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「今、何時だと思ってるんだ!」毎日残業で電話をかけ続けた私。だが、受話器の向こうからの声に励まされた結果

  • 2026.7.25

減らない発信リスト

コールセンターで働いていたころ、私の仕事はほとんどが電話をかけることでした。手続きの確認や書類の案内を、日中につながらなかった方へこちらからかけ直します。

「あと10件、残ってます」

「私は8件。今日も遅くなりそうですね」

隣の席の同僚とそう言い合うのが、夕方の合図でした。定時を過ぎてもリストは減らず、受話器を置くたびに次の番号が並びます。

日中に出られない方ほど夜のほうがつながるので、終わりの時刻は毎日、後ろへずれていきました。

その日も気づけば22時になっていました。窓の外は真っ暗で、フロアに残っているのは数人だけです。

(こんな時間に連絡が来るなんて、思わないよな)

そう考えながら、それでも指は次の番号を押していました。

遅すぎる、という声

3件目で、低い声が返ってきました。

「今、何時だと思ってるんだ!」

「申し訳ございません。日中にご連絡が取れず、この時間になってしまいました」

「遅すぎるよ。用件は明日にしてくれ」

受話器の置かれる音は、責めるというより疲れた響きでした。ごもっともです、と頭を下げてから、私は次の番号に指を伸ばします。

その次の方にも、似たことを言われました。

「非常識だと思わないの」

「はい、失礼いたしました」

謝る言葉だけが上手になっていく気がして、メモを取る字がだんだん雑になります。

受話器の向こうから

7件目の呼び出し音は、ずいぶん長く鳴りました。切ろうかと思ったところで、年配の男性の声がつながります。用件を伝え終えると、少しの間がありました。

「22時なのに、まだ帰れてないの」

「……はい。もう少しで終わりますので」

「女の子がこんな時間まで仕事してるの。早く帰らなきゃだめだよ」

手元のリストから、目が離れました。

「ご迷惑をおかけして、すみません」

「迷惑じゃないよ。用事はちゃんと分かったから。早く帰ったほうがいいよ」

「ありがとうございます」

声が少し震えたのが、自分でも分かりました。

電話を切っても、リストの件数はひとつ減っただけです。残りの番号も、明日の分の番号も、消えてはくれません。それでも受話器を持ち直したとき、肩から力が抜けていました。

「今の方、優しかったですね」

隣の同僚が、モニターから顔を上げます。

「うん。帰りなさいって、言ってくれた」

その夜の帰り道は、駅までの距離がいつもより短く感じました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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