、数日たっても熱は下がりませんでした。うみの袋の中には薬が届きにくいため、ある程度の大きさがあると、うみそのものを外へ出してあげる必要があるのです。

「管を入れて、たまったうみを外に出しましょう。熱の元を直接取り除く処置です」

主治医がすすめたのは「ドレナージ」という処置でした。局所麻酔をしたうえで、CTや超音波で位置を確かめながら、背中側から細い管を膿瘍まで入れ、うみを体の外へ出します。管だけではうみが出きらない場合などには、切開してうみを出す手術が必要になることもあります。

Kさんは「麻酔がしてあっても、少し押されるような痛みはありましたよ」と笑いながら振り返っていらっしゃいました。ところが翌日には熱が下がり始め、だるさもぐっと楽に。その後も抗生剤の治療を続け、うみが出なくなったところで管を抜きました。管を抜いたあとも熱は下がったまま。いまは退院が見えてきたところです。

「やっと原因がわかって、母も私も本当にホッとしました」——娘さんの表情にも、ようやく笑顔が戻っていました。

「原因のわからない熱」は、小さなサインも伝えて

腸腰筋膿瘍は、早く見つけて適切に治療すれば、回復が期待できる病気です。一方で、診断が遅れると感染が全身に広がり、重症化する可能性もあります。

ご自身やご家族に、次のような様子があれば、早めに医療機関を受診し、医師に伝えてください。

  • はっきりした原因のわからない熱が数日続いている
  • 熱と一緒に、腰や背中、足の付け根に痛みや違和感がある
  • 脚を伸ばすと痛む、歩き方がいつもと違う
  • 糖尿病などで、もともと感染症にかかりやすいと言われている

「ちょっと腰がだるい」。そのひと言が、診断への近道になることもあります。我慢強いご家族こそ、そばにいる人が小さな変化に耳を傾けてあげてくださいね。


執筆・監修:小内友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士 女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。 【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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