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芸術の都ウィーンを巡る、選りすぐりの注目スポット

  • 2026.7.19
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麗しき芸術の都ウィーンで、クラシック音楽やハプスブルク家ゆかりの名画・宮殿鑑賞といった王道観光の一歩先へ行ってみませんか? 初めてウィーンを訪れる方はもちろん、リピーターの方でも楽しめる、ウィーンっ子たち注目の最新おすすめスポットをご案内します。2年間の修復を経て今年9月から一般公開されるグスタフ・クリムトの天井壁画や、モダンアートの新たな注目スポット、さらには隠れたグルメスポットなど、ウィーンの最旬情報をお届けします。

ブルク劇場で堪能するクリムトの天井画『タオルミーナの劇場』

KARL HEIDL

創設250周年を迎えたオーストリア・ウィーンの国立ブルク劇場では、記念事業の一環として北側階段ホールの天井画を2年かけて修復。修復用の足場から、間近でクリムトや弟エルンストなどの初期作品を鑑賞するツアーが、2026年8月14日まで開催されています。9月の新シーズン開幕以降は地上から鑑賞できます。

最高の芸術をすべての人へ、皇帝が築いた市民のためのブルク劇場

1776年、最初のブルク劇場は時のハプスブルク皇帝ヨーゼフ2世(マリア・テレジアの長男) によって、王宮(ホーフブルク宮殿) の敷地内に建てられました。「ドイツ語で演じる、市民のための国立劇場」としてスタートし、俳優は皇帝自らが雇用、国からも手厚い支援を受け、毎日異なる演目や新作が上演されました。「すべての人々に良質な教育を」という理念を掲げ、すべてにおいて最高レベルのクオリティが求められたといいます。

現在の劇場は、1888年、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が都市改造計画の中で城壁を壊して造ったリングシュトラーセ(環状大通り)沿いに建設されました。国立歌劇場を皮切りに次々と壮麗な公共機関や文化施設が建てられて、最後を飾る建築の一つとして最新舞台技術を備えて完成。

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設計は、オーストリアを代表する建築家ゴットフリート・ゼンパー(※1) とカール・フォン・ハーゼナウアーが共同で担当。全長約140mのネオ・ルネサンス様式(※2)で、左右対称の壮大な外観は宮殿や神殿を思わせます。劇場内部左右には特別な階段が設けられました。正面向かって右側(南側)は皇帝のみが通れる階段、左側(北側)はハプスブルク家貴族や一般市民が使用。とくに皇帝専用エントランスホールの天井や壁面には、演劇をテーマにした豪華な絵画が描かれました。

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その絵師に抜擢されたのが、ウィーン世紀末芸術の第一人者、グスタフ・クリムトです。弟のエルンスト、友人のフランツ・マッチュとともに立ち上げたばかりの芸術カンパニーで請け負いました。彼らは新ブルク劇場の両サイドの階段エントランスの天井に、1887年秋から翌年春までのわずか6か月で10の壁画を完成させます。上の写真は右階段(南)に描かれたクリムトの『シェイクスピアのグローブ座』です。

クリムト初期の作風と鑑賞ポイント

修復された天井画はこの『タオルミーナの劇場』のほか、フランツ・マッチュの『アポロンの祭壇』『古代の即興詩人』『中世の神秘劇』、エルンストの『野外広場の壇上に立つ道化者』があります。 KARL HEIDL

今回の大修復は左側(北側)階段ホールの天井画で、ハイライトとなる作品が『タオルミーナの劇場』。タテ5.6m×ヨコ4mサイズの大壁面には、イタリア・シチリア島のタオルミーナ古代劇場が描かれ、白い衣装をまとって横たわる王が客人を招き、食事の後に舞踊を披露させる場面が描かれています。シチリア島の舞踊を舞う踊り子や、ギリシャのフルート、絨毯のエキゾチックな模様など多様なモチーフが登場し、クリムトらしい異国趣味を感じさせます。

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当時26歳だったグスタフ・クリムトは、すでに独自の現代絵画を模索していましたが、新ブルク劇場の仕事では古典的なルネサンス風の描写を求められました。ここで新しい表現を試してみたかったクリムトですが、弟のエルンストや友人フランツから「今は我慢して大きなチャンスをつかむべき」と説得され、その要望に応じたといいます。

この作品の中で、クリムトらしいポイントを上げるなら、比較的平面的な画面構成で、遠近法をあまり用いていないところでしょう。後のクリムト作品につながる個性の萌芽を見ることができます。

ガス灯から電灯へ、画家も民衆も楽しんだ新時代

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これらの鮮やかな色彩と質感を出すためのプロセスについて、舞台安全管理担当のカール・ハインドルさんはこう語ります。「レンガの壁面を油彩画のように滑らかに仕上げるために特殊な技法が用いられています。コンクリートと大理石の粉末を混ぜた下地を施した後、油やワックス、樹脂で表面をコーティングして絵の具の油分が下地に吸収されるのを防いでいます」。

絵を描く前に下絵の輪郭を白チョークで転写し、その点線に沿って油絵具で彩色されました。新劇場は従来のガス灯に代わって電灯を採用。明るく快適な館内では観客は壁画の細部まで鑑賞でき、クリムトたちも十分な光の下で制作に取り組むことができました。

『シェイクスピアのグローブ座』の下絵が劇場内の2階に展示されています。クリムトとエルンスト、フランツ3人が描かれているのでお見逃しなく。またブルク劇場では、ドイツの古典演劇から世界で話題の翻訳作品、現代作家による新作など幅広く取り上げていますので、観劇もぜひ楽しんでみてください。

問い合わせ先
ブルク劇場
所在地/Universitätsring 2, 1010 Wien
TEL/+43 1 514 44 4545
URL/www.burgtheater.at

ハイディ・ホルテン・コレクションで出会う珠玉の現代美術

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最旬のおすすめアートスポットといえば、アルベルティーナ美術館の斜向かいに位置する私営美術館「ハイディ・ホルテン・コレクション」。

ハイディ・ホルテン(Heidi Horten、1941年〜2022年)は、ドイツの巨大デパートチェーンを一代で築き上げた実業家ヘルムート・ホルテンの妻であり、莫大な資産を受け継いだオーストリアの大富豪、そして世界有数のアートコレクターです。

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30年以上にわたって収集された約800点のコレクションは、ルノワールからクリムト、エゴン・シーレ、ピカソ、マティス、マグリットほか、1950~1960年代のドイツ表現主義やイタリア現代美術、アメリカン・ポップ・アートのウォーホルやバスキアなど多岐にわたります。深い審美眼をもつハイディのコレクションには心から脱帽。芸術の都ウィーンの層の厚さを実感できるはずです。

コレクションと企画展をうまく組み合わせたディスプレイ

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そんなハイディは美術館がオープンした2022年6月のわずか数日後、6月12日に他界しました。美術館の大きなコンセプトは、単に彼女個人のコレクションを展示するのみならず、ひとつのフェスティバル(祭典)のような場にしたかった、ということ。常設展示はなく、その時々の企画展(テーマ展)に合わせてオリジナルコレクションを再構成。企画展の作品を常にコレクション全体とのつながりの中で見せることで、そこに対話が生まれるようにして、新たな視点を提示しているのです。

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見逃せないのが、館内ベスト3と言われるコレクション作品。①パウル・クレー『兄弟』、②イヴ・クライン『RE1』、③グスタフ・クリムト『アッター湖畔ウンターアッハの教会』。館内はコンパクトなので、1時間以内で十分鑑賞できます。

問い合わせ先
ハイディ・ホルテン・コレクション
所在地/Hanuschgasse 3, 1010 Wien
TEL/+43 1 512 5020
URL/hortencollection.com

開館25周年のMQ散策と、地元の名店ビストロでワインランチ

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ムクの愛称で親しまれている複合文化施設ミュージアム・クォーター(MQ)では、25周年を記念して、プンシュクラプフェル(ラム風味の伝統菓子)やソーダレモンをイメージしたピンクやイエローの椅子エンツィが並べられています。

ここには、エゴン・シーレやウィーン世紀末芸術作品が充実したレオポルド美術館、近代美術館、ウィーン建築センター、子ども博物館ほか50以上の施設が集まり、常に何かしらの新しいアートや音楽を発信しています。

興味深いのが、オーストリア政府とコラボしてアーティスト・イン・レジデンス事業を設けており、世界中から年間60名が選ばれ、このMQ建物内の部屋が提供されて2~3か月の創作活動ができるというもの。単なる制作の場のみならず、オープンスタジオなどのイベントを通じて地域の人々や現地アーティストと深く関わることが重視されているそうです。滞在中に制作して選ばれたアーティストの作品は、半年間、MQ入口の広場に展示されます。

問い合わせ先
ミュージアム・クォーター
所在地/Museumsplatz 1, 1070 Wien
TEL/+43 1 523 58 81
URL/www.mqw.at

緑あふれるバイスルで楽しむ、オーストリアワインと定番料理

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MQ敷地の中で、火山岩の四角い建物が目を引く近代美術館(Mumok)。ここを鑑賞したのち2階へ上っていくと、地元で愛される名店「グラシス・バイスル(Glacis Beisl)」に出ます。バイスルとは伝統的な大衆食堂・居酒屋のこと。アットホームな空間で、ビールやワインとともに郷土料理を気軽に楽しめます。

(C)GRACIS BEISL

ぜひとも味わいたいオーストリア料理は2つ。野菜とともに3時間以上煮込んだ牛ランプ肉を、すりリンゴと西洋ワサビ、ほうれん草のピューレなどとともにいただく「ターフェルシュピッツ」、そしてポークまたはビーフのカツレツ「ヴィーナーシュニッツェル」です。ターフェルシュピッツは素材の旨味がスープに溶け、お肉は柔らかく最高のご馳走。とくにこの店のものは3種の部位を使って煮込んでいるそう。前菜には、春なら茹でホワイトアスパラ、夏は桃のクスクスサラダなど、いつ訪ねてみても季節の味わいが新鮮です。

お楽しみのオーストリア白ワインは、まず定番ゲミシュターザッツを。こちらは、ひとつの畑に複数の白ブドウ品種を混植し、それらを同時に収穫して一緒に醸造するワイン製法で作られています。キリリとしたドライなテイストが、料理を引き立てます。

問い合わせ先
グラシス・バイスル
所在地/Breite Gasse 4, 1070 Wien
TEL/+43 1 526 56 60
URL/glacisbeisl.at

ウィーン黄金時代が甦るブティックホテル「ホテル モット」

(C) Oliver Jiszda

ルネサンスとバロック様式にゴシックとビザンチンの要素が加わった建築内部は、現代ウィーンスタイルと1920年代のパリ、北欧の心地よさが融合。

ロビーに一歩踏み込むと、世紀末のスノビッシュなサロンのような雰囲気に包まれます。ウェルカムシャンパーニュがサーブされ、旅の疲れが癒されるひととき……。それもそのはず、なんと前身は1665年開業の「ゴールデンクロスホテル」。1872年に「ホテル・クンマー」へと姿を変え、当時多くのアーティストや作家、俳優、音楽家たちがここに集まり、コーヒーやワイン、オーストリア料理を楽しむ社交の場でした。

(C) Oliver Jiszda

1904年に改装され、1945年から1955年まではフランス軍が所有。当時の内装の一部は今日まで保存されています。

室内は花柄ファブリックで覆われ、ヴィンテージ家具、浴室のタイル、真鍮製のドアノブから室内照明に至るまで、すべてが特注。館内全体に敷かれた幾何学的なヘリンボーン柄フローリングが印象的です。

(C) Oliver Jiszda

コロナ禍後にウィーン中心部の大きなホテルが閉鎖に追い込まれる中、2022年ごろからデザインに凝った居心地の良いブティックホテルが多くオープンしました。ここはその走りで2021年10月に創業。ウィーン最大のショッピングストリート、マリアヒルファー通りに位置しつつも、静かにかつてのウィーン黄金時代の歴史を伝えています。

問い合わせ先
ホテル モット
所在地/Mariahilfer Straße 71a/ Eingang Schadekgasse 20, 1060 Wien
TEL/+43 1 581 4500
URL/www.hotelmotto.at

ローカルたちの隠れ家レストラン「シェ・ベルナール」

(c) Liz Perdacher

ウィーンの美食シーンに30年以上にわたって革新をもたらしてきたレストラン経営者、ベルント・シュラッハー氏率いるMOTTOグループのひとつ。ホテル内レストランという域を超えた、ラグジュアリーレストランです。メニューも洗練され、南米やアジアンテイストを取り入れていて、新鮮な牡蠣やロブスター、セビーチェといったシーフードも充実。オーストリアの極上ワインとともに最高級の美食を堪能したいものです。

問い合わせ先
シェ・ベルナール
所在地/Mariahilferstraße 71a / Schadekgasse 20, 1060 Wien
TEL/+43 1 581 46 00
URL/www.chezbernard.at

※1 ゴットフリート・ゼンパー。建築の壁面は構造体そのものではなく、布やパネルなどで「覆う(被覆する)」ことが起源であるという「被覆(ひふく)論・クラッディング」を提唱したことで知られる。

※2 ネオ・ルネサンス様式(ルネサンス復古様式)。 19世紀のヨーロッパで流行した建築様式。15〜17世紀のイタリア・ルネサンスの古典的なデザインを再解釈し、当時の最新技術や地元の建築方式を組み合わせて現代的に再現。

取材協力
ウィーン市観光局
www.wien.info/ja


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