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「最近少し便秘がち」トイレで踏ん張った60代女性→直後、血便と激しい腹痛に襲われ…女性を待ち受けていた“恐ろしい病名”

  • 2026.8.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理や救急・全身管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。今回は、便秘や脱水などが引き起こす「虚血性大腸炎」について解説します。

「最近少し便秘がちだったけど、そろそろかしら。やっとスッキリするわ」。日々を忙しく過ごすKさん(60代女性)が、トイレで力を込めて踏ん張ったのは、よくある日常の一コマでした。

しかし直後、便器が赤く染まるほどの血便と激しい腹痛が彼女を突然襲いました。病名は、「虚血性大腸炎」でした。
入院加療で事なきを得たものの、彼女は今も「排便のたびに血が出ないか」という不安を抱え、トイレに行くこと自体が億劫になってしまいました。「あの時、無理にいきまなければよかった…」と深い後悔を口にしています。

なぜ、トイレでいきむという誰しもが行う何気ない行動が、大腸からの出血を招くのでしょうか。

虚血性大腸炎は「腸の突発的な酸欠」

なぜ、いきむ行動が大腸に炎症を起こし、出血させるのでしょうか。大腸の粘膜へ行く細い血管の血流が一時的に遮断されるメカニズムは、以下のように進行します。

【腸が酸欠状態に陥るフロー】

  1. 腹圧の上昇(いきみ):便秘によってトイレで強く踏ん張ると、お腹の中の圧力(腹圧)が急に上がります。
  2. 血管の圧迫(遮断):この圧力が大腸の壁を強く押し、粘膜に血液を送る細い血管を一時的に潰します。例えるなら、水の流れるホースを上から踏みつけ、血流をせき止めたような状態です。
  3. 組織の酸欠(虚血):酸素と栄養を絶たれた腸の粘膜が、呼吸困難のような酸欠状態(虚血)になります。
  4. 粘膜のはがれ落ち(出血):酸欠ダメージを受けた粘膜の一部がはがれ落ち、激しい痛みを伴いながらその傷口から出血します。

たまの「便秘」が「危険な虚血」につながるメカニズム

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「便秘くらい誰にでもある」「いきんだだけでそんなことが起こるの」とみなさんが驚かれるのは無理もありません。ここには複数の背景が重なっているのです。

大腸の粘膜は私たちが思う以上に繊細な血管で守られています。特に糖尿病や高血圧などの生活習慣病をお持ちの方は、動脈硬化によって元から大腸の血管が硬く狭くなっています。こうした血管の状態を背景に持つ高齢者では、小さないきみによる「腸の圧力の上昇」が重なることが引き金になるリスクがあります。

通常、健康な状態であれば一時的にいきんでも、踏ん張るのをやめれば血流はすぐに元通り回復します。しかし、硬い便が留まり続けて血管が圧迫されているところ(腸の要因)に、脱水や血圧低下による血流の滞り(血管の要因)が同時に重なると、血管が潰れて高度な虚血状態になってしまうのです。つまり、いきみだけでなく、脱水や急激な腸管の収縮なども合わさることで発症リスクが高まります。

便秘や食中毒などと見分ける3つのサイン

ただの便秘や食中毒と、腸が深刻な酸欠ダメージを受けている緊急事態を見分けるために、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 突然起きる「激しい腹痛(特に左下腹部)」

虚血性大腸炎は、大腸の左側(S状結腸や下行結腸など)に起こりやすい病気です。そのため、左下腹部がギューッと締め付けられるような激しい痛みが突然生じるのが特徴です。ただし、右側の大腸に生じる「右側型」では右下腹部や腹部全体に痛みが出現することもあり、重症化しやすいため注意が必要です。

2. 激痛の直後に続く「止まらない水様性の下痢」

酸欠ダメージを受けた大腸が水分を正常に吸収できなくなります。傷んだ腸管が中身を押し出そうと過剰に動き、水のような下痢を繰り返します。

3.便器が染まるほどの「鮮血の血便」が出る

傷口から溢れ出た血液が下痢便と混ざって排出されます。真っ赤な血液が便器に広がり、目に見える出血として現れる決定的なサインです。

突然の血便を経験しないために

「まさかトイレでいきんだだけで、これほど重大な状態になるなんて」と思われるのは無理もありません。

予防の第一歩は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防やコントロールです。また、普段から食物繊維や十分な水分を意識して摂り、無理な下剤の使用を避けて「いきまなくてもよい排便習慣」を作ることが大切です。

もし、突然の激しい腹痛や血便が出たときは、我慢せずに消化器内科を受診してください。重症化すると、大腸が深刻なダメージを受けて緊急手術が必要になったり、回復後に大腸が狭くなる「狭窄(きょうさく)」を起こしたりすることがあります。

虚血性大腸炎は、急激に発症しているようでいて、実は日々のダメージ脱水などの条件が蓄積した結果です。早めに医療を活用して、排便習慣も快適に整えておきましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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