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父の死後“800万円の借金”が発覚→「相続放棄すれば大丈夫」と思いきや…数ヶ月後、40代娘にかかってきた電話に“絶句したワケ”

  • 2026.9.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。アディーレ法律事務所の弁護士・正木です。

「借金があるなら『相続放棄』をすればいい」と聞いたことがあるかもしれません。

確かに、相続放棄をすると、亡くなった方の財産や借金を引き継がずに済みます。ところが、「これで相続の問題は終わった」と安心していたのに、思いもよらぬ親族とのトラブルが起きてしまったケースをご紹介します。

父の死後に判明した800万円の借金

40代女性会社員のAさん(仮名)は、故郷で暮らしていた父を亡くしました。父の両親は若い頃に他界しており、5年前に母も先立ち、父は一人暮らしでした。Aさんには妹が一人います。Aさんは仕事が忙しく、父とは年に1~2回会う程度。心配する気持ちはあったものの、亡くなる直前まで父がどんな生活をしていたのか、詳しく知りませんでした。

ところが、葬儀を終え、妹と父の家へ行くと、引き出しの中から消費者金融からの請求書が出てきたのです。さらに別の棚からは知人からの借用書、入院費用の請求書まで次々に見つかりました。
調べていくうちにわかった借金は、約800万円。大きな病気で入院・手術をしていた父は、年金だけでは生活費や医療費がまかなえず、借金を重ねていたようです。

「お父さん、こんなに借金があったなんて。困ったことがあればいつでも連絡してって言っていたのに」
Aさんと妹は、父の通帳を確認しましたが、預貯金はほとんどありませんでした。実家も古いため売却しても借金を返せるほどの価値はなく、他にめぼしい財産もありません。

相続の対象になる遺産には、不動産や預貯金といったプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
「このまま相続したら、私たちが借金を返さなければいけないの…?」
妹の言葉に、Aさんは不安になりました。
「住宅ローンの返済に子どもの大学進学、老後の備えもあるし…とてもそんな余裕ないよ」

相続放棄の選択

自宅に戻ったAさんは、夫にこれまでの状況を説明しました。すると、夫は、「そういえば…相続したくないときに『相続放棄』って手続きがあるって。この前テレビで見たんだけど、知ってるか?」と教えてくれました。

インターネットで調べてみると、「相続放棄」は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含め、全ての遺産を相続しないための手続きだとわかりました。原則として、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に手続きをする必要があります。

Aさんも妹も故郷を離れており、父の家を手放すことにも迷いはありません。

「それなら、相続放棄しましょうよ」
「弁護士に相談した方がいいかしら?」
「遺産もないし、裁判所の案内を見ながら手続きはできそうね」

Aさんと妹は自分たちで行うことに決め、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしました。後日、裁判所から相続放棄申述受理通知書が届き、Aさんも妹もほっとしました。

「相続放棄できた。これで借金を払わなくていいのね」

これで終わった…はずだった

しかし、1か月後、消費者金融から電話がかかってきました。

「お父様の借金について、返済をお願いしたいのですが」
「え?私も妹も相続放棄してますよ」

驚いたAさんがそう伝えると、「そうですか。では、証拠として相続放棄申述受理証明書を提出してもらえますか?」と言われました。相続放棄したことは、債権者に自動的に通知されるわけではないからです。

証明書を提出すると、Aさんたちに返済を求める連絡はなくなりました。

「これで大丈夫だわ」

Aさんは、ようやく肩の荷が下りた気がしました。
「お父さんの相続問題はこれで終わり」
そう思っていたのです。

叔父に飛び火した借金問題

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ところが数か月後、Aさんの携帯電話が鳴りました。電話の相手は父の弟でした。叔父はいきなり、「おいA、兄さんに借金があったのか?」と聞いてきたのです。

突然の言葉にAさんは戸惑いました。

「え?なんで知っているの?」
「消費者金融から俺のところに今連絡があったんだ。兄さんの借金を払ってくれって」
「どうして?」
「Aたちが相続放棄をしたから、俺が相続人になったって言われたんだ」
「…え?」

Aさんは言葉を失いました。自分たちが相続放棄をしたことで、叔父が父の遺産を相続する「相続人」になっていたのです。

相続放棄により、相続放棄をした人自身は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。相続には優先順位がありますが、順番が先の相続人全員が相続放棄することにより、それまでは相続人ではなかった後順位の親族が相続人になるのです。

「なんで何も教えてくれなかったんだ?隠してたのか?」
叔父の声は次第に強くなっていきました。

「叔父さん、違うよ。そんなつもりじゃ……」
「自分たちが借金を背負いたくないから、黙って相続放棄したんだろ?俺に借金を押しつけたんじゃないのか?もうお前たちとは絶縁だ!」
叔父の言葉に、Aさんは何も言えませんでした。

相続放棄は「自分だけの問題」ではない

相続放棄は、法律で認められた正当な手続きです。Aさんと妹は、借金を背負いたくない一心で相続放棄をしたのであり、相続放棄をしたこと自体に問題があったわけではありません。

Aさんは今でも思います。
「あのとき、叔父さんに一度でも電話していれば……」

Aさんにとって一番の失敗は、「相続放棄をしたら全部終わり」と思い込んでいたことです。
後順位の相続人に相続放棄したことを必ず知らせなければならない法的義務があるわけではありません。それでも、相続放棄をすると次に誰が相続人になる可能性があるかを確認し、相続放棄をしたことや借金の存在を早めに伝えておけば、親族とのトラブルは避けられたかもしれません。

※実際の事例を参考に構成したストーリーです。


執筆・監修:弁護士 正木 裕美(アディーレ法律事務所)
南山大学法学部、及び同大法科大学院卒。一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。テレビの情報番組などにもコメンテーターや法律解説者として多く出演し、悩みを抱えた方に寄り添いながら、難しい法律もわかりやすく的確に解説することに定評がある。愛知県弁護士会所属。

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