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「胃薬を飲めば大丈夫」起きたときの“胸やけ”を放置→数十分後、痙攣で救急搬送され…50代男性に告げられた“恐ろしい病気”

  • 2026.8.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「昨晩の夕食がもたれたのだろう。胃薬を飲めば大丈夫さ」

早朝、胸が焼け付くような不快感で目が覚めたKさん(50代男性)。心配する妻の「念のため病院に行ったら?」という声を「食べ過ぎなだけ」と笑い飛ばしていました。

しかし、再び布団に入った数十分後、彼の心臓の血管は強く痙攣し、心停止状態に陥って救急搬送されました。救急外来で告げられた診断名は「冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)」。

一命は取り留めたものの、現在は「また夜が来たら心臓が止まるのでは」という不安から睡眠導入剤が手放せない過酷なリハビリを続けながら、「あの時、ただの胃もたれだと油断せず、すぐに病院に行けばよかった…」と深い後悔を口にしています。なぜ、ただの胸焼けのような違和感が、睡眠中に命を脅かす事態になるのでしょうか。

冠攣縮性狭心症は睡眠中の「心臓への過酷な負荷」

狭心症は、通常運動中などの負担がかかった時に起こるものです。

しかし、この冠攣縮性狭心症は、安静時に起こることもあるのが特徴的です。文字通り冠(動脈)が攣縮することによる狭心症ということです。しかし、なぜ、睡眠中という無防備な時間に心臓が危機に陥るのでしょうか。そのメカニズムは、以下のように進行します。

【睡眠中の心臓に負担がかかるフロー】

  1. 自律神経の切り替わり:夜間から明け方にかけて、自律神経が切り替わる際、そのバランスが崩れて心臓の血管が異常に過敏になります。
  2. 太い血管の過剰収縮(痙攣):心臓に酸素を送る太い血管(冠動脈)が、自律神経の刺激(アセチルコリンなど)によって一過性に過度な収縮を起こします。
  3. 心筋の深刻な酸欠状態:血管が極端に細くなり、心臓の筋肉への血液供給が滞って激しい酸欠(虚血)が生じます。
  4. 不整脈と心停止のリスク:この状態が長く続いたり、血流が再開したりするタイミングで危険な不整脈(心室細動など)を誘発し、睡眠中に自覚のないまま心停止へ至る危険性があります。

「たまの胸焼け」と見過ごさないために

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「昨日お肉を食べすぎたから胃がもたれただけだ」日々を懸命に生きる皆さんが、明け方の胸の苦しさをただの胃の不調と捉え、やり過ごしてしまうのは無理もありません。

しかし、本件を通してぜひお伝えしたいことがあります。実は、この冠攣縮性狭心症は欧米人に比べて日本人に発症しやすい傾向があります。

最大の危険因子は「喫煙」です。タバコの煙が血管の内側を傷つけ、血管を広げる物質(一酸化窒素)の働きを低下させてしまうと考えれています。さらに、タバコを吸わなくても、ストレスや「アルコールの多飲(特に深酒の翌朝)」もまた、血管の異常収縮を引き起こす引き金となりえます。これらが重なると、心臓の血管は睡眠中に突然強く縮み上がってしまうのです。

見過ごさないために、確認すべき3つのサイン

ただの逆流性食道炎と、心臓に強い負担がかかっている冠攣縮性狭心症を見分けるため、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 「夜間から明け方の安静時」にだけ不快感が起こる

逆流性食道炎は食後2〜3時間に起きやすいのに対し、心臓の痙攣は食事の時間に関係なく、夜間から早朝の睡眠中や安静時に集中します。

2. 胸の真ん中が「締め付けられる、顎や肩に抜ける」ように痛む

みぞおちの焼け付く感じだけでなく、胸の中央の圧迫感が、顎や左肩、左腕などへ広がっていく(放散痛)のが特徴です。

3.「速効性の硝酸薬(ニトログリセリンなど)」で数分以内に落ち着く

胃薬や水を飲んでも変わらない痛みが、硝酸薬を舌下で使用すると1〜3分で落ち着きます(すでに処方されている方の場合)。

早朝の胸の違和感には要注意

「ただの食べ過ぎだと思うけどな」そうやって原因が分からないまま悩み、受診を先延ばしにしてしまうのはよくあることですし、これまでの油断を悔やむことはありません。

今日からできる一歩は、「明け方に胸が苦しくなったら、必ず時計で時間を確認する」ことです。強い胸痛が15分以上続く場合や冷や汗・意識の混濁を伴う場合は、受診を待たず速やかに救急車(119番)を呼ぶようにしてください。

その明け方の苦しさと突然の不安を取り除き、温かい朝の日常をこれからも安心して楽しむために、ぜひ医療を頼ってください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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