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「思ってもみませんでした…」トイレにすぐ行きたくなる72歳女性、泌尿器科を受診したところ…告げられた“予想外の検査結果”

  • 2026.9.16
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

「トイレに行ってもすぐにまた行きたくなる」このような症状があると、多くの方は膀胱に尿を溜めておく力が過剰にはたらく「過活動膀胱」を思い浮かべるのではないでしょうか。

実際、加齢とともに頻尿や尿もれに悩む方は少なくありません。でも、似たような症状の裏に、実は正反対の原因が隠れていることもあります。

今回は、長年の糖尿病が原因で「低活動膀胱」になっていたKさんのエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

「いつもの過活動膀胱」だと思っていた

72歳の女性、Kさんは長年糖尿病の治療を続けてこられました。

以前から尿が近く、時には尿もれを感じることもあったそうですが、ご本人は加齢によるものだろうと受け止めていたといいます。

ところが最近になって、トイレに行ってもすぐにまた行きたくなる感覚が強くなりました。

「以前からの過活動膀胱がひどくなったのだろう」と考え、しばらく様子を見ておられたそうです。「まさか尿がきちんと出せていないなんて、思ってもみませんでした」と、Kさんは当時の心境を話してくださいました。

検査でわかった「残尿250ml」

気になる症状が続くため、泌尿器科を受診されたKさん。

検査で分かったのは、排尿後も膀胱の中に250mlほどの尿が残っている(残尿)という状態でした。

本来、排尿後の膀胱にはほとんど尿が残らないはずです。しかし、膀胱の中に尿が多く残っていると、少し尿が溜まっただけですぐに尿意を感じてしまうため、実際には「尿が出にくい」状態であるにもかかわらず、頻尿や過活動膀胱のように感じられることがあります。

糖尿病が引き起こす「低活動膀胱」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Kさんが医師から告げられたのは、「低活動膀胱」という診断でした。低活動膀胱とは、膀胱の筋肉(排尿筋)の収縮する力が弱まり、尿をしっかりと押し出せなくなる病気です。

糖尿病の合併症というと、視力の低下(糖尿病網膜症)や腎機能の低下(糖尿病腎症)がよく知られていますが、長年血糖の高い状態が続くと、全身の末梢神経が徐々に障害を受ける「糖尿病性神経障害」が起こることがあります。この神経障害が膀胱の働きをコントロールする神経に及ぶと、神経因性膀胱(神経の障害によって膀胱の機能がうまく働かなくなる状態)を引き起こすことがあります。今回の低活動膀胱は糖尿病性神経障害によって引き起こされた可能性があるということです。

糖尿病を長く患っている方のうち、どの程度の方に低活動膀胱がみられるかは報告によって幅がありますが、初期には自覚症状に乏しく、Kさんのように別の症状だと思い込んだまま進行しているケースも少なくないといわれています。診断のためには、排尿後にどれくらいの尿が膀胱に残っているかを調べる残尿測定や、尿の勢いを調べる検査などが行われます。

自己導尿と内服薬で、暮らしが変わった

Kさんにはまず、内服薬に加えて、1日2回の自己導尿(専用のカテーテルを使い、自分で尿を排出する方法)が勧められました。

「慣れれるまではうまく管が入らず、大変でした」とKさんは振り返っておられます。それでも根気強く続けるうちに、尿の回数が減り、夜もぐっすり眠れるようになったといいます。

そのうち残尿も少しずつ減っていき、今では内服薬による治療だけで普通にトイレで排尿し、日常生活を送れるようになっています。

「出にくい」のに「近い」と感じたら、一度検査を

頻尿や尿もれといった症状は、膀胱に尿を溜めにくい「過活動膀胱」だけでなく、Kさんのように尿をうまく出し切れない「低活動膀胱」でも起こることがあります。特に糖尿病を長く患っている方は、自覚がないまま膀胱の働きが弱っている場合もあるため、頻尿の背景に思い当たる持病がある方は、一度泌尿器科で残尿の検査を受けてみることをおすすめします。

「近い」と「出にくい」は、時に同じ顔をしているのかもしれません。


執筆・監修:小内友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士 女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。 【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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